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創作小説(12) 魚人と半魚人と人魚

...なんで娘の書く魚には足が生えてるの?

三山宏美は疑問に思い、娘の桜に質問した。
テレビで「最近の子どもは、魚はスーパーで売っている切り身のままの状態で泳ぐと思っている」と教育評論家が言っていた。
もしかしたら宏美夫婦の教育方針に問題があるのかもしれない。

しかも、今は夫の英彦は単身赴任中、宏美はこの難局を一人で乗り切らなくてはならない。

「うん、魚人!」
「...魚人?」
「だって魚人って誰も見たことがないでしょ。だから、人間ベースの魚人じゃなくて、魚に足が生えてる魚ベースの魚人もいるんじゃないかと思って。」

それにしても奇妙だ。
魚の腹からダチョウのような足が生えている。

「走るのは速い。新幹線と同じくらい!」と目を輝かせて桜は話す。

宏美は、この魚人が新幹線と並走する姿を想像した。
例えば、東京から新大阪まで新幹線で行く途中に富士山が見える。
富士山を背景に走る新幹線、そして魚、いや魚人...。

「...気持ち悪くない?」
「え、でも魚ベースの魚人がいても良いでしょ?」
「まぁいけないことではないけど...。」
「見て、半魚人!」

宏美はビクッとした。
どんな姿をしているのだろうか。
人面魚の腹からダチョウの足が生えている感じ...?
見たいような、見たくないような...。

宏美は思い切って見てみることにした。
すると、人間の上半身に魚の下半身の男女が描かれていた。

「いやこれは人魚じゃん!」と宏美は思わず笑って言った。

桜が「魚人と半魚人と人魚って何が違うんだろうね…。」と聞いてきた。

宏美は答えられなかった...。

こんな難しいことを考えられるなんて、桜は天才かもしれないと親バカな考えが宏美に浮かんだ。

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