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異なる思想の衝突

対立が生じた場合、西側諸国の間では互いに一歩退き、交渉の機会を設け、妥協点を探る。私たちの体制は妥協という美徳によって成り立っている。だが、ロシアは逆だ。私たちが一歩譲れば、彼らは一歩踏み込んでくる。ロシアの政治体制下では妥協は良いことではなく、弱さの表れとみなされるからだ。(クリシュヤーニス・カリンシュ:ラトビア外相)

日本経済新聞電子版 グローバルオピニオン 2024年2月14日

ここ1~2年のロシアの動きは、主にBBCなど海外メディアからの情報から得ているが、日本で生まれ育った私には、ある段階でロシアが躊躇なくキーウに侵攻を始めた意図がまったく理解できないでいた。

「攻めるぞ、攻めるぞ」と外交的、経済的な圧力をかけつつ、交渉して妥協点を探るのは世界各地で良くある2国間関係だと思うが、ロシアのやり方は全く異なる。それがどうにも腑に落ちなかったのだが、上記のカリンシュ氏のコメントで、相手が弱みを見せればあっさり踏み込む意思決定の背景が理解できた気がする。

2012年にスウェーデンで森林管理を学んでいたころ、同級生の半数以上が東欧、バルト三国、ロシアの出身者だった。地理的な影響が大きかったのと、IKEAがこれらの地域から森林について学ぶ留学生に奨学金を提供するプログラムを実施していたせいもある。彼らはみな、英語だけでなくロシア語でもコミュニケーションできるグループだったので、それぞれ仲良くやってはいたように見えていたが、そこには微妙な感情があったのだろうと今は思う。

このように相入れない思想に基づき力を振るう相手に対しては、「封じ込め」を長期間続ける対策を取るしかないのだろう。気候変動への対策がまったなしなのに、それに逆行することをしなくてはならないとは、なんとも言えない気持ちになる。

この「封じ込め」戦略は決して新しいものではなく、ジョージ・ケナンが1946年に対ソ連の戦略として提案したものである。X論文と言われた「ソ連の行動の源泉」は、外交官になりたいなあ、とぼんやり思っていた10代後半に読んだ覚えがあるが、まさか今になってこの言葉を再び目にするとは思わなかった。歴史は回るというけれど、こういうデジャブは勘弁してほしい。


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