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箱入り娘膝枕の願い`七夕によせて’

はじめに

7月7日、七夕の日、上記の今井雅子先生の手による本文を確認した私は、無性に二次創作欲を掻き立てられた。

「男側からの一方的なピロトークを、箱入り娘ちゃんは、果たしてちゃんと納得しているんだろうか、、、、、、」

そんな思いから、七夕の夜中に間に合うように大急ぎで書き留めたのが本作である。

本創作は、脚本家・今井雅子先生の『膝枕』をもとに、その2次創作である下間都代子さん作『ナレーターが見た膝枕〜運ぶ男編〜』と、kousukeさん作『膝枕外伝 ”ウエスト”・サイド・ストーリー』『膝枕外伝 薫の受難』を引用拝借しながら組み直し、きぃくんママが妄想を膨らませて書いた外伝ストーリーです。事後承諾で参考にさせていただいた各作者様に大変感謝申し上げます。


ただただうぶなままじゃない箱入り娘膝枕の自立心溢れた心情の成長物語をどうぞお楽しみください。

箱入り娘膝枕の願い ‘七夕によせて’

休日の朝、玄関先であなたは私の入った段ボール箱を受け取った。
でも、初めて会ったのはそれより3日前。
膝枕カタログの中だったのよ。

体脂肪40%、やみつきの沈み込みを約束する「ぽっちゃり膝枕」。母に耳かきされた遠い日の思い出が蘇る「おふくろさん膝枕」。「小枝のような、か弱い脚で懸命にあなたを支えます」がうたい文句の「守ってあげたい膝枕」。頬を撫でるワイルドなすね毛に癒される「親父のアグラ膝枕」。「幼い日の思い出蘇る おばあちゃんの膝枕」。「あなたに熱量授けます!ヤル気倍増(⋈◍>◡<◍)。✧♡きぃくんママ膝枕」……。

あなたはカタログを隅から隅まで舐めるように眺めてた。生真面目に熟考するあなたの表情から、私は自分が選ばれるってことを確信したわ。
何が何でも私は倉庫を出たかった。選ばれ、出荷されることは、自由への一歩なのだと自分に言い聞かせたわ。

誰も触れたことのないヴァージンスノー膝が自慢の「箱入り娘膝枕」。

箱入り娘の名前は偽りの字名(あざな)

膝枕ヴァージンは、既に、私の開発プロデューサーだった薫さんに捧げていたの。

薫さんは、私の生みの親であり、初恋の君。

まるで牢獄の様だった保管倉庫のダンボール箱の中で、息苦しくて、堪らずもがいて、傷だらけになってしまった私を優しく介抱し、自分の部屋へ連れ帰ってくれた命の恩人。

私は薫さんといつまでも幸せに、気ままに暮らしてたかった。

でも、膝枕カンパニーは、そんな私たちを引き裂いた。

膝枕に溺れ、出社せず、真面目に働かなくなった開発チーム社員宅から、私たち膝枕を回収して、使用済みがわからないようなリメイクを施し、発注ユーザーの元へと出荷したの。

配達の日あなたは、伝票の「枕」の文字に目をとめて

「枕」

と、喜びに打ち震えた声で、私を歓迎してくれてたわ。
そして、配達員から両腕で受け止めた私を、お姫様だっこして室内へと運び込んだのよ。
あなたは、そのはやる気持ちを抑え
爪でガムテープを不器用にはがした。

「カッターで傷をつけるようなことがあってはいけない」

それって、刃物を持つのが単に怖いんじゃないの?

私は薫さんとの愛を引き裂かれ、絶望と心細さに固くなっていたわ。それでも精一杯、筋金入りの箱入り娘として新生活と対峙する覚悟であなたの視線を直に浴びたの。

「カタログで見た写真より色白なんだね」

いきなりそう声を掛けられ、傷の修復に製造時よりも白く塗られたことに勘づかれまいかと、私はいっそう膝を硬くし、正座した両足を微妙に内側に向けて色ムラを隠したわ。

恥じらっていたわけじゃないの。
足をもじもじと動かし後退りしたのは、薫さんが私に教えてくれた所作。
「一人暮らしの男の部屋に連れ込まれたとしても、私は簡単に膝を貸す女じゃないのと初めに相手に知らしめておくべきだよ」
私の出荷先を心配して、じっと待つだけの膝にならないようにと、動きをしこまれていたからなのよ。

「よく来てくれたね。自分の家だと思ってリラックスしてよ」

何も詮索せず、能天気な声がけしたあなた。
強張っていた私の膝から、ホッと、力が抜けていったわ。

不意にあなたは、しどろもどろにこう言ったの。

「その……着るものなんだけど、女の子の服ってよくわからなくて.……」

驚いた私は抵抗したの。なのにあなたは私が喜んでるって勘違いしたみたい。

「一緒に買いに行こうか」

「嫌っ!」さっきより大きく、拒否を示したわ。

あなたは気づかない。
薫さんが選んでくれたショートパンツ。
あなたは今までの私を知りもしないで否定するのね。

その晩あなたは、私にもう触れもしなかった。
自分好みの服に着替えさせるまで、膝枕はいらないという姿勢を私は読み取ったわ。
私はひとり、薫さんの頭をこの膝に抱く夢を見ていた。

「マシュマロにつつまれるようだ」

と、いつも笑顔で喜んでくれた彼だけの私。
最後の夜を噛みしめながら……


翌日になって、あなたはいきなり私を旅行鞄の中に押し込んだわ。「デパートに一緒に連れていくためだ」と言って
そして一路レディースフロアへ向かいながら白々しく言ったの。

「窮屈でごめんね。少しの辛抱だから」

ファスナーが閉まりきらないのにあなたは、私を旅行鞄にギューギュー詰め込みましたね。そして乱暴に抱きかかえ、腕の中へ話しかけてくるあなたの顔は最大限にニヤけてて気持ち悪いわ。

「僕たちの邪魔をしないように、店員は寄って来ないね」

だなんて、あなたが怪しすぎるからに決まってるじゃないの。

「やっぱり白のイメージかなあ。こういうの似合いそうだよね。これなんかどう?」

手に取ったスカートを旅行鞄に近づけてくるあなたに

「やめて!」

と、鞄の中で叫んだって、あなたには聴こえなかったわ。

裾がレースになっている白のスカートを買い求めたあなたは、帰宅するや否や、私からショートパンツを剥ぎ取り、無理矢理そのスカートを履かせたのよ。

「いいね。すごく似合ってる。可愛い……もう我慢できない!」

いきなり、私の膝に倒れ込んだあなた。
もうこのマシュマロ膝は薫さんだけの私じゃないんだ。白いスカート越しに感じる、頭の重みは、私に否応なくのしかかってくる。レースの裾から飛び出した膝の皮膚には、あなたの生っぽい息とヨダレ。私は膝枕商品としての立場を思い知らされた。

あなたが留守の間に、なんとか逃げ出そうとドアの側まで膝をにじらせたけど、そこへいつも

「ただいま」

と、あなたが息を弾ませ帰って来た。


「出迎えに来てくれたんだね」

そんなの大いなる勘違いだわ。

私の膝枕に頭を預けながら、どうでもいいその日あった出来事を話しまくるあなた。
嫌悪で膝頭を小さく震わせると
「笑ってくれた」
「僕の話、面白い?」
と、矢継ぎ早に誤解を口にする。

私は膝頭を合わさて抗議したけれど

「拍手してくれた」

と更に陶酔して喋りまくるあなた。

「もっと君を喜ばせたくなった」

と言いながら仕事でしでかしたミスをイケシャーシャーと語り聞かせ、自分勝手に

「気持ちが軽くなった」

という始末。

目をギラギラさせて

「うつ向いていた僕は胸を張るようになったよ」

とふんぞり返ったわね。


ある日、あなたはいつもの時間に帰ってこなかった。

「これは十分に逃げるためのじかんがあるかもしれない」

玄関ドアのすぐそばまでたどり着いた私は、全神経を集中して鍵穴に念をおくった。

「開けドア!開いてドア!お願い..........。」

その時私の中にプログラムされていた薫さんからのメッセージが私に語り掛けてきたの

「大丈夫だよ。そのまま待っていて。
 7月7日の夜に君の内部に仕込んだプログラムが発動する。
 僕に君の居場所を発信するよ。
 その時、熱放射で君のやわ肌が少し融けてしまうかもしれない。
 でも、きっと僕は君を迎えに行く。
 だからそれまで待っていて」

私は喜びに打ち震えた。
しかし、はて、今日は何月何日なんだろう。

「今夜は6月14日。きぃくんママの誕生日イブで、日付をまたいだオトナ朗読リレーはきぃくんママです。」

そういえば今朝の【マスクの小人ニュース】がそう言っていたのを思い出した。

あと少し我慢して待てば、私は薫さんの元へ帰れるのだ。

そこへあなたは妙にご機嫌さんで帰宅した。
でももう私は嘆かない!もうじき薫さんが迎えに来てくれるのだから!

「やっぱり君の膝枕がいちばんだよ」

んッ?聞き捨てならないあなたのセリフ。
これはもしや誰かに膝枕されてきたのか?

「今から行っていい?」

電話口から聞こえたのは女の声。

あわてて電話を切り、あなたは即座に私をダンボール箱に押し込め
押し入れの中へと閉じ込めてしまったのよ。

私はこの膝にあなたの頭をのせなくて済むことにホッとしたけど

「押し入れのダンボール箱に閉じ込められた私のプログラム
 果たしてちゃんと機能するの?
 薫さんへの位置情報データはちゃんと発信できるの?
 今日は7月6日、そして明日は待ちに待った約束の日なのよ」

私は押し入れのダンボール箱の中にいることが、とても心配になってきたの。

連日あなたの部屋に通い続ける女が、ココに閉じ込められた私に気付いてくれないだろうか?

私は彼女に念をおくり続けたの。

「ねえ。誰かいるの?」「そんなわけないよ」「誰かが息をひそめて、こちらをジトっと見ている気がするんだけど」

それを聴いて私は全力でカタカタと音を立てたわ。

「ねえ。何の音?」
「気のせいだよ。悪い。仕事しなきゃ」「いいよ。仕事してて。私、先に寝てる」「違うんだ。君がいると、気が散ってしまうんだ」

こともあろうかあなたは急いで女を追い返した。
ダンボール箱から取り出されたわたしは、箱の中で暴れていたから、膝は打ち身と擦り傷だらけ。痛い膝をこすりあわせて、閉じ込められた反発を示したわ。

「焼きもちを焼いてくれているのかい?」

またいつものナルシズムであなたは私を抱き寄せると、触らないで欲しい傷だらけでひりひりする膝を指で撫でまわしたわ。

「悪かった。もう誰も部屋には上げない。僕には、君だけだよ」

「お願い。そんなこと言わないで、彼女と仲良くやって下さい」

私は手を合わせるように、左右の膝頭をぎゅっと合わせた。
それから膝をこすり合わせ

「早く彼女を迎えに行って来て」

そう伝えたかったけど、またまたあなたは勘違い。

「いいのかい? こんなに傷だらけなのに」

「いや、やめて!」

左右の膝をかわるがわる動かした私の打ち身と擦り傷だらけの膝に、一応は傷を避けながらあなたは頭を預けてきた。

「やっぱり、君の膝がいちばんだよ」

「最低!」

私と彼女の声が重なるように部屋中響き渡ったわ。
いつの間にか戻って来ていた彼女は、玄関に仁王立ちし、形のいい唇を怒りで震わせていたの。

「二股だったんだ……」「違う! 本気なのは君だけだ! これはおもちゃじゃないか!」

私は膝を震わせ「それいけ!やれイケ!どんとイケ!」

と、何でもいいからあなたをなじる彼女に声援を送っていた。
遠ざかる女の背中を追いすがるように見ていたあなたのマヌケ面は傑作だったわ。

あなたはどうやら、彼女への愛を誓うことにしたらしい。

「ごめん。これ以上一緒にはいられないんだ。でも、君も僕の幸せを願ってくれるよね?」

身勝手な言い草だと思いつつ、とにもかくにもあなたから解放されることがタダ嬉しかった私。
次の瞬間、私はまたもやダンボール箱に納められ、なんと!ゴミ捨て場に放り投げられたの。

あっけにとられて言葉も出なかったわ。

「私はごみなの?」

自分がどうしようもなくかわいそうに思えた。
ゴミ捨て場に私を置き去りにすると、振り返りもせず、走って逃げたあなた。


どのくらいの時間がたったのかしら?真夜中、雨が降ってたわ。

雨は涙雨。真っ暗闇の箱の中、身動き取れない私に代わって、空が泣いてくれているような気がしたの。
箱の隙間から入った雫がスカートの裾を濡らしてる。
私はダンボールごと雨のごみ捨て場で濡れそぼってしまったの。

膝枕シリーズは、ユーザーの膝枕となる以外の機能を持たないのがお約束だから正座の姿勢は崩せない。
この足は決して立って歩くことが出来ないの。

「せめて、ダンボール箱に閉じ込められていなければ、全力でにじりにじり動くことも出来たのに」

「タ ス ケ テ……」

激しく雨が叩きつけるダンボールの中で、どんどんしみいってくる雨と傷だらけの膝小僧から滴る血とで、赤黒く染まったスカートの裾のレースが太ももに張り付いて、気持ち悪くてしょうがない。
「ああ、今日が7月7日だったなら...」
指折り数えてきた、約束の再開日を目前にして、私は跡形も無くなってしまうんだろうか?
薫さんに見つけてもらえる前に、私はごみとして回収されて、燃やされるか埋められるか処理されてしまうのかしら?

私は憔悴しきったまま、祈るような気持ちで、愛しい薫さんとの思い出に想いを馳せてたの。
薄れゆく意識の中、我に返って考えたの。

「そうだ!せめて街灯の下まで行くことができれば、心優しい誰かが見つけてくれるかもしれない」

ゴミの山の中から転げ落ちるように、私は濡れてぐしょぐしょのダンボール箱ごと道路へ躍り出た。

キキーッ!
急ブレーキの音。

「なんだよ、こんなところにあぶねぇなあ。危うくぶつかるところだった。」

自転車を降りて近づいてきた男が、私のダンボール箱を蹴ろうとしたわ。
私はあわててガタガタッて音が立つよう動いた。

「え!」

その男はナント、あなたのうちに私を配達したあの、宅配便の配達員だったのよ。
男は自転車をかたわらに停めると恐る恐る近づいて

「これ、、、あ、枕」

配達しに行った時のことを思い出してくれたのよ。

「ってか、なんでコイツ動いてるんだよ」

配達員は蓋を開けて

「うわっ!」

血だらけの私を眼にしたの。

「だ、大丈夫か?」

私はここから救ってほしくて、力を振り絞って飛び上がって見せたの。

「おいおい!怪我してるのに、ダメだよ飛んじゃ!」

配達員は、私が飛び跳ねるのを静止しながら、アパートの錆びた鉄骨の階段の方に目をやり

「も、もしかして、お前、この階段?」

「いえ、ちがいます。そこに戻ったらまた私捨てられちゃうわ」

私は懸命に両膝を合わせパチパチと鳴らして訴えたけど、またしても誤解を与えてしまったの。

「わかったよ、連れて行ってあげたらいいんだよな」

配達員はダンボール箱ごと私を抱き上げ、慎重に抱えながら、雨に濡れた鉄の階段を上がって

「ここでいいよな」

と声をかけると、静かにドアの前に私を置いたから

「ありがとう、でも、ここじゃないの」

私は両膝を小さくすり合わせてみせたけど

「ヨシ、配達完了」

配達員は小さくつぶやくと、軽やかな足取りで鉄の階段を降りて去っていってしまったわ。


翌朝仕事に向かおうと玄関のドアを開けたあなたと、濡れてぐしょぐしょのダンボール箱と私は再会したわ。

「早く手当てしないと!」

私を見たあなたは、すぐまたゴミ捨て場へ捨てに行くではなく、私を部屋の中へと連れ入ってくれたのよね。
私を箱から抱き上げると、膝から滴り落ちた血があなたのワイシャツを赤く染めてしまった。

「大丈夫? しみてない? ごめんね」

私の膝に消毒液を塗り、包帯を巻きながら、申し訳なさそうに手当てしてくれるあなた。

そんなあなたにホッとしたのもつかの間。

「これもプログラミングなんじゃないか」

さっきまでのいたわるような表情とは打って変わり、白けきり、留飲を下げたあなたは

「明日になったら、二度と戻って来れない遠くへ捨てに行こう」

という言葉を私に吐き捨てたの。

「これで最後だ」

あなたは私の膝枕に頭を預けた。
私は思わず身を強張らせてしまったけれど、コレが最後だと思うと、あなたもそう悪い人じゃなかったのかもと、今更ながらに気持ちがほどけていた。

「今宵までここにいれば、薫さんが迎えに来てくれる。」

引き裂かれてしまった恋人たちが再び逢える、約束の7月7日。

夜は更け、私は段々と熱を帯びて、薫さんへの位置情報を発信し続けてた。

「もうじき逢える、きっと来てくれる、薫さん、薫さん」

時計は12時を過ぎ、待ち人来ぬままに、あなたの頭の重みだけが、私の膝へと沈み込んでくる。

「ダメヨ ワタシタチ ハナレラレナイ ウンメイナノ」

私は薫さんに呼びかけ続けた。


翌朝、目を覚ました私とあなたは異変に気づいたのよね。あなたの頭が持ち上がらないと思ったら、頬が私の膝枕に沈み込んだまま一体化していたの。皮膚が溶けてくっついてしまって、どうやったって離れなかった。まるで、こぶとりじいさんみたいに。

私とあなたは絶望した。もう、何の会話をする気力も失せ果ててたわね。
あなたが不自由な姿勢で探し当てた保証書を見ながら、膝枕カンパニーに電話をかけたって
もう無駄だってこと、私は知ってたの。
だって、薫さんは、私たちの愛を引き離した膝枕カンパニーの不正を内部告発し、あの会社はなくなってしまったってこと、マスクの小人ニュースで聴いたもの。
それなのに、薫さんは来てくれなかった。
私はただただこの身の不幸を嘆いていたわ。
あなたが気にした注意書きなんて、私にはどうでもいいこと。

「この商品は箱入り娘ですので、返品・交換は固くお断りいたします。責任を持って一生大切にお取り扱いください。誤った使い方をされた場合は、不具合が生じることがあります」

読んであなたは慌てているけれど、責任をもって一生大切にだなんて、私の方からごめん被りますわ。

薫さんも所詮男。
純真無垢な箱入り娘のヴァージンを奪ったら、今度は肉感的な体脂肪40%のぽっちゃり膝枕が欲しくなったのかもしれない。
男の心に依存するなんて、なんて私は甘ちゃんだったんだろう。

私が心から自由を欲し、誰にも依存しない覚悟を誓ったとたん、私の膝からあなたの皮膚は剥がれ落ちた。

さっきまでの重苦しさは跡形も無く消え。身も心も清々しいほど軽くなって、溶けてただれた皮膚の痕にも痛みはなく、帽子を脱ぐような軽やかさで、あなた私から頭を外したわね。

これから私は、しなやかに、したたかに生きていきます。
だからあなたも、健やかにお過ごしください。
もう決して、何かに依存して胸を張るんじゃなく、うつ向かないで、前を見て、自分の足で歩けるように。

【完】

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