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3分で読めるCFO入門!「スタートアップ」が「スモールビジネス」と異なる点とは?

みなさん、はじめまして。カウンティア株式会社で代表取締役・公認会計士を務めます、姥貝(うばがい)と申します。

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「スタートアップ」と聞くと、小規模で目新しいビジネスを創出するモデルというイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。一方で、スモールビジネス(「SMB」や「中小企業」)との区別は出来ているでしょうか?

実はCFOの知見を身に着け、自身がCFOとして活動する上でまずはじめに、「スタートアップ」と「スモールビジネス」の違いを理解することが大切。詳しくは後述しますが、ファイナンスはビジネスモデルと密接な関係を持っています。

スタートアップとスモールビジネスの違い

スタートアップ型とは、既存に無い新しいビジネスを創造するビジネスモデルのことです。事業内容にもよりますが、「研究開発期間」を経てビジネス展開を進める事業モデルのことを指します。

例えばGoogleやFacebookに代表されるようなIT事業などもスタートアップ型です。

スタートアップ型は、システムそのものがキャッシュを生み出す事でビジネスを成長させるのが特徴です。事業スタート当初は研究開発活動が必要なため赤字期間が続きます。

サービスをローンチし市場認知が進むことで、収益化することはできますが、ボトルネックも存在します。それが、市場を拡大するためのマーケティングコストです。

マーケティング投資を収益に着地させるための成功方程式が見つけられたら、あとは資金を投下することで一気に成長を加速させられるのがスタートアップならではの成長の仕方と言えるでしょう。

一方で、スモールビジネス型とは、起業当初から利益創出が狙えるビジネスモデルです。例えば、会計事務所や法律事務所、美容院、システム受託開発、広告代理業などがあげられます。

主に人の活動を収益化する労働集約型による事業モデルの場合が殆どです。成長のためには採用と教育がボトルネックになるために、スタートアップと比べて事業の成長に時間がかかります。

スタートアップ型とスモールビジネス型、両方とも「起業」のモデルです。しかし、大きな違いは、事業成長の時のボトルネックが何かということです。

◆スタートアップの成長のボトルネック
スタートアップの成長時のボトルネックになりうるのが「IT」と「資金」です。

短期的に開発とマーケティングを繰り返し成長を目指すビジネスモデルゆえ、IT活用ないしインフラの整備と、マーケティング費用等を十分に行うための資金が必要になるのです。これらのボトルネックを解消し、ビジネスを軌道に乗せることができれば、短期間で大きく成長することが可能です。

◆スモールビジネスの成長のボトルネック
スモールビジネスの成長時のボトルネックは、ずばり「労働集約型モデル」に陥りがちという点です。労働力が成長のポイントとなります。

そのため、人材の採用と教育に時間をかけなければならず、収益成長自体にも時間がかかります。

スタートアップの最初の成果ポイントとなる「PMF」

十分な資金を得ることがスタートアップ型モデルの成功のポイントだということをお話しきました。とはいえ、肝心のプロダクトがユーザーにとって「イケてない」状態ではいくら資金を調達しても成功とは言えません。

そこで、次のポイントになるのが「PMF(プロダクト・マーケット・フィット)」です。

PMFは、簡単に言えば自社が開発した製品が、世の中の人に購入(ないし利用)してもらえる状態です。この状態になったとき「PMFを達成した」といえます。

起業直後は、当然のことながらプロダクトが収益化していない状態なので、創業メンバーの人件費やシステムの開発費用が発生します。そのため、急速に資金が減っていきます。

そして、ビジネスを継続するうちに、資金の減少速度が緩まったときプロダクトが売れ始めるタイミングです。

プロダクトが売れ始める=PMFの達成」なのです。

9割のスタートアップがPMF前に死ぬ

とはいえ、一般的に9割のスタートアップがPMFを前に廃業し、1割のスタートアップがPMFを達成できると言われています。

人の心を掴んでお金を出して買ってもらえる製品を作ると言うのは非常に難しいものです。スタートアップは、まだ世の中にないコンセプトをプロダクトとして実装するビジネスモデルです。

そのため、「まだ世の中にないプロダクト=誰もそのプロダクトに対価を払ったことがない」と言うことになります。

スタートアップのプロダクトが、顧客がお金を払うだけの価値があるかどうか、それはセールス活動をするまでは誰もわからないのが現実です。

ほとんどのスタートアップは、顧客から対価を得られるプロダクトを開発することができずに廃業していく……。これが、実態なのです。

スタートアップにおけるCFOの役割とは?

スタートアップが成長におけるボトルネックを解消し、PMFを達成するにあたり、「ファイナンス」と「プロダクト」どちらにも知見を持ち、適切にアクションを起こすことが重要です。

そこで、CFO(Chief Financial Officer - 最高財務責任者)がそれらの課題を解決する役割になります。

そもそも、CFOとは何を担う立場なのでしょうか。

主に、資金調達を始めとしたファイナンス業務の責任を担う仕事です。とはいえ、単にファイナンスだけを把握していれば良いわけではなく、プロダクトがユーザーから対価を得られるサービス設計であるかどうかまでを理解している必要があります。

万が一、プロダクトが失敗した場合、次のチャレンジのための資金を集めなければなりません。

資金調達を実現するためには、スタートアップが(投資家や銀行に向けて)将来「利益」を生むことを立証することです。

事業計画を作成し、プレゼンテーションを行う必要もあれば、その事業の根拠をデータで説明できなければなりません。

それだけでなく、資金調達は信用も重視されます。

信用とは、元をたどれば人の言動や振る舞いなど「人」に帰属します。

経営者が、社会から信用されうる「人」であり、社会から信用されうる「チーム」を設計し、なぜ信用できるのかの説明も必要になるでしょう。

信用が資金を生む

この原理原則は今も昔も変わっていません。

CFOは、スタートアップビジネスの「利益」についての説明をし、創業メンバーの社会的信用を説明し、その先に資金調達が達成されます。

事業モデル(利益)と社長力(信用)、これがスタートアップの資金調達力です。

また、調達した資金を成長のためにクリティカルな要因に対して的確に投下しなければなりません。つまり、ファイナンスに対する知見だけでなくプロダクトへの理解が重視されるのです。

次回は、「最悪のアイデア」こそスタートアップの競争優位の源泉である理由についてお話いたします。

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