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第19回 マンション防災を考えよう

管理組合の防災活動5(防災組織の位置づけや説得)

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
前回からは防災活動を始めることについての方法論について考えていますが、今回はその防災組織の管理組合、マンション内での位置づけ等について考えます。

防災組織がマンションの中でどのような立場で組織化されるのかについては、前に組織の形をどうするかを考えた際に、管理組合理事会で担う、管理組合(理事会)の下部組織「委員会」で担う、自治会で担う、の3種類を挙げました。
それではその組織は区分所有者、居住者に対する際にどのような立ち位置で接するのが良いのでしょうか。

一概には言えない部分が多いですが、基本的には「一緒に活動する仲間の代表」としての立ち位置を忘れないようにしたいところです。
防災活動を含め、災害に立ち向かう、災害に対する準備を行っていくことは、専門家でない限りはマンションの管理運営を担う管理組合活動、理事会のお仕事と同様に、一般的には「やったことのない」「よくわからない」内容が多いものです。
防災活動を担っている組織のメンバーは勉強することも多いですし、居住者全体、マンション運営全体に関わることを決め、推進していくという、ある意味非常に大きな責任感を持っていないとできない内容のものです。それでも防災組織は、居住者のために様々な取り決めを作成し、居住者に展開し、率先して活動を行っていくのです。

しかしながら、防災組織はやはり居住者の主体的な活動の一種で、決して居住者を指導する一段上の立場ではありません。そこを勘違いすると、「やつらはこんなことも理解できないのか。」「教えてやってるんだ。」「こっちの言うことを聞いていればいいんだ。」という方向に進み、どんなに良い組織や対策を企画、作成しても、居住者に理解されず、活動について来てくれなくなります。

自分たちが理解し、課題を設定し、その課題の解決のために必要な対策を策定した内容や効果を、他の居住者たちに理解させることが一番の仕事だと言っても過言ではないでしょう。
実際に災害が発生した際に、組織の中心メンバーがマンションにいるとは限りません。もし自分たちがいなくてもマンション内の防災活動、災害対策本部活動などが機能するためには、マンション全体で知識や行動を共有しておくことが必要になるのです。

私も実際にマンションでの防災セミナーなどを行う際には、まず災害とは、災害の怖さとは、災害はいつでもどこでも発生するんだ、という災害を身近な脅威であること、さらに災害対策が必要な理由(どうなってしまうのか)、を理解してもらうところから始めます。
いきなり「対策として有効なのは○○です。」と言ってもどうしてそうなのかを理解していなければ考え方に沿った行動もできませんし、トラブル発生時に応用も利かないという事態になるからです。

今回のタイトルにある「説得」というのは、まさにその「理解してもらう活動」のことを指します。根っこにあるのは、同じマンションに住む者同士の一致する利害である「資産価値の維持向上」「命や生活を互いに守る」ことです。
マンションでは「共助」による共同生活が必須になることは前に書きましたが、そのためには互いに立場や必要な行動などを理解しておくことで、コミュニケーションが円滑に進むのです。
マンションの管理運営に一番必要なものは「合意形成」であるということの典型例だと思います。

今回は以上です。次回は、マンション内での防災意識の維持向上について考えていきたいと思います。

今回もお読みいただきありがとうございました。また次回以降もご覧いただければ幸いです。よろしくお願いいたします。

マンション防災研究所 所長 城戸 学

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