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ショートショート#9 苺

季節は春。
苺はどんどん実っていく。
甘酸っぱい香りと共に。




ねぇ、と声掛けられて鮮やかな苺狩り。


季節は春。
二人はこれから結婚するという、間柄になったばかり。
仲睦まじく寄り添う様子が苺に似ている。




ねぇ、と声掛けられて鮮やかな苺狩り。


季節はもう初夏になる。
それでも苺は実る。
妻のお腹にも新しい命が実る。
苺のように小さな命が。




ねぇねぇ、と気付かされて鮮やかな苺狩り。


季節は再び初夏。
苺が実った。
元気いっぱいの鮮やかな子どもにすくすくと育つ。




ねぇ、とハッとして鮮やかな苺狩り。


季節は秋。
苺はしおれてきた。
子どもが旅立つ季節。
苺のように小さな心臓に穴が見つかった。
永遠に治らないかもしれない。











ねぇ、とハッとして鮮やかな苺狩り。


季節は春。
子どもは無事だった。
元気にすくすくと育つ。
しおれていた苺がまた再び甘酸っぱい香りを醸し出すように。




ねぇ、と気がつけば鮮やかな苺狩り。


苺はどんどん実っていく。
我が子は結婚し、孫が生まれた。
我が子と孫が彩りを添える季節。



今日は私の誕生日。

ショートケーキの上の苺も孫が苺狩り。


この小説は以前書いた「詩(2) 苺狩りの季節」をショートショートに書き直してみたものです。併せて読んでいただけると嬉しいです。

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