破裂音

人は、いつからか風船の大きさで人の善し悪しを判断するようになった。結婚も就職も風船の小さな者が有利となり‪日本から悪口と暴言が消え、‬合コンは盛り上がりに欠けた。

ーーーー令和が始まると同時に全国民の頭の上にはフワフワと風船が浮かんでいた。風船の大きさは人それぞれ違っていて、子供で大きな風船を持つ者もいれば大人で小さな風船を持つ者もいた。初めは面白がっていた国民も訳の分からない奇妙な風船に対し理由を求め始めた。日本政府は関与を否定したが、2週間後、会見を開き全国民に対し風船の正体を発表した。政府の説明を簡単に要約すると‪風船の中には今まで吐いてきた悪口・暴言が蓄積されていて風船が限界まで膨らんでしまうと破裂し全ての悪口が自分に浴びせられ、それと同時に悪口を言われた人の辛さが自分の中に戻ってきてしまうらしい。どうにも信じ難いが、試しに鏡に向かって「死ね…」と言ってみると頭の上の風船が膨らんでいくのが分かった。事実、令和が始まったと同時に何発もパンッと弾ける音がして、風船の割れた人の多くは自殺してしまった。風船の割れる「パンッ」という破裂音は悪口・暴言の重みと比べてあまりにも軽く冷たかった。

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