ねこペティREMIX#5「アスパラガス」 (エッセイ「栄光の子役時代」)
「アスパラガス」
(Asparagus)
みどりのくきの
ろうそくに
ごっそりついた
ほのおたち
あたしけっこう
いいとしだけど
おたんじょうびの
いわいなら
ちょっとつけすぎ
なんじゃない
今回登場したねこ:シャム
家猫12歳メス。お屋敷で大事に育てられたきれい好きのお嬢様。
じつのところはかなりおてんば。
「栄光の子役時代」
あまり見覚えのない、ほわほわした緑のカスミソウのような姿。
畑の脇に生えた草の正体がアスパラガスの成長したものだと知ったのは大学生の頃のことだ。
野菜として脚光を浴びた子役時代の面影は消え、地味な一般草としてやたらたくましく繁殖していたアスパラガス。
雑草として抜いてしまうのがなんだか忍びなかったのを覚えている。
ドイツ人の好物白アスパラは、日の当たらない特別環境で純粋培養された子役エリートで、彼らにはうっかり収穫し忘れて巨大化繁茂するような未来はない。
無垢で繊細、やわやわなのに「シュパーゲル(Spargel)」なんて切り込み隊長みたいなかっこいい名前で呼ばれているのも、なんだかドイツらしい。
小学校の卒業アルバムに写る僕の目の輝きが、今とは全く違うのでショックを受けたと妻に言われたことがある。
たしかに、今では信じられないけれど何でもやってみたい子供だった。
同一人物のはずだから、もちろん記憶はあるものの、その根っこにあったはずの意欲や好日性の感触だけが他人事のように遠くにある。
思春期でたくさん転び、その部分だけどこかに落としてきたらしい。
高校の頃知り合った友人と、久しぶりに話をした。
最後に彼女がこういった。
「亮さん全然変わっとらんわ。からんとしたところが」
「からんと……って何??」
「いや、だってなんや……からんとしとったやん」
変わってないと言われるのは嬉しかったけど、「からん」の正体は結局分かずじまいだった。
後日近しい人にそのことを話したら
「なんだか分かる気がします」
といわれたので、もしかしたらピンときていないのは僕だけなのかもしれない。
からんとしている作家です。
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