見出し画像

「歴史」は繰り返さない

日本のプロ野球はアメリカのだいたい2~3年くらいうしろを走ってるんですが、そんな日本でも今年から先日の『フライボール革命』と同じく名前を聞くようになったのが『オープナー』と『ブルペンデー』です。

野球は一般的に先発投手が6~7イニングくらいを投げて、中継ぎ投手が1~2イニング、そして抑え投手が1イニングの役割分担なんですが、中継ぎ投手がいきなり先発しちゃう戦術のことを『オープナー』っていいます。

『中継ぎ』って名前がついてるのに、継がないでいきなり投げます。

初回の攻撃は絶対に1番から始まって、とっても脅威なので、そこを中継ぎ投手に全力で1イニング投げて抑えてもらって、下位打線になった2イニング目以降からは本来の先発投手に投げてもらおうという魂胆です。


あと『ブルペンデー』はオープナーの延長版みたいな感じで、中継ぎ投手が先発として投げて、そのまま2番手以降も中継ぎタイプの投手が投げ続ける戦術のことを指します。

極端なことを言うと、9イニングを9人の中継ぎ投手でリレーするみたいなイメージです。

先発投手が不足しているチームが、奇策として使うことが多いと思います。


これらの現象について、セイバーメトリクスの落とし穴では『要するにほぼ全ての投手が平準化されてきており、先発とリリーフの垣根がなくなってきいるのだ』と考察していました。(リリーフと中継ぎは同じ意味)

先発投手が長いイニングを投げて1週間休み、リリーフ投手は短いイニングを毎日のように投げるのではなく、みんなが少し長いイニングを、少しずつ休みながら投げるという風潮が出てきつつあります。


野球は高度化に伴い、分業化の一途を歩んでいましたが、ここにきて原点回帰というか、トレンドの揺り戻しが来ているというのは、上の本中でも何回も言われていました。

投手だけではなく、野手についてもそうで『野手も捕手も主力と力が変わらないレベルの控えを作る重要性が増してきており、選手をうまく「回していく」運用の概念がこれまた不可欠となってきている』と書かれています。

野手は投手と違って週6日ずっと試合に出続けるし、求められる技術の水準もどんどん上がってきてるので、それらの負担を一部のレギュラー選手に押し付けるのではなく、控え選手も含めて分担していこうということです。

ハイレベルなプロ野球では分業化が進む一方であったが、運用の概念が不可欠となった昨今は、かつての高校野球のように様々なポジションをこなす選手が増加していく「ポスト分業化時代」に突入していると考えられる。

ポスト分業化自体は、あえて言うなら『分業』よりも『分散』に近いイメージですかね。

大谷選手が切り拓いてくれた『二刀流』という道もありますし、投手内、野手内だけではなく、投手と野手の垣根もどんどんなくなっていくかもしれません。


ということで、最近の野球のトレンドについてざっくり書いたんですが、こういう流行の揺り戻しみたいな事象は、ビジネスの現場でもあるよねという話は、4ヶ月くらい前にも書きました。

ビジネスの現場でも、専門家と分業化が進んだんですが、その一方で多くのステークホルダーを挟むことによる『商品コンセプトの崩壊』みたいなことが起こりがちになり、昨今はひとつの事業者が企画から開発、製造、販売までのすべての工程を担っているような事例もよく見かけるようになりました。


ただ、こういう『トレンドの揺り戻し』という事象は、別に野球界やビジネスだけに限らず、いろんな場面で見かけられると思います。

それで、今日言いたいのはこういうときって、表面上で起きてる事象は一昔前と同じだから、ついつい『回帰』と捉えてしまいがちなんだけど、その土台にある技術的進歩や情報の蓄積はすさまじいものがあるから、一昔前より究極的に言うと進歩してるんじゃないかということです。知ったところで、なにか人生に役立つかと言われると、別にそうではありません。


例えば、最初に挙げたオープナーやブルペンデーの話も、先発投手が長いイニングを見据えて力を調整して投げてたら打たれるから、短いイニングを全力投球するようになった結果、生まれた戦術です。

なので、先発とか中継ぎとかって概念がなくなったという点においては、一昔前と同じですが、そこで投げ込まれている球は、比べ物にならないくらいレベルアップしてます。

あとこれは実際に比較できるわけじゃないのであくまでも推測の域を出ませんが、大谷翔平選手の二刀流は、その昔二刀流をやってた『ベーブ・ルースの再来』なんて言われてますが、投げてる球やそこで駆使されてる技術のことを考慮すると、再来というか、絶対に大谷選手のほうがすごいだろと思ってしまう(思いたい)自分がいます。


最後に挙げたビジネスの話だって、ワンストップでやります!という企業が仮に増えていたとしても、たぶんその企業のほうが、10年前に『企画専門です!』と言ってた企業よりも、企画に関して持っている情報量の多さであったり使っている技術なんかは、すごいはずです。実際に比較することはできないので、厳密にはなんとも言えませんが。


ということで、いろんな場面でトレンドの輪廻はずっと起こってると思いますが、それは単にずっと同じところをグルグル回っているのではなく、実は螺旋状に、『技術の進歩』や『情報の蓄積』という土台を形成しながら回ってるんじゃないかという話でした。


ということで、セイバーメトリクスの落とし穴の感想シリーズはこれで終わります!

これまで書いたnoteのなかで興味あるものがあれば、ぜひ読んでください!!

第1回:「エビデンスは?」なんて言う前に、普通に見れば分かる
第2回:「データ」には出てこないもの
第3回:「クリエイティブじゃない」という戦略
第4回:「お金かやりがいか」って言われても、お金をもらうことによって、やりがいを感じることもあるわけで
第5回:その人の本当の姿を知るには「言ってることよりもやってることに目を向けろ」の真意
第6回:「意図」と「結果」はズレる
第7回:「情報」は弱者に味方しない

この記事が参加している募集

最後まで読んでいただいて、ありがとうございます!!!すこしでも面白いなと思っていただければ「スキ」を押していただけると、よりうれしいです・・・!