森の小さな研究室

森に関する学びの記録。自然資本、コモンズ、森林(木材)のサプライチェーンに興味あり。D…

森の小さな研究室

森に関する学びの記録。自然資本、コモンズ、森林(木材)のサプライチェーンに興味あり。Doctor of Forest Sciences(ゲッティンゲン大学)。

マガジン

  • ヨーロッパで森林を学ぶ:森林学修士課程SUFONAMA留学記

    2011年から13年まで、EUが提供する国際修士課程プログラムErasmus Mundusの森林学の修士課程 Sustainable Forest and Nature Management (SUFONAMA) に留学してました。留学中、ブログで情報発信していた内容をnoteに転載します。森林に対する世の中の関心が高まる中、本格的にそれについて学ぶために留学を考えている方のお役に立てば幸いです。

  • 徒然日記

    その日その時思ったこと、感じたことをとりとめなく

  • i-Tree:市民ができるスマホを使った地域環境調査ツール

    アメリカ農務省が開発し、世界中で使われている、市民団体にもおすすめな「i-Tree」に関する情報を紹介します。まとめサイト。

最近の記事

森林学の国際修士プログラムEuroforester

僕が現在所属しているプログラムはSUFONAMAといいます。これはEU圏内で森林学の研究プログラムを持っている5つの大学(ゲッティンゲン、コペンハーゲン、パドヴァ、バンゴール、スウェーデン農科)が連合して提供しているプログラム。1年目はゲッティンゲン、コペンハーゲン、パドヴァ大学のどれか、2年目は1年目以外の4つの大学のどれかに在学することが義務付けられています。SUFONAMAは1学年あたり15名前後の定員。それが各大学に分散して所属することになるため、それぞれの大学ではS

    • IKEAと林業

      ※注意※ 本記事は2012年8月に書いたものを再編集し、公開しています。 数値については、2011年度(もしくはその前後)のものです。現在とは状況がかなり異なっているはずですので、その点、十分注意してください。 私としても、いつか機会があれば、現状をヒアリングできれば良いなと思っています。 ※※※※ IKEAはあのイケア。日本ではすっかり北欧ブランドの家具小売り大手として定着したようですが、そのイケアはEuroforesterプログラムの一大スポンサーでもあります。現在受講

      • スウェーデンの大学院へ

        9月より、スウェーデン最南部の都市マルメから10kmほど離れたキャンパスでの授業が始まりました。スウェーデン農科大学Swedish University of Agricultural Science (略称SLU: Swerige LandbruksUniversitet)のアルナープ(Alnarp)キャンパスです。SLUはスウェーデン全国に4つのキャンパスがあって、ウプサラ、ウメオといったよく知られている街も含まれます。 アルナープのキャンパスがあるスウェーデン南部はス

        • 森林経済学サマースクール in スイス 体験記(その3)

          ◎プログラムの内容 月曜日:林産物とサービスの評価法(ヘドニック法、CVM等) 火曜日:森林管理に関してのモデリングと最適化 水曜日:フィールドツアー ダボスのWSL施設と保全林の見学 木曜日:森林経営における意思決定、リスク・不確実性・地球温暖化 金曜日:サプライチェーン論、市場行動論 以上が午前中のプログラム。 午後は参加した大学院生の研究内容プレゼン(水曜日を除く)。 森林科学の研究の今のはやりは、地球温暖化と生物多様性に関するもの。そういう分野に多くの

        森林学の国際修士プログラムEuroforester

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        • ヨーロッパで森林を学ぶ:森林学修士課程SUFONAMA留学記
          32本
        • 徒然日記
          8本
        • i-Tree:市民ができるスマホを使った地域環境調査ツール
          2本

        記事

          森林経済学サマースクール in スイス 体験記(その2)

          ◎NFZサマースクールとは? このサマースクール、正式にはNFZサマースクールといいます。NFZは、Nancy(フランス)Freiburg(ドイツ)Zürich(スイス)の頭文字。この3つの街にある森林科学に関連する大学・研究機関のネットワークのことを意味します。このネットワークに所属する研究者がテーマを決めて毎年サマースクールをこの時期に開催しており、今年はスイスのWSLが主催。 「環境変化の中での森林経済学(Forest Economics in a Changing

          森林経済学サマースクール in スイス 体験記(その2)

          森林経済学サマースクール in スイス 体験記(その1)

          以前の記事で紹介した、スイス・マイエンフェルトで6月下旬の1週間にわたって開催されたサマースクールに参加した体験記です。 主催はスイスの研究機関WSL。森林経済学を中心にその関連する分野を含めた範囲を専攻する大学院生を対象としたものでした。午前中は講義、午後は参加者の研究内容のプレゼンと討議という内容。世界各国から25名ほどが参加しました。 僕が参加を志した理由は2つありました。1つは専門分野の知識を深めること。ゲッティンゲンでの通常の講義は面白いのですが、森林学の性格上

          森林経済学サマースクール in スイス 体験記(その1)

          生き残った植物園

          バンゴール大学の付属植物園 Treborth Botanic Garden の活動目的は、在来植物と小動物の保全保護、市民の憩いの場や自然環境保全に関する情報提供の場となること。 前者について、在来種(Natives)とは何か、ということが鍵になる。この植物園では以下のように定義している。 Natives:伝統的にブリテン島の植生であったもの Naturalized aliens:ブリテン島外部から移入されたものであるが、現状の環境下では天然更新が可能なもの Intr

          生き残った植物園

          ウェールズの防砂林

          ウェールズ北部、ニューボロー地区に住む農民たちは、長年にわたって風砂による被害をこうむってきた。 第一次世界大戦終了後、農村復興と木材の自給を目的にした植林活動が始まった。まずはじめに、海岸沿いに土盛りをして堤防をつくり、風よけとした後、コルシカマツを導入した。1970年代まで植林の努力は継続して行われ、結果、700ヘクタール弱の面積をもつ森林となっている。上記地図でGoogleEarthを見てもらうとよく分かるが、近隣にこれだけまとまった森林はない。そのせいもあり、最近で

          ウェールズの防砂林

          ウエールズBangor Universityでの集中講義

          ウェールズのバンゴール大学(Bangor University)で行われた10日間の実習を終えて帰ってきました。僕の専攻は意訳すると持続可能な森林保全及び環境保全学(Sustainable Forest and Nature Management)。この修士課程SUFONAMAを提供しているヨーロッパの5つの大学の1つがバンゴール大学。ゲッティンゲン大学の半分ぐらいの規模でした。 バンゴール大学が得意としているのは環境保全の分野。キャンパスが海のそばにあることから、Ocea

          ウエールズBangor Universityでの集中講義

          「森林事業」とはなんだろう?

          製材大手のサイプレス・スナダヤ。少し前に大林組が親会社となって話題になりました。 業界紙でも注目されていて、特に、記事に書かれているだけの道産材を本当に集荷できるのかが焦点になっているようです。既存の調達ルートに良い悪いは別として大きなインパクトを与えるのは間違いないところ。本当に計画通り操業が始まれば、の話ですが。 それとは別に気になったのは、中部電力が20%出資する計画になっている点。北海道と中部電力というつながりには直感的に違和感を感じるが、同社の中期経営計画(ビジョ

          「森林事業」とはなんだろう?

          林冠を歩く

          大学から徒歩5分の森の中に、林冠研究用に設置されたスカイウオークがある。今日は特別にそこを歩き、林冠において反射率のデータを取得する機材について説明を受けた。林冠の研究は1980年代後半から盛んになった分野。今回はリモートセンシングの講義の一環として現地へ行ったのだが、林冠研究といえば林冠における生態系の研究が有名。 ゲッティンゲンのスカイウオークは目測だが高さ25mぐらいのところに設置されている。スカイウオークが設置してある地域一帯はフェンスで囲まれ、事前に許可を得ないと

          演習"Forestry in Germany":採種園と実験林

          最後の演習は、forest genetics講座主催のもの。採種園に初めて足を踏み入れたこと、そして、実験林での説明から森林の研究というのは本当に長い時間がかかるけれども、それをきちんと世代を超えて確実に実施していくことが大事なのだなあ、ということを実感できた。やはり現場を見るというのは勉強になります。 まず採種園。Seed orchardと英語ではいうのだけれど、これが採種園という訳語になることを記事を書きながら知ったぐらいの初心者。日本にももちろんあるので(例えばこちら

          演習"Forestry in Germany":採種園と実験林

          ドイツの林業機器販売店を覗く

          先週の演習"Forestry in Germany"では、ドイツにおける環境保全のありかたや林業関連産業についても幅広く見聞を深める機会にしたいという担当の教授のアイディアにのっとり、リューネブルクから車で30分ぐらいのBispingenという小さな町に本社を置く林業機器の販売会社Grube.KGを訪れた。 ◆Grube KG この会社、ネット販売に最近は特に力を入れているということもあり、ここの本社に隣接した店舗がショールームの役割を兼ねた唯一の直営店なのだそう。僕たち

          ドイツの林業機器販売店を覗く

          演習"Forestry in Germany":泥炭地を歩く

          今週は泊りがけでの演習に参加。ニーダーザクセン州の北部、ハンブルクの東方のいくつかの森とエルベ川沿いの生態系保護地域を歩いた。 リューネブルガーハイデ(Lüneburger Heide)は泥炭地帯の広がる荒野なのだが、それがだんだんと森林に戻ってきている様子をいくつかのスポットを移動することで展望することができた。これはもちろん、人の手によって森林を取り戻しつつあるということ。かつて、人によって森林が荒野に変わっていったのが、再び人の手によって森林に変わりつつある。 この

          演習"Forestry in Germany":泥炭地を歩く

          演習"Forestry in Germany":伐採と路網整備

          先週は2日連続で演習があり、これは2日目のコース。車で20分ほど離れた場所にあるForstamt Reinhausen の森での演習。午前中は伐採の実務の見学を行い、午後は路線網保全の実務の見学を行った。今回案内してくれたのは、forest work science and engineering研究室のProf. Höfle。実務経験に基づいてきっちりと指導してもらった。きっちりさは、用意された紙の資料が45ページ(!)もあったことからもわかる。 ドイツ国内の森林は、所有

          演習"Forestry in Germany":伐採と路網整備

          演習"Forestry in Germany":造林学

          先週木曜日、昼から夕方までの演習。大学周辺に広がる混交林内で教授の案内の元、植生の現状とその歴史的変遷について学んだ。そもそも、僕はSilvicultureの意味するところがよく分かっていなかったのだが、どうやら日本語では造林学という言葉が当てはまるらしいということを、授業の後に知った。たしかにsilvi(forest) + culture(cultivation)である。 この演習で一番苦労したのが学名。僕は正直なところ、日本の植物の名前もろくに知らない。そんな実力でPi

          演習"Forestry in Germany":造林学