見出し画像

初めての起業は、海外モノのパクリからはじめよ、という話。

 大学を卒業し、2年半サラリーマンをして脱サラ、起業家8年目の私。既に2社目の起業だ(大学時代のをカウントすると3社目だ)。日本は米国や英国の人口と比較して、圧倒的に起業家が少ない。その理由はかなり複雑で一筋縄では解決できない課題だ。なぜこれが課題といえるのかというと、米国や中国を見ればわかる通り、GAFAやBATHなど世界全体の経済成長をけん引している産業が、比較的歴史の浅い新興企業によってリードされているからだ。

 さらに、私が「Crunchabase」のDBを独自に分析した結果に基づくと、創業10年未満でユニコーン(未上場で時価総額1B以上)といわれる企業のおよそ8割が米国・中国発である。世界のトレンドとして、伝統的な大企業が新産業をリードしているわけではない。日本においても、起業家が新産業を生み出し、新興企業がそれをリードしていく必要があるだろう。

 しかし、起業して事業を大成させるのはそんなに簡単なことではない。以下に記述する内容は、これから起業したいと考えている人に読んでほしい内容だ。

1回目の起業で大成功を収める必要はない

 ありがたいことに、起業というのは何度でもできる。100回起業しても逮捕されることはない。起業家として生きる中で、1回でも新産業を作ることに成功したら、自分も投資家も国家も皆ハッピーだろう。例えば、2016年に「Fair」を創業した Scott Painter氏は実に37社目の起業だ。「Fair」はカーリースの会社だが、創業からわずか3年でユニコーンとなっている。

 私の独自の調査に基づくと、5年以内に生まれた米国ユニコーンのうち、約半数が連続起業家が生み出した企業である。ツイッターとスクエアを創業したジャックドーシーの「成功は決して偶然ではない」というツイートは物議をかもしたが、起業して事業を大成させるには、何らかのコツがあるのかもしれない。

はじめての起業におけるストレス

 起業のアイデアが素晴らしければ、事業は軌道に乗るだろうか。残念ながら、そんな簡単な話ではない。アイデアだけで空前の大ヒットというケースが存在するのは事実かもしれないが、殆ど場合、成功は一夜にして訪れることはない。コツコツ努力し続けた先に徐々に陽の目を見るケースが殆どだ。コツコツ努力し続けている間にも、陽の目を見た後にも、起業家は本当に様々なトラブルを抱えることになる。

 プロダクト開発、営業、バックオフィスの構築、資金管理、人材採用まで、サラリーマン時代は分業されていたものを最初は全部一人で把握しなければならない。そんな中でも、特に起業家が精神をすり減らすのは「資金の課題」と「人の課題」の二つだろう。拙い表現で申し訳ないが、この二つの破壊力は相当すごい。起業家にうつ病が多いという話があるが、この話はまんざらでもない。

 まず、資金に関して、突拍子もない事業仮説にリスクマネーを投じてくれる投資家は多くはない。日本のベンチャー投資額は2千億円程度、一方で米国は10兆円弱である。起業家も少ないが、リスクマネーも少ない。銀行はもっと保守的だ。創業当初から、政策投資銀行以外からの融資を得るのは難しい。仮に売上を立てても入金サイクルに悩まされる。黒字決算をしても税金の支払いがものすごい勢いでやってくる。意外に思われるかもしれないが、黒字でも資金繰りは大変だ。

 人関係もいろいろある。苦労して仲間に引き入れたエンジニアが他社から引き抜かれる。信頼していた人物に裏切られる。採用したとたんやる気を失う社員。創業者間で一切のコミュニケーションがなくなる。家庭やプライベートの人間関係も壊れる。などなど、あるある話を書くとキリがない。創業者間の株式の問題などは、人間関係とカネの話がセットでやってくるから相当にしんどい。

 要は何が言いたいかというと、はじめて会社を経営すると、事業アイデアを検証するという行為自体が非常に小さなパーツの一部のように感じられるということだ。事業アイデアの検証以外の、かつて経験したことがない大量のTo-Doが生まれてしまう。それに対して日々対応しているだけで、あっという間に時間が過ぎて行ってしまうのである。

変数を削る

 初めて会社を立ち上げるのであれば、「自分の考えた画期的なアイデアの検証」という起業の醍醐味を、いっそのこと捨ててしまってもいいのではないか、と私は思うようになってきた。端的に言えば、海外で成功しているビジネスモデルを丸パクリして日本展開すればいい。必ずしも日本で同様のモデルが繁栄するとは限らないが、前例がないものに取り組むよりは成功率が高い。かつて私が共同創業者として立ち上げたビジネスも、ずいぶん前から米国で前例があった。それを日本で立ち上げるのにも、かなりの苦労があったのは事実だ。

 思い切って「アイデア」という変数を削ろう。パクりで構わないから、会社(ビジネス)を立ち上げてみよう。アイデアという変数を削ったとしても、立ち向かわなければならない困難は山のようにある。エンジニアをどうやって見つければいいのか、VCから資金調達するにはどうしたらいいのか、最初の顧客を獲得するにはどうすればいいのか、創業者の株の比率をどう設定すればいいのか、ストックオプションはどの程度発行するべきなのか、財務諸表の見方を知らない場合はそれも勉強しなければならない。

 こうしたことをCEOとして経験するだけで、ベンチャー立ち上げのスキルは飛躍的に高まるだろう。はじめての起業がうまくいかなかったとしても、二回目、三回目に起業するときには、自分のアイデアの実現にフォーカスできるかもしれない。37回起業したっていいのである。

日本未展開の事業アイデア

 世界で急激に伸びているビジネスの例を紹介しよう。2017年創業の米国「Divvy(ディビー)」は融資が通らない低所得者層をターゲットとして、不動産を代理で購買するビジネスを行っている。2018年創業のインド「Cred(クレド)」はクレジットカード(自社のカードではない)の利用金額に応じて、独自ポイントを付与するサービスを行っている。この二社には既に150億円以上の資金が集まっている。

 こんなことをして一体どうやってマネタイズしているのか、不思議に感じないだろうか。実際に調べるとわかるのだが、私にも想像しえないビジネスモデルだった。これら二つのビジネスモデルは、日本でいち早くパクるだけで大成功するかもしれない。

 「日本のこの会社は、海外のこの会社のパクリだ!」と名指しで指摘することは簡単だ(そんなことをしても意味がないのでしないが...)。日本で著名なビジネスコンテストで優勝したサービスにも、海外で先行事例があるケースも見受けられる。

 だから、堂々とパクろう。パクって起業家のスキルを高め、次の起業で自分の妄想を実現しよう。そして、起業を経験するなら体力のある若いうちにやったほうがいい。37回目でユニコーンを作る。それでいいじゃないか。

追記【2021年5月16日】

 この記事を公開して、既に1年半以上が経過している。この間にも、実に様々な仮説検証を行ったが、本稿における私の考え方は概ね変わっていない。というより、「堂々と模倣する」という考え方をより強く推奨するようになった。テクノロジーの進化によって、新規事業はどんどん生むことができる。その一方で、現在のテクノロジーでできることには限界がある。それゆえ、世界中で生まれる新規事業は、どうしても似てくる傾向に落ち着く。

 誰かが既に作ったものを新たにゼロから作ることを「車輪の再発明」と呼ぶが、それは新規事業アイデアにおいても全く同じだ。どうせ結果が似てくるなら、最初に最先端の事業アイデアを可能な限りインプットして、その後に自分らしさ、オリジナリティを追求する方が効率的に決まっている。

 私は2021年3月に、これを効率的に実現するためのサービスを開発、リリースした。サービス名は海外の事業仮説を大量に掲載しているため、「説ログ(https://setulog.com/)」と呼んでいる。同サービスを使えば、1社10秒で海外ベンチャーの事業アイデアをインプットすることができる。すべてのコンテンツが全く同じフォーマットで情報整理されており、世界の潮流を一気につかむことができるだろう。無料会員登録で活用することができるので、本稿の内容に共感した方は、ぜひご活用いただきたい。

プレスリリース
海外ベンチャーの調査を「1社10秒」で実現できる新サービス『説ログ』をリリース
PRtimes:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000076797.html
サービスURL:https://setulog.com/


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?