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12月12日

 アール・ブリュット展の受付をしているあいだ、あまり人が来ないときは他作業をしてもかまいませんと言われていたので、昨日今日と黙々と本を読んでいた。今日読み終えたのは、呉明益の『複眼人』。台湾を舞台に、世界を取り巻く環境問題、ファンタジー、SF、ヒューマンドラマが織り交ぜられた長編小説である。

 近年、劉慈欣の『三体』、ケン・リュウの『紙の動物園』など、中華圏のSFシーンがとても盛り上がっていて、『複眼人』もSNSを中心に一部では話題になったため、読むまえからある程度は期待していた。そしてその期待を裏切らない読み応えのある小説だった。

 読みながらわたしは、五十嵐大介の『海獣の子供』を思い返していた。この世界についてわたしたち人間が知っていることなんてほんのわずかである。これらの物語に書かれている出来事がファンタジーとは言い切れない。

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