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インタビューゲーム50人報告会を終えて

 折り返しというのは、ほかに比べて印象に残りやすい。
 例えば、白紙を半分にしてできた折り目というのは、その紙面上に初めて生まれる節目であるし、フルマラソンの折り返し地点では「まだ半分もあるのか」と絶望的な気分になる。
 ただ、なんにせよ意識せざるを得ないものです。

「100人とインタビューゲームやったら人生が変わる」

 どこか絵空事じみていて、けれど奇妙な説得力のある言葉。
 おそらくそれを言われて真に受ける人は、なんというか非常に奇特な人間だと思います。
 ましてや、それを信じて「やってみよう」と思った人間が、たまたま同じ時期に2人現れるというのは珍しいことでしょう。

 僕ともう1人友人である廣安くんが、折り返しの50人との体験を終えて報告会を行いました。

 最初は「100人とやったらなんかイベントをやろう」と企んでいた。
 きっと、それが達成できた時には得たものは多く、伝えたいこともたくさん出てくるだろうと予想できたから。
 けれど、その予想は大きく外れました。

 半分の50人を終える前にはもう既に計り知れない経験値と変容が起こっていました。

「50人で公開インタビューゲームをやらないか?」

 気づけばどちらからともなく声をかけ、是非もないと企画が決まりました。この記事はその記録と僕の振り返りです。

当日の流れ

 柔らかな日差しと軽く汗ばむくらいの陽気に包まれた4/22の昼、ドタキャンとドタ参があり、結果的に9名の方がいらしてくださいました。

 参加者の中には既に100人以上とやっている方から、インタビューゲーム(以下IG)をやったことのない方、知己の人とまったく面識のない人といて、なかなかに属性も幅広かったです。

 定刻には参加者が全員が集まり、簡単に今日の流れや注意事項を話して始まりました。
 今回は主催は僕(本田)と廣安くん、そしてグラフィックレコードを脇田さんが参加してくださいました。

(↑脇田さんのわかりやすいIG解説)

 今回はIGをやったことのない人もいたので、ルールの説明から行い、ペアで10分間の簡易的なIGをした後、30秒で全体に対して相手の他己紹介を口頭で行いました。

 実はこれ、普通にIGをやるよりも難易度が高いのですが、難しさを体験してもらうには最適でした。

 今回の報告会の趣旨として、ただ話を聴いてもらうだけの会にはしたくないという想いが僕ら2人の共通認識でした。
 IGを重ねる中で、一方的なコミュニケーションのつまらなさを誰よりも感じてきたからこそ、なるべく相互に、同じ目線で意見交換がしたかったのです。

 そして、他己紹介を終えたら、これまでのIG体験や日常の中で感じる疑問などを付箋に書き出してもらいました。

 小休止を挟んだ上で、僕達の50人を終えるまでのプロセスや学んだことを簡単にお話しした上で、質問に答えたりしていきました。

 その後、2つのグループに分かれ、僕と廣安くんが各グループに入って対話を行いました。ここまでくると、日常生活にまで話が及んでいたと思います。
 最後に、各グループで話していたことを共有しておしまいです。

 2時間30分でしたが、かなり短く感じる時間でした。
 主催ということで、かなりエネルギーを使っていたようで、帰宅すると同時に床で寝っ転がっていました。

 それは僕達だけじゃなかったようで、翌日に参加者のうちの数人とたまたま会う機会があったのですが、「まだ昨日の疲れが残っている」と口にしていました。今まで使ったことのない筋肉使うと変な疲れが残ることってありますよね。

振り返り

 ここからはその場で感じたこと、後々になって気づいたこと、報告会では言い忘れていたことなどを書いていきます。

言わなきゃわからないのだけど、伝わらないとは限らなくて、伝えたいことが伝わるとも限らない。

 誰かの考えていることがわからなくて、「言ってくれなきゃわかんないよ!」と訴える。けれども、言わなきゃなにも伝わらないわけでもありません。

 講義中に寝ている学生を見て、なにも言わなかったとしても先生側に退屈さや眠たさは伝わっている。僕達は自分の身の振る舞いでも常に伝えているということでもあります。

 そして、自分が好きな素振りを見せているつもりでも、気になる相手は全然気づいてくれないことだってある。
 だから伝えたいことが伝わらないなんて珍しくもない。でも、それがコミュニケーションなんでしょう。

予定調和な会話なんてつまらない

「コミュニケーションにはズレが大事なんですよ」

 これは僕達にIGを教えてくれた寺子屋塾の井上淳之典さんが言っていた台詞です。
 全部わかってしまったら、相手と接触を図る必要なんてありません。
 例えば、次に何が起こるかわかっている物語ほどつまらないものはありません。それと同じで、次に相手がどんな反応をするか、なにを言うかわかっているのなら、わざわざ相手とコミュニケーションをとる必要なんてない。

 相手がブラックボックスだからこそ、なにが飛び出してくるかわからなくて、不安で、怖ろしくて、でも心のどこかでドキドキして、楽しみを見出すことができる。

 食い違うことに苛立ちを覚えるのではなく、そこに埋められる溝ができたことを喜ぶのです。それでまた話を続けられるから。

 まあ大層なことを言っていますが、正直僕だっていつもズレに喜びを感じられるほど人間できていませんけどね。 

なぜか自分のことに意識が向く

 終わった後に感想を書いてもらったら、自分のことばかり書かれていました。僕達の話についてのコメントはほとんどありませんでした。

 僕達の経験を話した報告会なのに、参加した本人についての問いや課題に意識が向いていく。それは意図したことでもありましたので、嬉しい傾向でした。
 誰かの話を聞いて「凄い!」と思うことは簡単だけれど、それは所詮他人のものに過ぎません。

 そんな話をありがたがるよりも、僕達の話を鏡として、自分自身のことを考える機会にしたかったのです。

 IGは僕が知る限り、その最高のツールだと思っています。
 意図しようがしまいが、回数を重ねるだけで否応なく変化していくのです。

 これだけ素晴らしいものを多くの人が知り、体験を重ねてそれぞれが変容を続けて行くことで、社会はよりよくなって行くと僕は信じています。

「私はあなたのことを大切に思っています」をどう伝えるか?

 人と親密になるということを考えた時に、一番簡単なのは共感できる人と一緒にいることがまず思いつきます。
 しかし、一方で世の中には性格も趣味趣向も違うけど気が合う人というのがいる。

 それを踏まえてみると、親密であるとは「相互に大切だと伝え、受け取りあっていること」ではないかと僕は思っています。共感できる人とはそれが行いやすい。

 伝えているだけでも受け取っているだけでも不十分です。相互にやりとりして初めて成立します。
 とはいえ、自分が大切に思っていることを伝える必要があります。それを考えた時に、じゃあどういうことが大事なのかというと、「あなたのことを大事に思っているよ」を伝えることだと思います。

 ただ、言葉だけではなんとでも言えます。
 必ずしも相手が受け取ってくれるとは限りません。だから、相手がなるべく受け取りたくなるように、配慮をする必要があると思っていて、そこが先に聴く姿勢とか振る舞いなどの細部に表れてくるのだと思います。

自分達がやるだけの段階はもう終わった

 今回の報告会を終えて強く感じたのは、もうただのプレイヤーではいられないということです。

 ありがたいことに僕らの話に興味を持ってくれる人がいて、またIGをやりたい人が少しずつではありますが、増えています。しかし、まだそれを体験できる場は少ないのが現状です。

 曲がりなりにも回数を重ねてきた者として、その状況を見過ごしたまま自分だけが淡々と進んでいくことはできません。場を設け、やりたい人同士を繋げる段階に入っているのかもしれません。

 これまで内々に、あるいはお仕事として機会をいただくことはありましたが、自分の意志で積極的に開くことはしてきませんでした。これからはそれをしていきます。
 どれくらいの頻度になるかは予定と相談しながらになりますが、その意志表明をして、自らを行動へと駆り立てておきます。

1人1人に感謝を

 この報告会をさせていただいて、改めて僕とIGをやってくれた50余名の方に感謝を懐きました。最後にここで感謝を述べておこうと思います。

 どうあっても僕は1人ではここまで来ることはできませんでした。

 50人の中には今も頻繁に顔をあわせる人もいれば、1度しか話したことのない人もいます。けれども、たとえ一瞬でも交われたことは僕にとって間違いなく糧となっています。

 あなたがいたから今の僕がある。僕が僕を認められるのはあなたのおかげです。

 そして伴走者として隣を走り続けてくれる廣安くん。
 100人とのIGなんて1人では絶対できなかったと思います。きっと、どこかでくじけていて、「もういいや」と投げ出していたに違いありません。
 1日が終わり、粛々と2人でラーメンを食べていた時に何気なく口にした「廣安くんがいなかったら50人もできなかったと思う。ありがとう」があの日僕が発した言葉の中で、最も心のこもっていた台詞だったかもしれません。
 またよろしく。

 次は、100人とIGを終えたらイベントをやります。
 その際は是非お越しくださいね。



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