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夢の中では自由。映画『パプリカ』

こんばんは。きなこもちです。

みなさんは明晰夢を見たことがありますか?明晰夢とは夢の中で夢だと気づいて自由に動けるようになる夢のことです。夢の中で夢だと気づくことが重要です。気が付かなくても割と夢の中なら空も飛んだりしますしね。私は最近は見ませんが昔はよく見てました。明晰夢だと気が付きやすいシチュエーションがあって、誰かに殺されそうになる夢で現実ならあり得ないところで死にそうになるんです。なんでこんな目に?とか、こいつはなんで私を殺そうとしてるんだ?とか冷静になった瞬間にあれ、なんで私はこんなに走って逃げてるのに汗一つかいてないんだ、あ、夢かこれはと気づくのです。そこからは自分の夢なので、追いかけてきた殺人鬼にも消えてもらって、好きに空を飛んだりします。もし夢の中でやるように空を自由に飛べたら、どんなふうなのでしょうね。

今回は夢が現実を侵食する映画『パプリカ』を紹介します。

あらすじ

精神医療研究所が開発した、他人の夢を共有できる画期的テクノロジーDCミニが盗まれた。
それを機に研究員たちは次々に奇怪な夢を見るようになり、精神を冒されていく。」謎の解明に挑む美人セラピスト千葉敦子は、極秘のセラピーを行うため、性格も容姿もまったく別人の夢探偵パプリカに姿を変え、クライアントの夢の中へと入り込む。
しかし、狂ったイメージに汚染された夢の中では、おぞましい罠がパプリカを待ち受けていた…。

https://www.sonypictures.jp/he/815804

明晰夢よりヤバい

「本人にだけ夢の世界が現実でも見えるようになってしまう」というのは統合失調症患者の状況と同じです。周囲の人からするとわけのわからないことをしゃべっていても、本人にとっては現実なのです。私はこの映画をはじめて見たとき前評判で気持ち悪いと聞いてたんですが、こんなにうまく統合失調症患者の見ていそうな世界を一般の人にもわかるように見せてる作品があるのかと感動しました。これは明晰夢より数段ヤバいです。夢と言いながら夢ではなく現実の話をしてるからです。

『パプリカ』の序盤で、いきなり所長が狂います。たぶんあのシーンは多くの人が恐怖すると思います。しかし、あの状況にある人が現実にいるということのほうが本当は怖いと思います。

映画『インセプション』を見てるとよりおもしろい

冒頭で明晰夢とは何かを説明しましたが、夢から覚めれば夢は終わってくれます。しかし『パプリカ』は自分の思い通りになる終わらない夢を見ようとすること、それが現実も侵食してしまうことがマズいです。このへんは映画『インセプション』でも「自分の思い通りになる世界が永遠に続いたら?」というテーマで語られているので、みんな考えたくなるんでしょうね。

映画『インセプション』を見てない人からするとわかりにくいかと思うんで、ちょっとだけ解説します。『パプリカ』は他人の夢に入ってパプリカという女性がクライアントの悩みを解決することが仕事です。夢を通したカウンセリングがメインです。一方の『インセプション』も他人の夢に入ります。しかし『パプリカ』よりも、人の夢に入ることがより広まった技術として捉えられていて、かつその技術を使って大会社の社長や役員の意思決定も狂わせるような秘密組織が出てきます。この組織に属する主人公の活躍と葛藤の話がメインです。クライアントは夢を見ている本人ではなく、別の人や競合会社だったりします。『パプリカ』のように悩みを解決する形をとりつつ、人の心変わりを促してクライアントに都合のいい意思決定をさせるんです。夢に対する切り口が若干違います。その捉え方の違いがおもしろいんですね。

このようにどちらも「夢の中は自由だ」という前提がありつつ、利用の仕方が違ってます。『インセプション』との大きな違いは本当に現実にまで夢が侵食することです。『インセプション』も夢の中に潜りすぎて現実との境目がわからなくなってしまうのですが、あくまでも夢の中にいる話です。『パプリカ』は本来現実では絶対に起こらないようなことを夢と融合させて起こさせることが違います。『パプリカ』の序盤はまだ夢を見ている本人にだけ夢の世界が現実でも見えるようになってしまうだけなのですが、物語が進むと関係ない人にまで夢の世界が見えるようになってくるので、とても気持ち悪い話になります。

映像、音楽、役者の演技どれもすばらしい

個人的にこの作品はめちゃくちゃ気合の入った作品だと思ってて、映像、音楽、役者の演技のどれをとってもすばらしいと思います。冒頭の所長が狂っちゃうシーンは映像の気持ち悪さもすごいんですが、平沢進の音楽が不気味さを演出してますし、堀勝之祐の人の話が全く聞こえてない強烈に狂った演技が本当にすごいです。狂った人の演出にやたらと甲高い笑い声というか、無駄にヘラヘラしてる感じでやったりすることがありますが、ヘラヘラしてるとかではなくて、本当に楽しそうなんですよね。でも状況と本人の発言やその笑顔が驚くほどアンバランスなのです。あのシーンは必見です。

あと千葉敦子がベッドに沈み込んでいくシーン。とてもよいです。千葉の役を林原めぐみ、千葉に片思いしている小山内の役を山寺宏一が演じていて、またミサトさんと加持さんじゃーんと思うところですが、ベッドに沈み込んでいくところでどうしようもなく手が届かないところや小山内の気持ち悪さがめちゃめちゃ出てて、ここのシーンも好きですね。林原めぐみと山寺宏一の二人がメインでいろんなアニメに出てるのが見たければ『日本アニメ(ーター)見本市』もオススメです。古谷徹は出演時間が少ないのですが、DCミニを作ること以外からっきしだめだけど憎めない時田の役で、こういう役もするのかーと思った記憶です。あと江守徹。ナレーション業もすごく多い方ですが、こちらの声もカッコいいです。

おわりに

気持ち悪い、怖いと評判の映画で、事実そう思うシーンもあります。しかし、その前評判だけで見ないのはもったいないと思います。ぜひ、お暇を見つけて見てみてください。


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