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読書紹介47「仮面病棟」

あらすじ

強盗犯により密室と化す病院。息詰まる心理戦の幕が開く!
療養型病院に強盗犯が籠城し、自らが襲った女の治療を要求した。事件に巻き込まれた外科医・速水秀悟は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知る・・・。閉ざされた病院で繰り広げられる究極の心理戦。そして、迎える衝撃の結末とは。現役医師が描く、一気読み必至の<本格ミステリー×医療サスペンス>。著者初の文庫書下ろし!

感想など

・「強盗犯」であるピエロが登場してから、警察が突入するまで10時間もたっていなにのに、立て続けに事件が起き、病院の謎(闇)が暴かれ、そして、病院内にいたメンバーがどうなったのか、最後の最後まで分からないスリリングな展開であっという間に読んでしまいました。

・ピエロが病院内に立てこもり、妨害電波を出すことで、スマートフォンもつながらず、病院が密室と化しました。

そう、推理小説でよくある「クローズド・サークル」状態です。

そして、病室にいる患者を除けば、病院内にはピエロを含めて6人しか登場人物はいません。
はじめは、ピエロと病院メンバーとの駆け引き、心理戦です。

ただ、途中から、ピエロの本当の目的は何か?を考えることがカギとなり、だんだんと病院に隠された謎(闇)を解き明かすことに、考えが集中していきます。

また、最後の警察介入までに、殺人事件も起き、誰が何のために?という謎も深まり、次のページをめくる手が止まりませんでした。

そういう意味では、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」を想起させました。
また、病院内に「隠しエレベーター」があり、施設に何らかのからくり、秘密の場所があるところは綾辻行人さんの「館シリーズ」の話も思い出される内容でした。

タイトルにある「仮面」も意味深です。
ピエロの仮面もあれば、病院の闇(謎)もある。登場人物のそれぞれの「秘密」を隠す「仮面」とも捉えられます。

最後のどんでん返しも含めて、事件の全貌を解き明かす楽しさと同時に、現役医師である知念さんがところどころに挿入する医療エピソードや医学的な知識、蘊蓄も読みどころの一つです。

次のような言葉も印象に残りました

・意識の無い患者に胃ろうや経鼻チューブ、中心静脈への点滴で強引に栄養を与え、腎不全患者には透析を繰り返し、ちょっとでも熱が出れば抗生剤を大量に投与する。そんなのが患者のための医療だと思うのか。けれど、いまの日本ではそんな強引な延命措置が普通に行われている。

・嘘ではないが完全な真実でもない説明。下手にごまかすよりは真実味があった。

著書情報
「仮面病棟」 知念実希人
発行所   実業之日本社
発行年月日 2014年12月15日

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