190201_前田高志さん取材_

スター型のオンラインサロンじゃない「それがいいんや」_デザイナー/漫画家・前田高志の惰性を破る柔軟な生き方②

任天堂から独立して2年後の2018年に設立したオンラインサロン「前田デザイン室」。当初20人だったメンバーは現在150人にまで増えた。集まったメンバーは意欲と行動力に溢れ、サロン内はアイデアとプロジェクトの激流が流れている。「みんな異常」だという前田さん。そんな前田デザイン室への思いを伺った。

前の記事「『視覚の気持ち良さに取り憑かれた男』_デザイナー/漫画家・前田高志の惰性を破る柔軟な生き方①」を読む


前田デザイン室は “フィルター”

――箕輪編集室でクリエイティブ体力が復活してマンネリを打破できたというお話がありましたが、高いモチベーションは今も持続していますか?それとも、ときに落ち込んだりもするんでしょうか。

前田さん:マンネリ感というか、落ち込みそうなときはたまにあります。今はデザイナーから漫画家に転身したんですが、それもある意味「あ、いいタイミングやな」って思って、意図的に環境を変えたっていうことです。

今は箕輪編集室のときのデザインチームリーダーもできるし、前田デザイン室も始まった。状況が毎日変わっています。いろいろ起こりますからね。前田デザイン室で「こんなことやろう」とか、急に誰かが思いついて「これできる」とか。

前田デザイン室は常に僕のモチベーションを上げてマンネリを打破してくれる、そういう役割もしてくれていると思います。もちろんメンバーのみんなからもすごく刺激を受けるし、そういう関わりでマンネリ感を打破できてるんですよね。常に新しい人が入って来て、すごいおもしろい人がいっぱいいます。

前田デザイン室って、“フィルター” だと思うんですよ。ツイッターとか『マエボン』とかいろいろ発信してますけど、あれ見て入ってくる人って、やっぱりね、おもしろいですよ。どこか。だって変でしょ(笑)。おもしろい人しか入ってこない “フィルター” ですよ。

だからね、僕なるべく新しく入った人とか、全然話したことないメンバーとか、いろんな人と話したいなと思うんですよね。だって、あぁいうことやってるところに5,500円払って飛び込んでくるって、みんなやっぱり、異常でおもしろいと思うんすよ(笑)。

――みんな異常(笑)。

前田さん:みんな異常。ツイッターの会話とか見てたら思うんですよ。「みんななにしてんの?」みたいな(笑)。本当にね、仕事とは全然違うところでのびのびやってる。

だからおもしろいことができるんですよね。「君たちなにやってんの?」っていうのは、いい意味でね。褒め言葉ですよ。「君たちなにやってんの?(笑)」って。

――「仕事とは違う場所」というのは前田デザイン室然り、オンラインサロンを語るうえで重要なキーワードだと思います。『マエボン』のインタビューで佐渡島さんが「前田デザイン室とやるときは『おもしろいかどうか』だけをベースにできる」と言われていました。そういうノリの軽さがあるんだと思います。

前田さん:あぁ僕、任天堂時代によく他の部署の人に言われてたんです。「ノリの軽さとフットワークの軽さがある」って。なんか勝手につくってやっちゃうみたいな。

たぶんそういうところやと思うんです。前田デザイン室には、そういう人が集まってきてるんですよね。ほとんどの人がそうです。いや、たぶん全員。おもしろいことが好きな人しか入らないと思いますよ。


勢いで進む前田さんと、フォローする浜田 綾さんの絶妙なバランス

――前田さんは任天堂時代から、箕輪編集室を経て今に至っても、マネージャーやリーダーなど、チームを纏める立場を経験されていますが、コミュニティデザインにはどんな工夫をされてますか?

前田さん:うーん、僕がコミュニティづくりにおいて長けてることって、たぶん “旗立て” が一番うまいのかなと思ってて。「こういう企画やろう」とか「こんなものをつくろう」とか。そうやってメンバーに気持ちを高揚させてもらうとか、そういうところには気を配ってます。

でも前田デザイン室でいえば、全体の運営を見てくれてるのは浜田 綾さんで、僕が「行くぞ行くぞ」とガンガン進めようとすると、浜田さんはそれをフォローしてくれるんです。

ストレングスファインダー(自分の強みを見つけ出す才能診断ツール)ってあるじゃないですか。その結果を見ると、僕の上位と下位と、浜田さんの上位と下位がちょうど入れ替わった形になってるんですよ。才能が真逆みたいな。

だから僕がガンガンやってたら「いや、こう思ってる人もいるので、こうしたほうがいいですよ」って教えてくれる。「今はこういうことをnoteに書いてくださいね」とか。そんなふうにフォローしてくれるからバランスが取れてるんだと思いますね。

――浜田 綾さんの存在が大きいんですね。ちなみに前田さんのストレングスファインダーの上位ってなんですか?

前田さん:えっと、僕は1位から順に「着想」「戦略性」「達成欲」「最上思考」「親密性」「目標思考」「共感性」......と、まぁ企画系ですよね。それでいて、「親密性」が含まれてるように、たしかに人との距離感はあんまり感じない。

浜田さんは僕と逆で慎重さがある。人をよく見てるんですよね彼女は。「人がどう感じてるか」とか。僕が勢いよく動いてるなか、どこかで置いてきぼりになってる人をフォローしてくれたり。人の感情に自分の気持ちを寄せたコミュニケーションが上手なんですよね。

だから僕も浜田さんの影響受けてから、「いま全体の空気がこうだから、こう発言しよう」となるべく考えるように変わってきましたね。僕もともとそんなに細かく人の気持ちを察したりできないので。

なので、憤慨したり怒ったりするっていうのはまったくないんですけど、なんでも正直に言っちゃうタイプです。ぽろっと言っちゃう。疑問に思ったことも「そうかな?」ってすぐに言っちゃう。逆にいえば、そのとき思ったことしか言わない。

自分のなかで悶々と抱え込むこともまったくない。その場で言います。「そうかな?」とか、「ちょっとこの言い方、なくない?」とか。

でも僕、言葉足らずなので、傷つけちゃった人もいるんかなーとは思いますけどね(笑)。まぁいるでしょう。でも思ったことしか言わないっていうのは貫いてるので。

――前田さんは控えめな雰囲気がありますけど、意外とはっきりいうタイプなんですね。キングコング西野さんとか堀江さんみたいな。

前田さん:あー、そうですね。あそこまで我は強くないですけどね。堀江さんとかめっちゃキレたりするじゃないですか(笑)。僕の場合は「ちょっと誤解させる言い方かもしれないけど、それでも言っておこう」って相手の気持ちもちょっとわかりつつです。


「ちょっとだけ大事にされたい」

――言いたいことを抱え込むことはまったくないという前田さんですが、ものすごく落ち込むこととか、苦悶して悩むのはたとえばどんなときなんですか?

前田さん:落ち込むっていうかね、ちょっとだけ大事にされたいんですよ(笑)。

たとえば、任天堂に勤めていたときの話です。あるとき会議があって、僕はその前に来客と打ち合わせしてたんです。それで打ち合わせが終わったので急いで行ったら、もうその会議は終わってたの。聞くと、会議の時間が予定より早まったそうなんですよ。

打ち合わせがあったとはいえ、僕はその会議の時間が変わったことを全然知らされてなくて。「ちょっとそれ教えてよ」みたいな。「あ、おれがいなくても進む会議だったんだ」って思っちゃうわけですよ。「なんだぁ」って。

そうやって、ちょっと自分の存在が、ぞんざいに扱われたときって悲しいじゃないですか。悪気がないのはわかってるんですよ。でもそういうときってめっちゃ悲しくなるんです。これ僕だけじゃなくて、多くの人もそうやと思うんです。僕もちょっとだけね、人から大事に優しくされたいみたいなのがあるんです。

――それすごくわかります。自分だけピンってはねられたって感じたらものすごく寂しくなります。でも意外と寂しがりやな一面があるんですね。

前田さん:そうなんです。もう1つ挙げると、前田デザイン室のFacebookページに「飲み会スレ」っていうスレッドがあって、みんながお互いに「飲みに行きましょう」「ご飯行きましょう」って好きなときに呼びかけられるんです。

そこに僕も書いたんです。「今日、大阪でだれかご飯いきませんかー」って。そしたら「いいね」すらつかなかった(笑)。そういうときに、「あぁ...」って寂しくなる(笑)。コメントもない。そしたら今度はツイッターで「だれかいきませんか〜」って(笑)。

――また別の場所にシフトして(笑)。

前田さん:そうですそうです。「だれもこない...」って思ってます(笑)。前田デザイン室には、Zoomアトリエっていうオンラインスペースがあるんですけど、みんなの作業場みたいになってるんです。

チャットしてもいいし、喋ってもいいし、ただ集まって顔見ながら仕事するみたいなスペースがあるんですけど。僕がそこに入って、「孤独死する...誰か来て...」とか言ったら誰か来てくれるんですよ(笑)。


スター型のオンラインサロンじゃない

前田さん:そんなもんですよ。前田デザイン室そうなんですよ。前田デザイン室は、僕のことが好きな人たちの集まりじゃないんですよ。

――切実にお願いしたときにやっとみたいな(笑)。

前田さん:そう、切実に(笑)。そんな感じですよ。だけどそれがいいんやと思いますよ。逆に僕が教祖様みたいな感じやったら、前田デザイン室じゃないと思う。「前田」ってついてますけど、前田デザイン室はスター型のオンラインサロンじゃないので。西野さんみたいなのではないですね。

――なるほど。深いですね。

「ハッピーループ」とかって言ったりするんですけど、ひとつのアクションが自分と他人と前田デザイン室、はたまた外部の人、全部が幸せになるようなアクションがしたいなと思ってるんですよ。

だからこれ(今回の取材のFacebook LIVE配信)も、今日は取材してもらってるけど、これ見てなにか気づきを得る人がひょっとしたらいるかもしれないとか。こういうふうに取材するんだって思う人もいるし、新しく入った金藤さんのことを知ってもらえたりもするし、ここでまた話しかけやすくなるじゃないですか。そうやっていろんないいところがあって。

またこの記事を見て「あのときの取材がnoteになったらこういうふうに記事化されるんだ」とか、知りたい人もいるかもしれへんし。

――本当にありがたい限りです。文章下手だなとか、上げるの遅いなとかもあるかもしれないですけど(笑)。

前田さん:金藤さんはそのプレッシャーでまたちょっといいものをつくれるようになるかもしれへんし。

――たしかにそうですね。お尻叩かれる思いでがんばります。


(前田高志さんインタビュー連載第3回「『世界に “永遠の童心” を打ち出す』その過程を楽しんでる_デザイナー/漫画家・前田高志の惰性を破る柔軟な生き方③」に続きます)

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【掲載広告募集のお知らせ!】

【急募】世界初ナス形の本「NASU本」広告主を募集します。

元・任天堂デザイナー前田高志率いるオンラインサロン「前田デザイン室」からの出版第2弾。『NASU 前田高志のデザイン』に掲載する広告主様を3枠募集します。(2019年3月31日まで)各枠 150,000円 先着順。「告知したいことがある!」「宣伝したい!」というかたはお早めにどうぞ。

※広告枠は巻末に掲載いたします。
※広告の作成に加え、完成品の「NASU本」1冊をご指定の場所に配送いたします。

●おことわり● NASU本のテイストに合わせ、前田デザイン室側で広告ページを作成させていただきます。製作日程の都合上、ヒアリング後のデザインに関する細かな修正にはお応えできかねますことをご了承ください。

(下記 書籍情報)

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【書籍発刊のお知らせ!】

世界初ナス形の本を作りたい!デザイナー前田高志のアートブックを500部限定で制作

『NASU本 前田高志のデザイン』前田高志監修、5,800円、前田デザイン室(発行)、日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社(印刷)

前田の「ものづくり」のこだわりがすべて詰まった「クリエイターの指南書」。アートブックであり、ビジネスマンが仕事で使えるデザイン思考を収録した実用書パートも兼ねております。

クリエイターのための本書はタイトルのネーミングにちなみ、前代未聞の “ ナス(茄子) ” をかたどった書籍として発刊。

印刷には、日本写真印刷コミュニケーションズ株式会社の高品質カラーデジタル印刷システム「NDP(Nissha Digital Printing)」による、高彩度・高精細な印刷技術を採用しており、“ 全ページフルカラー ” にてお届けいたします。

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前田デザイン室トークイベント「えっ!? 元任天堂デザイナーが漫画家に?〜41歳でたどりついた後悔しない生き方〜」 - 梅田 蔦屋書店

15年にわたって宣伝広告デザイナーをつとめた任天堂から独立し、株式会社NASUの代表としてデザイナーとして活躍の場を広げる前田高志が、2019年、41歳にして漫画家に転身。夢に向かって突き進む前田さんが持つワークスタイルを存分に語るトークイベントです!ぜひ、足をお運びください!

日時:3月21日(木) 14:00~16:00(開場13:30)

場所:梅田 蔦屋書店

〒530-8558 大阪府大阪市北区梅田3丁目1−3


ライター:金藤 良秀


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