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個性とはなんぞや②

さて、モヤモヤはしていたが、ムスコの担任に対しては、これまでもいい印象しか持っていなかった。

ムスコは
「〇〇先生って、頭いいよ!」
なんて、よく話してくれるし、普段も子ども達に近い気持ちで接してくれている様子だった。
なので、あの先生が言うなら仕方ないかぁ…って気持ちになっていた。ってゆうか、そう思うことにしてモヤモヤを誤魔化していた。

電話を受けた翌日、私は仕事から帰るといつもの様に「今日、なんかあった?」と、ムスコに話を振る。すると、
「あ、あのさぁ!今日学校行ったらまた作品直せって言われた!」
と、明らかに不服そうな顔と声でムスコが言った。

「え?なんで?昨日直したんじゃないの?」
「なんか、校長先生がまだダメだって言ったって言われて」
「朝、学校行ったら〝悪いんだけど〟って言われて、また直さなきゃいけなくなった!」
「はぁ?どーゆう事?」
「俺さぁ、今日、中休み無くなっちゃったんだよね!」
ムスコは不満を爆発させるがごとく、どんどん喋りだした。

「銃がダメって言うから、銃を剥がして上から絵の具で塗った。」
「え?それ、昨日の話でしょ?」
「違うよ!昨日は〝弾(たま)を外そう〟って言われたから、銃から飛び出てた弾だけ剥がした。」
「あと、タイトルも変えてって言われたから変えた。」
「???」
「なのに、今日も言われてさぁ。あれ、外しちゃったらもう意味が分からなくなるのに!」

…おいおいおい…なんか、話が微妙に違うし、ムスコ、全然納得してへんやんけ…!!

私はちょっと意味が分からなくなった。て、ことは、昨日の電話の時点で1回目の直しがもう終わっていたって事?なのに、まだ校長がイチャモンつけてきて、嫌々再度直したって事か?再リテイク?小学生が??

「あんた…全然納得してないやんけ…本当に直して良かったの?」
と、聞いた私に対して、ムスコは忘れられない一言を言った。

「いいよ、別に。大事な作品じゃないし。」

ムスコは、お世辞にも絵が上手い方じゃないと思う。芸術的センスがあるのかどうか、私のセンスの範囲ではとんと分からない。
しかし、ムスコはこれまでの作品展で作ったそんな作品でも、全部自分の部屋に綺麗に飾っていた。
タイトルも壁に貼り付けて、さながら美術館のように大事にしていた。

「ムスコ、それは良くないよ。」
「良くない事をさせられたんだよ。」
「だって、大事だったのに、大事じゃない作品になっちゃったんじゃん。」

私はムスコに静かに言った。
校長よ、なんて事してくれたんやとハラワタが煮えくりかえるような気分になっていた。

ムスコに手渡された「作品展」のパンフレットには、校長の言葉で
「子どもたち一人一人の個性を生かした作品展です」
みたいな事が書かれていた。

「どの口がゆうとんねん…」
と、私はもう怒りが口に出てしまって止まらんようになっていた。

つづく。


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