マガジンのカバー画像

訪問と居場所 漂流教室 相馬契太さん インタビュー

10
オリジナリティあふれる訪問活動を中心にされている漂流教室の相馬契太さんの個性的な訪問哲学を伺いました。
運営しているクリエイター

記事一覧

固定された記事
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・1)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・1)

今回は札幌で独自な訪問支援活動をしている相馬契太さんのインタビューをお届けします。相馬さんは私自身いろんな意味で学びとなってくれる人で、特別な用事がない時にも時々会ってもらい、雑談の中で知恵をもらっています。

何より情緒的すぎる自分とは真逆な人で、プレ思春期の頃に「自分と他人は別だ」と気づいたと言う、ぼくの見立てでは理想的な成長をされたところから視野を広げてきた人で、それは「自他分離」の良質な形

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・2)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・2)

今の学校はどう見えているか

杉本:相馬さん自身には今の学校はどのように見えていますか?

相馬:うーん、難しいなあ。相談支援パートナーで久々に校舎に足を踏み入れてまず思ったのは、「こんなに貼り紙あったっけ?」ですね。あれするな、これするな。あるいは、あれしろ、これしろ。自分が中学生の時にもあったのかもしれないですけどね。当時は気にしてなかっただけで。

杉本:注意事項的な貼り紙が多いということで

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・3)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・3)

訪問の出会いと別れについて

杉本:訪問についてお聞きします。訪問に行って、スタッフ利用者が会う。そうしたらそこは2人のテリトリーになるみたいな話を以前におっしゃっていましたよね。あと「相手のことをよく見る」ともおっしゃっていたかな。だから、乱暴な出会い方をするボランティアの人はいないと思うし、かつ20年来やってきて、アクシデントやクレームみたいなことも相馬さんが最初に行った訪問ひとつだけという話

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・4)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・4)

自分と他人は別、を前提として

杉本:やはり相馬さんの価値観は、自分とは相当違うなと感じるというか。ぼく自身が持っている価値観、観念や感覚と相馬さんは違うものを持っている。ぼくには持てないけど、それはすごく大事な観点なんだよなと。恐らくそれは漂流教室全体の価値観ではなくって、でも、仕事へも反映している。そんな印象をいま持っています。

相馬:うん。まあ、そうですね。

杉本:自分が持ちようのない価

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・5)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(前編・5)

自然なものでありたい

杉本:最近よく聞くオープンダイアローグ。あれってどう思います?

相馬:いや、こざかしいなと思います(笑)

杉本:(笑)

相馬:新しいものは好きなんですよ。何によらず新しいものが入ってくると「お。ちょっとこれは面白そうだな」と注目します。仕事に使えないかなとか、上手いことやってちょっと一儲けできないかしらと思う。当事者研究もそう名乗る前の、「自己探究」とか違う名前でやっ

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さんインタビュー(後編・1)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さんインタビュー(後編・1)

前編から続く

ボランティアの感覚

杉本:利用者さんの感覚は次第に見えて来たんですけど、ボランティアさんの感覚はまだよく見えませんね。

相馬:俺もよくわかんないです。それぞれに何かしら思うところはあると思うけど(笑)

杉本:ブログで、「これでボランティアが終わりますけどこんな感じでした」といった感想に、よく相馬さんが「なるほどね」みたいなコメントしていますけど、その時、「ああ」と気づく感じな

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(後編・2)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(後編・2)

お手盛り苦手

杉本:やはり相馬さんたちは打ち出しかたが淡白なんだと思うんですね。NPOでも、活動の意義を表現したくてしようがない組織は普通にあると思うんですよ。いま相馬さんの話を聞いていてもそうだけど、「関わるけれど、その結果のどうこうはよくわからないです」ってこれだけ普通に言えるリーダーってすごくないですか?

相馬:どうですかね。例えば訪問が終わる時に、利用者に「訪問はどうでしたか」ってイン

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(後編・3)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(後編・3)

距離を取れる人と、くんずほぐれつの人

杉本:ただ、本当に苦しんでいる人にとってみると、例えば自分が10代の時には世間全体が「俺を気味悪がっているんだよ」みたいな形にまで飛躍をしちゃったわけだけど、今は「一般論として、他者の自己認識は個別なんだから諦めるしかないんだよな」みたいに考えるわけで。自分を省察するに、今は以前とだいぶ別のところを見ている気がするな。

相馬:どうしても合わない人、合わない

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(後編・4)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さん インタビュー(後編・4)

「知らないよ」と言えるためには

相馬:頑丈さでいうとですね、俺は「生きづらさ」とか本当にわかんないんですよ。

杉本:生きづらさねえ。これは変に取りたくはないというか、みんな奮闘して言葉をつくっているんだろうけれども。若者支援の人たちはそれぞれ適切なイメージを惹起する言葉を見つけて共通言語にしたいかもしれませんしね。

相馬:「困り感」とかね。なるほどと思ったりもしたんですよ。なるほどと思うんだ

もっとみる
NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さんインタビュー (後編・5)

NPO法人 訪問と居場所 漂流教室 理事 相馬契太さんインタビュー (後編・5)

信頼しない理由はない

杉本:だけど、ボランティアはともかく、利用者に対する信頼度がとても高いですね。

相馬:信頼しない理由はないですからね。知らない人だから。

杉本:ん?

相馬:だって信頼するしかないじゃないですか、知らない人は。

杉本:ご家族だけですよね、会っているのは。家族がまず利用したいと?

相馬:本人にも参加の意思確認はします。

杉本:ああ、そうか。でも、親の圧力に屈してとい

もっとみる