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読書紹介34「七つの会議」その② 

あらすじ
きっかけはパワハラだった!トップセールスマンのエリート課長を社内委員会に訴えたのは、歳上の部下だった。そして、委員会が下した不可解な人事。いったい二人の間に何があったのか。今、会社で何が起きているのか。事態の収拾を命じられた原島は、親会社と取引先を巻き込んだ大掛かりな会社の秘密に迫る。ありふれた中堅メーカーを舞台に繰り広げられる迫真の物語。傑作クライム・ノベル。

感想

「半沢直樹」、今ドラマが放送中の「ハヤブサ消防団」の作者である池井戸潤さんの作品です。何年か前に映画化もされていました。

会社や組織によくある多様な目的の会議の様子を通じて、会社で働く人の葛藤や人間ドラマ、苦労や決断などを描かれていました。そして、それぞれの会議において「中心となる人物」の描写を通じて、働くことの意味をいろんな角度から照らしてくれていました。また、その一つ一つの「物語」の中で、「事件」が進行し、最後のほうの「会議」(章)で全貌がつかめ、会議の裏側で何が進行していたのかが分かり、驚嘆させられました。一種の「どんでん返し」でした。。これまでの伏線が組み合わさって、それぞれの人物の真の顔が見え、「犯罪」に対する会社の動きなどもスリリングだったと思います。

作者の池井戸さんは、実際に銀行で働いた経験があるそうです。だからでしょうか?働くことに関する言葉の熱量が半端ないです。また、現場で働く人の葛藤や苦悩へのまなざしに優しさを感じました。

会社組織の中で、上司と部下の関係も難しいです。そんな葛藤にまつわる言葉もありました。

・今が順調だったら、過去をあれこれ思い悩むことはきっとない。つまり、過去を正当化したいのなら、とどのつまり、今目の前にある問題を解決するしかないのだ。

・2時間ほどの会議だったが、肝心なことは5分で決まる。物事とは往々にしてそういうものかもしれない。

・お前は自分が賢いと思っているだろう。泥臭い仕事ぶりをいつも高みから眺めて、ああしろ、こうしろと偉そうに部下に口出ししてたよな。だけどその間、お前が自分でまとめた商談がどれだけある。利口ぶって、椅子に座って手を汚そうともしない。そんな奴の考えることといったら、自分のことばかりだろうな。自分のことしか考えない奴に、会社のために汗水流して働く奴らのことは分かりはしない。だから、何かあれば、それは保身だと安直な結論に結びつける。それが、お前の限界なんだよ。

・中身のない奴ほど、一丁前のことを言うんだ。

小説家は「人間の本質」を描くのが仕事と聞いたことがあります。
鋭い観察眼がないと、内面や行動の意味などを描きだせません。

自分が経験したことを、深く深く掘り下げていくことで、みんなに通じる真理が見つかるのかなあと想像しました。

著書情報
発行所   集英社文庫
発行年月日 2016年2月25日
値段    800円(税別)

皆様の心にのこる一言・学びがあれば幸いです

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