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第72回 マンション防災を考えよう

マンション防災 正常性バイアス、同調性バイアス

皆様こんにちは。マンション防災研究所の城戸です。
このマンション防災を考えようのシリーズでは、マンションという集合住宅では戸建てとは違ったさまざまな設備や管理運営の仕組みがあることから、一般的な地域防災とは別の考え方が必要になる内容も多いため、「マンション防災」としての考え方をいろいろと考えています。

今回は火山の噴火を含めた災害について考える予定でしたが、直近で大きな地震が発生したため、その件を含めて少し違う話をしたいと思います。

4月17日(水)23:14、豊後水道宇和島沖を震源とするマグニチュード6.4、最大震度6弱の地震が発生しました。その揺れは瀬戸内海沿岸部の県を中心に、近畿圏から九州南端までに西日本の広範囲で観測されています。震源の場所的には近畿から四国、九州まで貫く中央構造線断層の近辺です。そのためか、気象庁ではすぐに東南海巨大地震につながるものではないという見解を出しています。
揺れの大きかった地方をはじめとして被災された方には心よりお見舞いを申し上げますとともに、一日も早い復旧復興をお祈り申し上げます。

まだ元日に発生した能登半島地震の記憶も新しい中で発生した震度6弱の地震、改めて日本が地震大国であることを認識させられます。

さて、このように大きな地震が発生するたびに、これも改めて認識してほしいことがあります。
それは「正常性バイアス」と「同調性バイアス」です。
マンションにお住まいの方は「集合住宅」として多くの方と同じ建物で生活しているという環境なので、戸建て住宅の方よりもこの2つのバイアスについて正しく知って考えておく必要があります。

「正常性バイアス」とは、地震の発生時、その揺れはじめや緊急地震速報が鳴った際に、「きっと今回も大丈夫、大きな地震ではないよ」「これくらいなら大丈夫のはず」などと、根拠もなく「きっと無事である」と思い込む(正確には思いたい)気持ちが先行してしまうことです。皆さんも夜中にケータイから緊急地震速報が鳴り始めてもすぐには起きず布団の中で様子を見るという行動が、一番経験があることだと思います。
これは、人間がとっさの出来事に対して気を動転させパニックになることを防ぐ防衛本能として必要な機能なのですが、災害に対してこのバイアスが強く出てしまうと、とっさの避難行動ができず、思いがけずケガをしてしまうなど大きな被害につながってしまう可能性があるので、気をつけなければいけません。

同様に「同調性バイアス」は、これも根拠なく「みんなといるから大丈夫」「みんなも逃げてないから自分も逃げなくて大丈夫」という考えです。
私自身も経験がありますが、映画館で上映中に緊急地震速報が鳴り始めたとき、だれも席を立たず、その場で座ったままで周りの人と顔を見合わせているなども(正常性バイアスとの組み合わせですが)この類です。
これが地震発生後に津波の危険性のある場所にお住いの方などは、避難行動が遅れることで大きな被害、命に係わる被害に直結するので、注意が必要です。過去の大地震の際も、高台へ向かう車の渋滞ができているところで波が迫っているのに逃げない人が多く、誰かが勇気をもって大声で「逃げろ!」と叫び、周りの人を引っ張っていくことで、みんながそれに続いて避難行動をとれた、というケースもあります。

マンションでは、自室にいるときには「正常性バイアス」が、マンション管理組合での活動や地震発生後に集合した際に「同調性バイアス」が出てしまうと、危険を回避することが遅れる、回避できないということにもつながってしまいます。これはやはり多くの人が集まって住んでいて、互いに気を使わなければならないというマンションならではのコミュニティの構造にもよるところがあります。

このようなことを避けるためにも、マンション居住者同士での平時のコミュニケーションを活発にしておく、共助を育む環境を構築し、適切な距離感のコミュニティを作っておくことが重要なのです。

是非、皆さんもこのような行動について考え、互いにきちんと意志表示をして助かる環境を作っておきましょう。

今回はここまでです。
次回は、話題を戻して火山について考えてみようかと思います。

マンション防災研究所 所長
防災士 福祉住環境コーディネーター
城戸 学

マンションに限らず防災関連のセミナーや講演、コンサルティングなどのご依頼をお待ちしております。よろしくお願い申し上げます。

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