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SS【予祝】#シロクマ文芸部

お題「最後の日」で始まる物語

【予祝】(777文字) ←ラッキーセブンです♡ うぇーい٩(๑•ㅂ•)۶


「最後の日と最初の日が同じって、どれくらいの確率なの?」
 私はびっくりして友人に訊ねた。
 友人の一族は、一人残らず命日が誕生日なのだと言う。からかわれているのかと疑ったが本当らしい。

「さぁ、確率はわかんないけど滅多にないんじゃないかな。しかも一族全員だもの」
 友人は空を見上げながら気楽な感じで答える。
 冬の空は真っ青に澄み切って、いかにも元旦の朝らしい。
「だからあたしもね、死ぬのは今日みたいに晴れた元旦の朝がいいなって」

 友人の誕生日は元旦なのだ。
「社長サンの誕生日って元旦が多いって聞いたよ」
 私はなんとなくちょっと話を逸らしたくなって、そんなことを言った。友人はフフッと笑って私の方を見る。背後から太陽に照らされて後光が射しているみたい。
「あたしは社長なんて器じゃないもん。御猪口みたいに小さくこじんまり生きるの」
 おちょこか。彼女らしいな。こういうところが好きで仲良くなった。

「じゃ、初詣では何をお願いするの?」
 私たちは彼女の家の近所の小さな神社に初詣に行く途中なのだ。
「とりあえず一年間生き延びることができました、って感謝かな」
「そうか…。毎年元旦さえクリアすれば、また一年無事なわけね」
「そうよ。今日をクリアしたらまた一年。だから『予祝』ってことで家でお祝いしようよ。ケーキ買ってあるし」

 私たちは誰もいない小さな神社でパンパンと柏手を打ち、それぞれ心の中で神さまに御礼を述べた。
 (友人と出会わせてくださって、ありがとうございます…)
 それからおみくじを引いたら、二人とも『小吉』だった。

「ちっちゃいねぇ。やっぱり社長はないわー」
「これくらいがちょうどいいのよ」
「おちょこだもんね」
「そうそう。こじんまりと長生きするのよ」
「また一年よろしくね」
「うん、こちらこそ」

 私たちは、小さな子どもみたいな晴れやかな気持ちで笑い合った。
 いま二人が生きていることを祝って。


おわり

(2023/12/30 作) 

小牧幸助さんの『シロクマ文芸部』イベントに参加させていただきました☆

元旦に公開したい内容だったんですけど、締め切りが大晦日だから…
(;・∀・) ここだけ時空がゆがんでますがお気になさらず…。

というわけで、これも『予祝』(先に祝っちゃうコト)です!
あけましておめでとうございます☆
 ٩(๑•ㅂ•)۶
うぇーい

2024年もこんな感じでマイペースかと思いますが…
どうぞよろしくお願いいたします~<(_ _)>


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