見出し画像

視力0.1なんだよね、って言う人。

みなさん、メガネをかけていますか。

それともコンタクトレンズですか。

私ですか。

私は32年の人生ですが、いまだに裸眼でございます。視力は比較的いいです。運転免許もメガネなしでいけます。

100メートル先にいるハエを見ることはできませんが、日常生活で困ることはありません。


「おれ、目が悪くてさぁ。視力0.1なんだよね」

「あぁ、そうなんだ。眼鏡の度数、コンタクトの度数はどれくらい?」

「え、あのマイナスなんぼとかのやつ?」

「そうそう、-0.75とか-1.50とかのやつ」

「たしかね、-2.75くらい。マジで見えなくてさぁ」

それは真に目が悪いとは言えない。


大学生のとき、とある全国チェーンのメガネ屋さんでアルバイトをしていた。大学生のくせに、視力測定を覚え、お客さんの視力を検査し、メガネの加工もしてきた。

「メガネがずり落ちるんですよね」というお客さんが来店すれば、メガネの調整をしてあげて「これでどうですか?」と聞くと、みんな満足そうに帰って行った。

専門用語で面取りと言われるレンズの加工もできたし、高齢の方向けの遠近両用メガネも測定から加工まで全てできた。


当時、おなじ学生アルバイトでここまでの技術を習得している同僚はいなかった。学生は接客を専門とし、お客様から希望のメガネを渡されたら、測定係の人にバトンタッチする、という流れが王道。

だが、それだけだとつまらないな、と思ったので店長に言った。


「あの〜、僕も視力測定とメガネの加工ができるようになりたいっす。そしたら他の人の業務量も分散できますし。どうですかね」

とても忙しい店舗だったので、店長は快諾してくれた。

私の約2年のメガネ屋さんライフのスタートである。



冒頭、私は裸眼だと書いた。
裸眼の私がなぜメガネ屋さんでバイト?

なんかオシャレだなぁと思ったからである。

理由はそれ以外にない。
伊達メガネでいけるのだ。



視力というのは、一般的に2.0が最もよく、そこから徐々に下がって、0.5とか0.1とかさらには0.01とか、そんな段階をたどる。

が、例の気球が見える機械で測ると、もっと詳細に数値がでる。視力は「マイナス」の数値で表現される。


ちょっと悪いのが「-0.25〜-1.25」あたりか。
もうちょっと悪くなると「-1.50〜-3.50」みたいな感じ。

メガネ屋で測る視力は0.25刻みで表現される。

参考まで、私の肌感覚だが各数値はこんな感じ。

<-0.25〜-1.50>
テレビが霞んで見える

<-1.75〜-3.00>
テレビが全然見えない

<-3.25〜-4.50>
中距離の人の顔がぼやける

<-4.75〜-6.50>
近くの人の顔も見えない

<-6.75〜-8.00>
見えない

<-8.25以下>
見えなすぎる。

私が当時測定していた方々の中で、最もこの数値が低かったお客さんは、


-16.25であった。


「なんか全然見えなくて〜」と言って来店されたお客さんに「これまでメガネを作ったことはありますか?」と聞くと「ないんです」と言う。

どれどれ、と思って視力測定をすると、
驚異の「-16.25」を叩き出していた。


「こ、これは見えませんねぇ、眼科で処方箋をもらったほうがいいかと」と言いつつ、この方はこれまでどんな生活をしてきたんだ? と感じたものである。


その方のために作ったメガネを試着してもらったとき、言われた言葉が印象に残っていて、それが何かというと、


「世界ってこんなに美しいんですね〜」


しみじみとした妙な感動があった。



「私、目が悪くて」と言う人は、これも肌感覚なのだが「-0.50〜-2.75」あたりの方が多いと思う。

たしかに悪いし、日常生活に不備をきたす数値ではある。大変だなぁ、と思う。が、この言葉を誰かに言われるたびに、思わず確認してしまう。

マイナスなんぼなの?」



本当は、このメガネ屋でのアルバイトのときに、当時流行だったボストン型の丸メガネを売りまくった話だとか、いろんな話があるんだけど、気が向いたら書こうと思う。


視力測定ができて、メガネの加工ができる、と書いたが、しょせん大学生だ。

本物の認定眼鏡士資格を持っている人からすると「ふん、たいしたことはないな」と思われても仕方のない内容である。



が、誰かの世界を美しくする、という目的をもったあのアルバイトは楽しいものだった。


<あとがき>
メガネって奥が深いんです。レンズの薄さとか、度数が強くなると色味がついたりとか、フレームの違いだとか、顔の形に合うメガネの選び方だとか。今でも誰かがメガネをかけている姿を見ると、レンズを通した輪郭の歪みを見て「-5.00」くらいだなとか思っちゃいます。今日も最後までありがとうございました。

【私の関連記事一覧】大学生のときの話

他人に自分の名前も言えないくらい臆病だった大学生時代の話
恋なら、みずから落ちに行け。
大学を除籍になった私に勇気をくれた『竜馬がゆく』との思い出。

この記事が参加している募集

沼落ちnote

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?