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ガキの頃を振り返って。今応援してやりたい同じ母子家庭育ちの後輩の話。

※一番下に2021年2月12日に追記

昔歌舞伎町のBARで馬鹿面を下げて働いていた街の後輩が、母子家庭に無料で弁当を届ける仕事をしているらしい。

仕事というかボランティアみたいな括りになるのか。

そいつは大して金持ってる訳でもないし、どうして無料で弁当なんかを宅配が出来るのかというと、不特定多数の人から支援金をもらって、それを原資にして弁当を配っているとのこと。

俺は先入観もあるのだろうが、クラウドファンディングをやってるガキがかなり嫌いで、てめえの夢物語を壮大に膨らませたような作り話で他人様から金集めしやがってという気持ちが常々あった。

勿論まともなプロジェクトだってたくさんあるだろうけど、俺みたいな人間の耳に入るのはそういう人の善意をターゲットにした詐欺まがいの話ばかり。

クラウドファンディングでの資金調達率を餌に、有望なプロジェクトだと吹聴してクローズドの場で投資話風の勧誘で億単位を集めて飛んだS.Tや、普通にアリババで仕入れられる商品をいかにも発明した風に見せかけて8000万荒稼ぎしてぶっ飛ばされて身ぐるみ剥がされたR.Y、他にも色々いた。

どうにも切り取りなんかの仕事もしていると、人間の嫌な部分ばかりが先行して見えてしまうことが多い。

性善説と性悪説の話ではないが、この相談を件の後輩にされた時も「お前どうせそれで半分くらいは抜くんだろ?」と言ってしまった。

ユニセフだって募金の全てが恵まれない子供やらに行く訳ではないのと同じで、こいつもついに人の善意をマネタイズするようになっちまったのか。街に染まっちまったんだな。そう思ったからだ。

母子家庭なんかは日本にいくらでもある。

俺もその一人で、戸山団地のボロ部屋で母ちゃんと暮らしていたが、同じ学区には似たようなガキもたくさんいたし、特にそのことで自分が寂しい思いをしたとも思っていない。

父親がいるやつには負けねえと思っていたし、負けたらなんだか母ちゃんのせいになったような気がするだろ?

それも今の俺を作る原動力になっていた気がする。

だから苦労話をしたい訳でも全くなくて、そんな昔のことを振り返ってお涙頂戴をするつもりもねえ。

今日俺がしたいのはガキの精神衛生と食い物の話。

母ちゃんは保険の外交員。

今になって思うと手取り15万とかそこらだろう。団地の家賃と俺の生活費を払いながら、どうやって誕生日にスーパーファミコンを買ってくれたのか、今になると不思議に思う。借金もあったからな。

鍵っ子なんて言われたらそれまでだが、隣近所もそんなガキがたくさんいたし、そもそも薄っすらとした記憶の中では、あの団地鍵かかってなかったんじゃねえかなと思う。

家に帰っても当然母ちゃんはいねえし、公園に行っても近所の子供は夕暮れの鐘がなると帰っちまう。

そんな時でも一つ下の階の友達の家に行けば飯も出てきたし、母ちゃんが帰ってくるまで一緒に遊んでいられた。

迎えに来る時の母ちゃんは、やけにペコペコと頭を下げていて、ガキの時分の俺は、どうして友達の家に来ていただけなのにそんなに申し訳なさそうにするものなのかと思っていたものだが、今になれば当然わかる。

自分がひとり親のせいで、同じ団地の人に俺みたいな馬鹿ガキの面倒を無料で見てもらっていた訳だから、すいません、ありがとうございます、ってそんな気持ちになるよな。

俺は考えた。

もしも母ちゃんがいない時にお弁当があったら、何かが変わっていたかどうか。

母子家庭ってのは、基本的には母ちゃんも自分が家を空けることで子供が困らないように、冷蔵庫か机の上に飯を置いて出かける訳で、基本的には困らない。寂しいって時間が人より少しばかりあるくらいだろう。

だが母ちゃんも人間な訳で、当然うっかり何かを忘れることもある。

振替休日で学校が休みなのを忘れて仕事に行っちまった日なんかは、給食で俺が昼飯を食うと思っている訳だから当然家に飯がないとか、具合が悪くて早めに学校をふけた日に飯がないとかそういうのは結構あったと思う。

そんな日に夜が遅くなると最悪で、コーンフレークの残りでもあればいいが何もないと腹が減ってたまらなくなる。同じ団地の子の部屋の電気が付いていなかった夜に初めて万引きをした記憶がある。

警備が手薄なスーパーだったこともあって、開封前のビックリマンを箱ごと盗んだこともよく覚えている。

話が脱線するが、キラキラのシールがどの位置に配置されているかの検証をしたくて、この箱ごと窃盗はその後何度も繰り返すこととなるが最終的に見つかって母ちゃんがお金を返していたのをよく覚えている。

そういう時代だったのか母ちゃんがすごく謝ってくれたからなのか、過去の分まで多めに返してくれたからなのか、警察へのご厄介になることはなかった。

統計的にはキラキラは右側の真ん中に固まっているという結果になった。

そう考えると母ちゃんってのはやっぱり偉大で、どんなに疲れていても飯を作ってくれるもんな。ビンタはされたが俺史上最後となったそのビックリマンダッシュで捕まった日も甘口のカレーを作ってくれたのを覚えている。

弁当があったらの話に戻るが、俺みたいなひねくれたガキでも母ちゃんがいない日や遅い日に誰かが届けてくれたら嬉しかったのか。寂しさが紛れたのか。それはもう今となってはわからないってのが正直なところ。

一人ではなくて誰かと食うから食事が美味しいのであって、それが知らないあんちゃんのお弁当だったらどうだろう。

後輩に聞くと、支援者からのメッセージの手紙が弁当に貼ってあるのだと言う。

なんだろうな。

やっぱり母子家庭のガキには母子家庭のガキなりのプライドみたいなもんがあって、近所のババアとかに「お父さんがいなくて大変ね」とか「つらいと思うけど頑張ってね」とか言われるとムカつくんだよな。

どんな気持ちでその言葉にイライラしていたのだろう。

見下されているように感じた?母ちゃんが悪者にされたような気がして?

これだっていうのはないがガキはガキなりに複雑な心境になっているもので、俺はそんな時は「うるせえババア」と悪態をつくのが定番だった。

そうするとババアは「かわいくないこどもだよ」みたいに言って来るもんだから、当然こっちも「殺すぞババア」となる。

そういうストレスを感じている子供が初めてマイナスドライバーを原付の鍵穴に差し込んだ時の解放感は物凄くて、少年たちは皆、行き先もわからぬまま暗い夜の帳の中へ走り出すことになるんだよな。

だから俺は後輩に聞いた。

「そのメッセージカード?それもらったガキ喜んでるのかよ?」

すると嬉しそうな顔でiphoneのカメラロールを見せて来た。

まだ拙い文字でお兄さんありがとうというような子供たちからのたくさんの手紙を見せられた。

『これって毎日弁当欲しい親が、子供に無理矢理書かせてるんじゃねえの?』

俺は喉からそんな言葉が出かかったが、ゆっくりとそれを飲み込んだんだ。

どうやらこの街に染まってすっかり汚れちまっているのはこの俺の心の方であって、この後輩や手紙を書いた子供たち、それにシングルのママたち、善意で支援したスポンサーたち。

みんながみんな綺麗な心で、それでこのプロジェクトが回っているのかもしれない。

何でもかんでも斜めに見て、人の汚い部分を探り出そうとして、まず疑ってかかることから始めてしまうこの俺。

俺が一番薄汚れた職安通り沿いのドブネズミみてえなもんなんだろうな。

そんな自己嫌悪の気持ちから今この記事を書いている。

もしかしたら俺だって、小さな頃はお腹がすいている時にお弁当をもらえたら素直な気持ちでありがとうお兄ちゃんって言えたのかもしれない。

ズケ取ろうとしやがって何が狙いだよ?今ならそんなことを言ってしまいそうな寂しい人間になったものだと自分でも思う。

もしかしたらこのプロジェクトはそういうひねくれた俺みたいな大人を減らす効果もあるんじゃないかなんて思っちまったりしてよ。

応援してみようかなと。

照れくさいけれど。

後輩は笹裕輝って野郎でこいつも母子家庭育ち。

俺の母ちゃんは保険の外交員だったけどこいつの母ちゃんは確かスナック勤めかなんか。

兵庫から東京に出てきて、歌舞伎町のKってBARで働いていた頃に知り合ったんだよな。今はバーテンやめて六本木でイタリアンの店なんか出してやがる。

所謂、歌舞伎町を巣立ってキレイなお店やっているあんちゃん。

NHKにも取り上げられたって嬉しそうに言っていたな。

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俺もNHKは出たことがあるが取り扱われ方が全くの真逆だよ。

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見てくれよこのダークな感じ。笑っちまうよな。

笹はコロナ騒動があってこのプロジェクトをやろうと思ったそうだ。

もし自分が六畳一間の母子家庭だったあの頃にこの騒動が起きていたらどうなっていたかと考えたら、全国の母子家庭が心配でたまらなくなったとのこと。

たいした想像力だよな。俺は笹がそんなことを考えていた時に多分バカラをしていたぜ。

まあいいや、もうそんなに書くこともない。

自問自答しながらこれを書いていたが、やっぱりこういうのは良いことだと思う。ただそれだけ。

プロジェクトの紹介を最後にさせてもらう。

こうしてリンクを貼ってテキストを読むと、やっぱり何か斜めに見ちまうんだよな。「笑顔を灯そう!」とかってよ。

でも笹は本当にそういう気持ちでやっているんだ。

一人の世界に入ると俺は汚れちまってるからそういう風に見ちまうから駄目なんだ。

今、笹のiphoneで見たカメラロールのこどもたちの写真を思い返しながらもう一度書く。

俺はこれを応援したい。

5000円からカンパ出来るから、儲かってるやつがいたら支援してやってほしい。

俺は徳を積んでおくと良いことがあるという邪な気持ちでゼニをいれさせてもらう。

幸せの総和っていうのは一定ではないと思う。ゼロサムゲームじゃねえ以上、誰かが幸せになった分だけ誰かが不幸になる訳でもねえ。

だったらガキとシンママくらい笑わせてやらねえと男が廃るってもんだろう。

じゃあなんだか恥ずかしいからあばよ。

追記分

あれからどうなったかというと、笹は約4万食の弁当を届けたそうだ。



ホットケナインってネーミングちょっとダサい感じだな。まあお前のプロジェクトだから別にいいけど。

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一食1000円ちょっとかかっているみたいだけど、宅配エリアの広さや保冷なんかも考えたらこうなるよな。

俺達みたいにキッチンカーの集合形式の炊き出しならもう少し安くできるんだけどこれは仕方ないだろう。自転車代もあるだろうしよ。

笹、これからも続けてくれよ。

酔っぱらってたから詳しく覚えてないけどこういう活動を継続してたら取引先が増えただかで取引先や常連さんが増えたって嬉しそうに言っていたよな。

やっぱり手越君が配達やってたのとかがかなり強かったんじゃないの。

良かったじゃねえか。

俺がカジノ行こうぜって言ったら、今はプロジェクトがテレビとかにたくさん取り上げてもらえてるし行かないって目を見て断ってきたよな。

そういうお前、すごくいいよ。

俺はあの後40万負けたけどな。

配達や支援なんかを募集しているらしい。

もう俺がこの活動に言及することはないと思うけど、笹の活動を応援してあげてほしい。

Respect.

俺にゼニなんか投げるならコンビニの募金箱に突っ込んでおけ。 ただしnoteのフォローとスキ連打くらいはしておくように。