人生をゴミにするってなんだろう?

 哲学科に進学しました。
 
 何十年もバリバリサラリーマンをやってきた父親には難色を示され(離婚済みだったからそうだったけど、まだ結婚してたら反対してたと思う)、母親にはOKを出されたもののもともと放任主義の人なのでなんとも言えない・・・

 哲学で食っていくのは難しいのかなと思います。ネットだとそんな感じですし、哲学者なんて少ないですし、僕がどこかの社長だったら哲学科出身の就活生なんて雇いたがりません。まあそれには哲学に問題があるというより哲学をやる人なんてみんなちょっとおかしいから・・・という理由もありますが。それに、僕自身哲学を勉強して、これで商売はできないなと思いました。できるとしても書く才能や話す才能がセットで必要になると思います。哲学科のオリエンテーションでおそらく最初に言われたのが「ちゃんと勉強すれば就職はできます」ということですが、それは哲学が就職に有利にならないことを言外に示していますよね。

 なので僕は、食っていくことを諦めました。定職に就けなくてもなんとかやっていく方法を僕なりに考えましたし、いまさらまともに生きるつもりもありませんし、なにより!もっと偏差値が高いとはいえ文学科や社会学科(受かっていた)に行って若い四年間と多額の学費(私立なので)と労力を費やしたこと、哲学科に行けなかったことを今後一生悔いるより、哲学科に行って一生そのありがたさと思い出を噛みしめた方がいいと思ったからです。

 というわけで僕は、今まさに、人生をゴミにしている真っ最中です。いや・・・今後の人生が一生フリーターかニートな可能性を考えれば、そしてこれまでの人生の暗さを考えれば、今が絶頂期ではあるのですが・・・

 しかし、よくよく考えると、人生をゴミにするとはどういう意味なのでしょうか?僕はこんなにも楽しくて、面白くて、ワクワクしているのに、これが最善の選択だと確信して安心しているのに、なぜこれが・・・哲学科に行くことが人生をゴミにするのでしょうか?僕からすれば、哲学科に行かない選択こそが人生をゴミにします。

 そもそも、ゴミという評価はどのようになされるのでしょうか?評価は相対的なので、ゴミじゃない人生もあるということになります。哲学科が就職で問題になるということは、定職を持っていることがゴミじゃない人生でしょうか。いや・・・ふざけないでください。この世には事情があって働けない人、仕事とは認められていないが確かに貢献している人(専業主婦など)、定職のスタイルでは働けない事情のある人がいます。彼ら彼女の人生をゴミだなんて言えません。

 思うに、本当は人生同士の比べあいっこはできないと思います。たしかに、たとえばお金がある方が幸せになりやすいと思いますが、傾向の話で決定打にはなりません。問題は本人が幸せであるか、本人がどういう選択をすれば幸せになれるか、ということです。ここで選択肢を比べる必要があって、それは自分自身の人生の比べあいっこです。つまり、僕の場合は哲学科に行く人生と哲学科に行かない人生の、です。幸せが人それぞれならこれは僕にしか比べられません。

 そして僕は比べました。決めました。哲学科に行くと。でもゴミにするつもりなんて本当はないんです。冗談で言ったりはしますけど・・・僕にとってはこれが最善なんです。それに文句を言われても・・・ね。自分で自分を悪く言うのもやめましょう。



 ところで、僕は音楽が好きなのですが、3月15日にとあるライブに行きました。静岡から東京まで日帰りで。そこでバイドクというバンドに出会いました。彼らのことはそれほど好きではなかったのですが、生で聴いたときに暴力的ですらある衝撃を食らって、思わず人生について考えさせられました。バイドクさんたちは40歳手前くらいで、YouTube登録者数が1640人。20年くらい活動しているようですがその日のライブは60人くらいの規模で行われてて、それも合同ライブだったので・・・つまりまだそんなに人気じゃないわけです。演奏する曲は「AV戦争」「勃起NOW」などで、パフォーマンスとしてちんちんに懐中電灯を括り付けたまま天井に張り付くというのがあります。

 彼らは人生をゴミにしているのだろうか・・・多くの人は「そうだ」と言う気がします・・・でも、あんなに楽しそうに全力でやってるんですよ?20年くらいも。なのに彼らの人生がなぜゴミになるのでしょうか。

 もう一つ話したいことは、僕の父親についての話です。僕の父は僕が幼稚園生くらいのときに母親に離婚したいといって離婚しました。コネで入れた保険の会社では社長の一歩手前、そのセンター?のトップまで上り詰めたらしいのですが、鬱になって辞めました。定年より5年早く。家族は妹が一人いますが、ほとんど縁を切っているような状態です。

 という話を直に聞いて、ああ、その人生はゴミだ、と思いました。正直。職はあっても職以外のいろいろなものがありませんよね、職より大切ないろいろなものが。



 バイドクさんは僕の教師に、父親は僕の反面教師になってくれた気がします。そして最後の教師は、実際に教授先生でした。縁あって仲良くさせていただいている文学部の元教授先生に聞いたんです。

 「僕・・・哲学科に行ったら人生がゴミになるかなって思ってるんですけど・・・・・・でも、人生をゴミにできるほどやりたいことがあるって、すごい喜ばしいことじゃないんですか?」

 と。

 そしたら、

 「その通りだよ。みんなそれを探しているんだから」

 と、答えられました。


 みなさんはどうでしょうか。人生をゴミにしてもいいような、喜ばしいことを見つけられましたか?それに進めていますか?

 僕は、今のところいい感じです。

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