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算数学習の落とし穴:九九暗唱の裏側に隠れた算数の本質とは?

この前、「整数の性質」(偶数と奇数)で1~10までの整数をあるかないかで分類する、「あるなしクイズ」を紹介しました。
詳しくはこちらを↓

算数の問題を大きく2つに分けると、
計算問題と文章題です。

とすると、あるなしクイズは文章題に一応位置付けられます…(雑)

前回のクイズを文章題にすると、以下のようになります。

問題
1~10までの整数をある・なしという視点で2つに分類して、その理由を説明しなさい。

こうすると、一気にやる気が失せますね…
難しく感じてしまいます。
それどころか問いをもつことができないので、授業がすすみません…😢

ですが、文章題と捉えて、解く順序を確認していきましょう。

①問題文を読み、内容を理解する(クイズの内容を理解する)
②理解したことを図・表にし視覚的に捉える(表にしてまとめる)
③式を立てる(式に表すことができるか考える)
④計算する(答えをだす)

この問題を出題すると、
1,3,5,7,9、(奇数)
2,4,6,8,10(偶数)
といきなり答えをだしてもおかしくありません。
ですが、これでは分類しただけで、理由がありません。

問題文には、
「理由を説明しなさい」
とあります。

文章題と捉えた場合、
この問題場面で理解したことを図や表に表すことができるか?
また、式に表すことができるかを考えることができるかが
本質的な理解に迫る手立てとなり、それが理由となります。

ですが、このようなことを苦手にしている子がたくさんいます。

なぜか?
九九暗唱の弊害です。
九九暗唱に力を入れすぎるあまり、計算を自動化するだけでなく、文章題においても文章をろくに読み取らず、でてくる数値にだけ注目し、計算してしまうのです。

九九さえできていればなんとかなるという思い込みから、答えさえあってりゃいいでしょ思考となり、
算数の問題場面と素直に向き合うことができなくなってしまっているのです。

なので、①②③をとばして(問題文をよくに読まず、図に表すこともせず)いきなり答えを出そうとし始めてしまうのです。
さらにこの場面では、使わなくてもよい「偶数・奇数」という言葉が思考の邪魔をしています。
数を量として捉えずに暗記にたよった結果とも言えます。

以前、

10の合成分解が自動的に行われるのは、その後の計算の学習に不可欠ですが、量として捉えずにただ答えだけ暗記してしまうのは危険です。
だから、必ずブロック操作をさせてください。
このブロック操作をたくさんしたかどうかが、中学年以降の算数の学習の肝になります。

算数障害って何?⑤より

と説明しました。
つまり、量として捉えずに答えだけを暗記しようとしているためです。
記憶に頼りすぎた結果、
計算処理できること=算数できる
という勘違いが生じるのです。
計算処理ができるのは悪いことではありませんが、算数の本質ではありません。むしろ計算であれば、どんな複雑なものであっても電卓やコンピュータがやってくれます。
計算処理以外に大切なことをこの時期に学ばないといけないのです。

だから、
九九暗唱完璧=算数できる
という勘違いが生じるのです。

答えが複数ある場合や、文章で答えを求める問題にいたっては、対応すらできなくなります。

九九暗唱が完璧なのは、よいことかもしれませんが、算数の本質ではありません。
九九の答えは忘れてもなんとかなります。
むしろ、大切なのは、忘れたときにどうやって解いたらいいのかがわかることなのです。

さて、この問題場面を分類すると、下のような表にまとめることができます。

問題を表にあらわしてみる

そしてここから式を導きだし、理由を整理するのです。

説明しやすくするために、難しくなってしまいました。
当然ですが、こんな風に小学校では授業はすすみません。

クイズを通して、問いを見つけ出し、いろんな考えを引き出しながら、あまりがでるときとでないときの違いについて考えさせていきます。

すると、「0」ってどっち?
となります。

これを先ほど考えた式をもとにして話しあわせます。

0は、何で割っても0なんだから、あまりは絶対に出ないよ。
となり、
0は偶数と結論づけます。

以上、「算数学習の落とし穴」でした。

参考になる方がいたら幸いです。


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