見出し画像

森林学者の癖

宮部みゆきの小説を読み終わる。SFものと言っていいのだろうか。
二・二六事件が物語の背骨になっていて、現代の浪人生がクーデターの最中の蒲生大将の住居に入り込んで、、、という話。宮部みゆきの作品は安心して読めて好きなのだが、今回も、タイムトラベルという無茶な設定にもかかわらず、テンポよく最後まで読むことができた。

統制派と皇道派については、その評価は今に至るもなかなか難しいようだが、いずれにしても軍部の独走に対してある段階からブレーキを掛けられなかったのが、第二次世界大戦の日本の失敗の本質。下記の「失敗の本質」を読んだことがある方も多いと思う。

僕が小学生の頃は、今にして思えば、戦争はこれからだんだん減っていくだろう、という楽観的な雰囲気が世の中を覆っていたように思う。まさか、2024年現在の世界情勢になるとは僕もそうだし、だれも想像もしていなかったんじゃないだろうか。

学生の多くが当時、留学先として米国かイギリスにあこがれていたように思う。面白いもので一般的な日本人の目線ではイギリスに対するあこがれ度合はあまり変わっていないと思うけど、アメリカに対するそれは大きく変わってしまったように思う。どう考えても、今のアメリカはバランスを失っている。

僕は、自身を林政学の研究者だと思っているが、林政学を含む、広く森林を対象とした研究者は、長期の視点でものを考えることに慣れている。今日、新しく植えた木を伐採できるのは、100年以上先になることも普通にあるから、そういう学問をしていると、短期的なことは(言い方は悪いが)どうでもよいなあ、と暗黙の了解で考える研究者がほとんどなはず。このことは、浮世離れしている、ととらえられがちだが、現在の先が読めない世の中では、逆に強みになるように感じている。国際情勢がどう変化しても、森は結局のところ育つ。森林の大切さが今改めて注目されているけど、その成果を短期間に収奪するようなことにならないよう、注意していかなきゃなと思ったり。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?