2019年に読んで面白かった小説ベスト10

2019年に読んだ小説は全部で54冊でした。昨年に引き続き、今年も個人的なベスト10をお届けします。

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おさらい:過去のベスト10・最新のTOP10

まずは2018年の振り返り。「消滅世界」や「炎の塔」、「噂」あたりは小説に馴染みがない人にもオススメしやすい作品です。今からでも遅くない。ぜひどうぞ。


番外編 「恋のゴンドラ」 東野圭吾

都内で働く広太は、合コンで知り合った桃美とスノボ旅行へ。ところがゴンドラに同乗してきた女性グループの一人は、なんと同棲中の婚約者だった。ゴーグルとマスクで顔を隠し、果たして山頂までバレずに済むのか。やがて真冬のゲレンデを舞台に、幾人もの男女を巻き込み、衝撃の愛憎劇へと発展していく。文庫特別編「ニアミス」を収録。

ベスト10を始める前に、まずは番外編から。

短編集であり、恋愛の修羅場をポップに描いた作品。特にゴンドラの話を読んで、あぁなんかコントっぽいなと思ったのがとても印象に残ってます。

そういえば、劇団ひとりの「陰日向に咲く」も、最初はコントとして書いていたものが途中で方向転換して小説になったそうで、小説もコントも通ずるところがあるんだろうなと。

小説家が脚本を書いて芸人さんがコントをする。こんなコラボがあっても面白いはず。

第10位 「マチネの終わりに」 平野啓一郎

天才クラシックギタリスト・蒔野聡史と、国際ジャーナリスト・小峰洋子。四十代という“人生の暗い森”を前に出会った二人の切なすぎる恋の行方を軸に、芸術と生活、父と娘、グローバリズム、生と死などのテーマが重層的に描かれる。いつまでも作品世界に浸っていたいと思わずにはいられないロングセラー恋愛小説を文庫化!

アメトーークの読書芸人で紹介され、昨年は福山雅治・石田ゆり子で映画化もされました。

この流行に乗って手に取った方、要注意。文章が独特なので普段小説を読み慣れていない人だとビックリするかも。普通は登場人物の誰かの目線(=一人称)で描写していくけれど、この作品はナレーター的な目線で描写されていて登場人物が三人称で表現されているし、そもそも高尚な表現も多い。

物語はまさに大人の恋愛。「好き!」ではなく、いろんなものをひっくるめて、これを「愛」と呼ぶのだろうという、いわば悟り。

第9位 「完全無罪」 大門剛明

21年前の少女誘拐殺人事件の冤罪再審裁判に抜擢された期待の女性弁護士・松岡千紗。しかし、千紗はその事件で監禁された少女の一人だった。間一髪で自分を殺めたかも知れない容疑者に千紗は敢然と対峙する。罪を作り出す罪、「冤罪」法廷が迎える衝撃の結末。大ベストセラー『雪冤』を超える傑作。

2019年大晦日にカルロス・ゴーンが「もはや私は有罪が前提とされ、差別がまん延し・・・」と声明を出しました。確かに裁判を経て罪が確定しないと有罪ではありません。さらには、有罪が確定したあとでも再審請求が通って無罪判決が出れば、もう完全に無罪です。

それでも、世間は犯人扱いし続けてしまう。

真犯人が判明したのならともかく、不当な証拠だったから有罪とは言えないという理由での無罪判決だったとしたら尚更。

帯の「無罪は無実ではない」が重くのしかかります。

第8位 「バベル」 福田和代

ある日突然、同棲している恋人が高熱で意識不明の重体となり、救急車で搬送される。彼に付き添い続けた悠希にも、魔の手がしのび寄り…。感染爆発が始まった原因不明の新型ウイルス「バベル」に、人間が立ち向かう術はあるのか?日本政府はある対策を講じる決断をする。近未来の日本を襲った緊迫のバイオクライシス・ノベル。

パンデミックが発生し、食い止めるために孤軍奮闘するパターンはありがちだけど、感染したあとの展開に重きをおいた珍しい作品。

とても映像映えする内容なので、映画化とかNetflixオリジナル配信とかになったら面白いんじゃないかな。

第7位 「望み」 雫井脩介

思春期の息子と娘を育てながら平穏に暮らしていた石川一登・貴代美夫妻。9月のある週末、息子の規士が帰宅せず連絡が途絶えてしまう。警察に相談した矢先、規士の友人が殺害されたと聞き、一登は胸騒ぎを覚える。逃走中の少年は2人だが、行方不明者は3人。息子は犯人か、それとも…。規士の無実を望む一登と、犯人でも生きていて欲しいと願う貴代美。揺れ動く父母の思い―。心に深く突き刺さる衝撃のサスペンスミステリー。

高校生ともなると、もう親の知らない社会で生きているのが当たり前。

息子の友人が殺された。犯人は同年代で二人組らしい。でも息子を含めて3人が現在も行方不明。犯人は二人。残る一人はきっと殺害されている。

果たして、息子は犯人として生きているのか、被害者として死んでいるのか。

こんな究極の選択に迫られたら、どちらを望みますか?

すでに映画化が決定しているようです。

第6位 「リカ」 五十嵐貴久

妻子を愛する42歳の平凡な会社員、本間は、出来心で始めた「出会い系」で「リカ」と名乗る女性と知り合う。しかし彼女は、恐るべき“怪物”だった。長い黒髪を振り乱し、常軌を逸した手段でストーキングをするリカ。その狂気に追いつめられた本間は、意を決し怪物と対決する。単行本未発表の衝撃のエピローグがついた完全版。第2回ホラーサスペンス大賞受賞。

2019年には高岡早紀主演でドラマ化されました。

「リカ」だけでなく「リターン」「リバース」「リハーサル」「リメンバー」と5作品続く人気シリーズです。

猟奇さではダントツ。会話が通じないのはもちろん、ちょっと強く殴ったくらいじゃビクともしません。リカの衝撃から続いてリバースの最後の展開はしびれるものがあります。

早くリメンバーを読まないと。

第5位 「騙し絵の牙」 塩田武士

出版大手「薫風社」で、カルチャー誌の編集長を務める速水輝也。笑顔とユーモア、ウィットに富んだ会話で周囲を魅了する男だ。ある夜、上司から廃刊の可能性を匂わされたことを機に組織に翻弄されていく。社内抗争、大物作家の大型連載、企業タイアップ…。飄々とした「笑顔」の裏で、次第に「別の顔」が浮かび上がり―。俳優・大泉洋を小説の主人公に「あてがき」し話題沸騰!2018年本屋大賞ランクイン作。

最初から主人公は大泉洋ですと言い切った、いわゆる当て書きされた作品。

なるほど、連載されていたダ・ヴィンチでも表紙や特集とも連動できるし、書籍の表示にも使える。当然映像化までが視野に入っている。

出版不況において、こういったクロスメディア展開を前提とした手法もあるんですね。

そして内容も出版業界での奮闘。雑誌や書籍を売ること以外でどうビジネスを成立させ作家さんが潤うかは現実にも直面している課題そのもの。

第4位 「坂の途中の家」 角田光代

刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子供を殺した母親をめぐる証言にふれるうち、彼女の境遇に自らを重ねていくのだった―。社会を震撼させた乳幼児の虐待死事件と“家族”であることの光と闇に迫る、感情移入度100パーセントの心理サスペンス。

感情移入度100パーセントは、決して大袈裟ではない。

全てのシーンに自分自身に思い当たることが多すぎて、休憩し心を落ち着かせながらじゃないと読み進められないくらい。

2019年には柴咲コウ主演でドラマ化もされました。

結婚して子供がいる方なら男性でも女性でも、ぜひ読んでガンガン心を揺さぶられてほしい。

第3位 「悪寒」 伊岡瞬

大手製薬会社社員の藤井賢一は、不祥事の責任を取らされ、山形の系列会社に飛ばされる。鬱屈した日々を送る中、東京で娘と母と暮らす妻の倫子から届いたのは、一通の不可解なメール。“家の中でトラブルがありました”数時間後、倫子を傷害致死容疑で逮捕したと警察から知らせが入る。殺した相手は、本社の常務だった―。単身赴任中に一体何が?絶望の果ての真相が胸に迫る、渾身の長編ミステリ。

単身赴任していたら、残してきた妻が自分を飛ばした上司を殺害。

家族のことを実は何も知らないことを痛感し、次々と出てくる話に翻弄されつつも真実を追い求めていく。

どんでん返しも細かい伏線回収もある、これぞミステリー。先の展開を予測しながら楽しみたい人にぜひおすすめした作品です。

第2位 「朝が来る」 辻村深月

長く辛い不妊治療の末、特別養子縁組という手段を選んだ栗原清和・佐都子夫婦は民間団体の仲介で男子を授かる。朝斗と名づけた我が子はやがて幼稚園に通うまでに成長し、家族は平仮な日々を過ごしていた。そんなある日、夫妻のもとに電話が。それは、息子となった朝斗を「返してほしい」というものだった―。

泣ける。養子をもらった側の覚悟と優しさも、養子に出した側の境遇も想いも、いろんなものが相まって、グサグサ突き刺さる。

こんなに内容が濃いのに、ページ数はそれほど多くない。小説家辻村深月のスゴさをまざまざと見せつけられました。

2016年にはテレビドラマ化され、2020年には永作博美主演で映画も予定。

伝説の書店員、新井さんの選ぶ、新井賞も受賞しています。


第1位 「二千回の殺人」 石持浅海

不可抗力の事故で最愛の恋人を失った篠崎百代。彼女は復讐の為に、汐留のショッピングモールで無差別殺人を決意する。触れただけで死に至る最悪の生物兵器“カビ毒”を使い、殺戮をくりかえす百代。苦しみながら斃れていく者、逃げ惑う者、パニックがパニックを呼び、現場は地獄絵図と化す―。過去最大の密室で起こった、史上最凶の殺人劇。

書店でもあまり見かけず、そんなに話題になっていない作品ですが2019年の第一位は文句なしで「二千回の殺人」。

パニックものは一つのジャンルとして確立されていますが、これはテロを起こす側が主人公になった珍しい作品です。手に取った感想は、分厚い!700ページ弱もあります。こんなに肉厚なのに、続きが気になりすぎて一気に読めてしまう。

2,000人を殺害します。飛行機や爆弾で一気にドンではなく、2,000人を一人ずつ自分の手で。捕まらずに。連続で。

amazonの評価は激低なのですが、読書メーターやブクログの評価は上々。この違いはなんなんでしょうね。

感想

2019年も面白い作品にたくさん出会えて良かった。

相変わらず周りに小説を読んでいる人は少ないのですが、最近は開き直って、こちらから、あなたならこの小説が気に入りそうとオススメするようにしています。完全に自己満足ですが楽しいですよ。

日々の読書記録はInstagramにアップしてますので、こちらもぜひ。



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