見出し画像

幻の入学

おじさん自分は社会経験を経て、もう一度学び直そうと大学へ進学した。

そのために仕事を増やして、
ようやく学費を貯められた。
苦労したけれど、新しい人生のために
学ぶ事が楽しみになって、
ワクワクしてあまり寝られないで
入学初日を迎えた。

入学初日に学校へ行った。
郊外にある、社会の空気から分離されたような、静かで自然豊かな空間だった。
まるで、絵の中に入ったかのような
寂しさがあり、もう戻れないような空気感があった。

校門の入り口でじいさんが巨大なカニを洗っていた。

その向こうでは、別のじいさんが巨大なカニを作っていた。

心がモヤっと、不安感に包まれた。

教室に入ると、
同じような年代の人がたくさん座って
先生を待っていた。

お昼の鐘がなるまで先生は来なかった。

お昼休憩の時に、
屋上にいって、モヤモヤしていた不安は確信に変わった。

ただ、
屋上はとても居心地が良く、
芝生が敷かれていて
吹き抜ける風が気持ちよかった。
眠りそうで、
次の授業を考えたくもなかったし
もう期待もしていなかった。

カニを修理する不規則な
工事音はさらに空気を緩ませて
眠気は増大した。

人が何かを追いかける声が聴こえてきて、
屋上から下を見ると、
作りかけの大きなカニが校舎の外へ逃げようとしていた。

大人達が、どうにかそれを防ごうとしていた。

ふと周りを見ると、
同じ生徒達がみんな芝生に転がっていて
この世からするべき事が全てなくなったかのような空気が流れていた。

このままここにいると、
終わってしまいそうな感覚があったけれど、
不思議と心が洗われたような清々しさがあった。

もい会社もやめている。

帰りの電車にずっと乗っていた。

山になってきてもそのまま座っていた。

電車を降りると、
意外にも人がたくさん乗ったままだった事に気がついて、みんな同じ終着駅で降りた。

そしてみんなは
一目散に肩に力が入った様子で、
駅を降りてすぐにそびえる山に登っていった。

それについて一緒に登って行った。


サポート大喜び!サポート大喜び!サポート大喜び! サポート大喜び!サポート大喜び!サポート大喜び!