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ジャズのセッションでピアノの上達を実感できた理由

先日、ジャズのセッションに参加した際、周りの人から「ピアノが上達しましたね」と褒められて嬉しかったです。実はここ3ヶ月、あまりピアノの練習ができなかったのですが、DTMを含めて要因に思い当たる事もあり、ひとつ殻を破れた気がしたので、試行錯誤の結果をまとめてみました。

覚えたフレーズの再現をやめてみた

自分は譜面が読めないため、ジャズのフレーズ集といったものを暗譜して弾き込むのが苦手です。楽譜が読めない代わりに、Wynton Kellyの「枯葉」Red Garland Trioの「C Jam Blues」等の演奏をトランスクライブし、イヤホンで聴きながら弾く練習をしていました。以前にも書いた通り、耳があまりよくないので、1日に数小節をトランスクライブできるかどうかのスローペースですが、時間を忘れて没頭できるので楽しくて勉強になります。

そのようにして覚えたフレーズを、コーラスまるごとセッションで再現してみたくなるし、ある時期はアドリブの合間によく入れていましたが、思うことがあってやめました。

その理由は「覚えたフレーズをセッションで再現しよう」と考えながら弾くと、家で音源に合わせて練習したことの再現になり、セッションでアンサンブルしているメリットを実感できなくなったためです。また、ソロの自己評価が「再現できたか再現できないか」になってしまったためです。

そして「100%再現できた」とは「Wynton Kellyと同じ演奏ができた」という意味であり、当然ながらセッションでどんなにがんばっても「Wynton Kellyにはなれなかった」となります。

なにより自分の場合は、ミスタッチや焦りが原因でリズムが崩れました。軌道修正できれば良いのですが、数小節がんばって難しければ、諦めてアドリブにスイッチしました。が、「ミスった」という気持ちが先行するので、つなぎが不自然になりますし、なによりジャズ・ジャイアントが奏でるフレーズと、自分の即興メロディには天と地の差があるので、つながりが悪く、おまけに高確率でロストしました。

フレーズ練習やトランスクライブは練習でだけやるようにした

覚えたフレーズを再現しようとした際、自分が「弾けた」と満足する事が、セッションでの達成実感になっていたので良くないなと感じました。そのセッション全体のアンサンブルにWynton Kellyの模倣が合っていたのかどうかと言うと、うまく再現できた場合でも、ベースやドラムの人と一体感を得られたことはありませんでした。

もちろん手に馴染むまで、フレーズ集やトランスクライブした演奏を弾き込むことは大事だと思います。手に馴染むまで続けると、いつかオリジナルになると思います。自分もWynton KellyやRed Garlandのフレーズをアレンジして使っていますし、今でも日々のピアノ練習のルーチンに、Wynton KellyやRed Garlandのトランスクライブを入れています。

個人的には、練習で大事な事と、セッションで大事なことが違うような気がしています。セッションでは覚えたことを再現する個人プレーではなく、他のプレイヤーとアンサンブルすることを重視するようにしたら、セッションが楽しくなりました。

なによりリズムがズレてセッションのグルーブを損なったり、「再現に失敗した、やらなきゃよかった!」と後悔する事が大幅に減ったのは良かったです。

まったく 別の音楽をやってみる

しばらくの間、DAWでJ-POPの曲を作ってコンペに出すみたいな作家事務所のグループに参加していました。クオリティの高い楽曲をパッケージし、商品として世に出してヒットさせる事が目的なので、メロディメイキングや音選び、ミックス手法といった音源クオリティの追求がシビアな環境でした。

とてもハードな環境でしたが、DAWの技術は短期間で、ものすごく伸びました。特にメロディメイキングからボーカルエディット、生ドラム系音源やストリングス音源の入れ方、仮歌のリズム/ピッチ補正などは、これまでのLo-Fi系の楽曲制作ではやってこなかったので、強制的に体験する事で、心理的なハードルがなくなりました。

仮々歌もボーカロイドやsynthesizerを使っていたので、気づいたら、ボカロ系の歌ものをフルコーラスで構成できるようになっていました。ボーカルやストリングスなどは、Lo-Fiやジャズなどミニマム構成なジャンルだと触れる機会が少ないので、かなり勉強になりました。

ただ、J-POPだと「みんなが楽しめて一体感をもてる象徴的な楽曲」である必要性があるので、テンションやアドリブやレイドバックなど、ジャズっぽい可変的な要素は不要でした。むしろ、リズムとコードとメロディはストレートである必要があったので、そういう点でもJ-POPはすごくシビアなジャンルだと感じました。ここら辺はまだ自分の中で消化しきれていないので、機会を見つけてまとめてみたいとおもいます。

また、DTMの制作経験における演奏の副次的効果は、別の記事でまとめています。

そういった環境にいた後に、ジャズのセッションに行くと「その場のアンサンブルに対して自由に即興演奏を奏でる開放感」と「メロディやコードやリズムに対してストレートに正確になる」のメリハリを自分の中で感じられ、よりセッションを楽しく、かつアンサンブルやリズムに注意を向けながら参加することができました。

回り道はためになる

おそらく、ジャズを練習し習得していく際に

・フレーズを覚えて再現する
・自分より上手な人とたくさんセッションする

ことが最短ルートで合理的な方法だと思います。自分はそれとは真逆の方向のことをやっていました。しかし、無駄ではないと思ったし、一定の効果もありました。J-POPの環境で短時間にたくさんの曲を書くでもない限り、意図的にメロディメイキングはしていなかったと思います。メロディメイキングの経験が増えたことで、セッションでのソロでの音運びに情緒性やストーリー性を込められるようになってきた気がしました。

ジャズも好きだしピアノも好きだと再確認できた

今のやりかたにこだわる気はないので、またフレーズを覚えてセッションで再現したくなる時が来るかも知れませんし、全然違うジャンルの音楽に没入してみるかもしれません。

あらためて、ジャズが好きだし、ジャズピアノも好きだと実感できたので、いまセッションで感じる開放感や感情があふれる感じを大切にしたいと思います。

また、セッションで一緒にプレーする方々とのアンサンブルの一体感を大事にしたいと思いました。

テクニック的にはまだまだ駆け出しですが「一緒に演奏して楽しい、楽しそう」って思えるプレイをしたいと思い、記事にしてみました。


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