北上秋良

逆噴射小説大賞参加用に取得したアカウントです。あとは日常の中からちょっとしっかりめに書…

北上秋良

逆噴射小説大賞参加用に取得したアカウントです。あとは日常の中からちょっとしっかりめに書き留めておきたくなったものなど。

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  • 逆噴射小説大賞2022参加作品

  • 逆噴射小説大賞2021応募作品

    逆噴射小説大賞2021に初参加しました。

最近の記事

さよなら、ロックスター

チバユウスケがこの世を去っていたことが公に発表されてしまった。 チバユウスケといえば「THEE MICHELLE GUN ELEPHANT」「ROSSO」「The Birthday」にて活躍してきたヴォーカリスト。二十代の頃ミッシェルに出会った私にとっては、やはり彼はミッシェルのチバだ。 今までの自分の人生の中で最も周囲を取り巻く環境が激変した二十代。色々なバンドの歌に寄り添われ勇気づけられてきたが、ミッシェルの音楽はまるで戦友だった。不慣れな環境に弱音を吐きそうになる自分を

    • これは、届かなくても良い手紙

      もう十年以上日記を追いかけ続けているアマチュアの小説書きがいる。何故日記なのかというと、昔その人が持っていたサイトは数年前に閉鎖してしまっているからだ。今も何らかの形で小説作品を発表しているようなのだが、私は彼女のただの一ファンで直接の交流があったわけではないし、既に別のジャンルにいるので動向がわからない。 なので彼女がたまに更新するブログから彼女の思想を吸っている。(文字にするとだいぶ気持ち悪いな……) 何故断片的にしか知ることができなくなった人のことを今も追いかけているの

      • 「ダンジョンズ&ドラゴンズ」感想/想像力の向こう側の世界

        中高生の頃、TRPGのサークルに入っていたことがある。メンバーは似たような年頃の者から社会人までおり、休日に集まって公共の会議室を借りて遊んでいた。オンラインセッション全盛の今しか知らない人には想像できないかもしれないが、当時はTRPGを遊ぶためには各々日時を調整して実際に顔を合わせるしかなかったため、こういったサークルがあったのだ。 当時は大「グループSNE」時代。なかでも私が一番多く遊んだのは「ソード・ワールドRPG」だったと記憶している。(2.0へ改訂され今も遊ばれてい

        • 「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」感想/選び取った分岐の先を生きるということ

          「すずめの戸締まり」から始まって「RRR」、そしてこの「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」。ここ数ヶ月の間に観た映画がことごとく当たりでとても嬉しい。映画館まで出かけて行ってチケット買って観るものだから、やっぱりそれなりの満足感は得たいと思ってしまうのだけど、この三作はそれぞれ方向性が違えどもみな「いいもん観た!」という気持ちで帰路につくことができた。どんな媒体であれ、「俺はこれを伝えたいんだ!目ぇかっぴらいてごろうじろ!」というエネルギーに触れられることは

        さよなら、ロックスター

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        • 逆噴射小説大賞2022参加作品
          1本
        • 逆噴射小説大賞2021応募作品
          3本

        記事

          昭和の「まんが道」、平成の「G戦場ヘヴンズドア」、そして令和には……

          「これ描いて死ね」がある。 とよ田みのる先生マンガ大賞2023受賞おめでとうございます!昔購読していたアフタヌーンで先生のデビュー作を読んだ時にすごい新人さんが出て来たな〜と思ったことを覚えています(嫌らしい古参アピール)。 いやホントめでたい。アフタ買うのやめちゃってからはとよ田先生の漫画ともとんとご無沙汰だったのでこれを機に購入。 何を隠そう、タイトルで分かるように私は漫画家漫画が大好きなのだ。 特に「G戦場ヘヴンズドア」にはこれまで何度命を救われたか分からない。「作る

          昭和の「まんが道」、平成の「G戦場ヘヴンズドア」、そして令和には……

          体と心は不可分という話

          前回あれだけ明るく前向きな記事を書いておいてアレなんだけども絶不調なこの一ヶ月であった。 出勤必須の職種ということもあり昼間はなんとか社会生活を営めていても、夜に疲れがどっと出る。ただ椅子に座っているだけのことがしんどく、少し休むか……のつもりで横になるとそのまま寝落ち、途中で目が覚めてもとにかく起き上がれない。硬い床の上でなく布団で寝直すべきだと頭の中では冷静に考えちゃいるがとにかく体が動かない。気力もない。当然風呂もまともに入れないので社会的死を防ぐため翌朝なんとか水浴

          体と心は不可分という話

          シン・チラシノウラ

          二次創作イベントに初めてサークル参加してから、早いもので一週間が経った。即売会イベントへのサークル参加自体は昨年既にデビューを果たしていたのだけれども、そちらは一次創作・しかもネット上で交流のあるサークルさんもほぼいないという完全なるチャレンジャーだったので逆に変に気負うことなく終始気楽にまったり参加することができていた。 が、今回は全く雰囲気が違って開始から撤収まで本当に怒涛の数時間だった。これについては初参加にも関わらず色々やりたいことを詰めすぎ作業が膨大になったことも大

          シン・チラシノウラ

          「おかえり」という祝福(すずめの戸締まりネタバレ感想)

          「すずめの戸締まり」を観た。恐らく近年の新海監督の作品の中では一番人によって評価が分かれるのではないかなあと思う。世代によって、また観客が暮らす地域によって、作品の大きな柱となっている東日本大震災への温度差があるだろうから。 自分はというと、たまたま九月に宮城の沿岸部を訪れていたこともあって非常に深く刺さる作品となった。途中も何度か危うい場面はあったものの、あるシーンでとうとう嗚咽が堪えきれなくなってしまい参ってしまった。 それは震災の日の朝、たくさんの人が「行ってきます」と

          「おかえり」という祝福(すずめの戸締まりネタバレ感想)

          凱歌を君へ

           安普請の定食屋に走る揺れ。  襲来だ。  腹に収まるはずの牛丼を未練がましく見つめ、主人に声を掛ける。 「トイレ借りるよ」 「どうぞ」  返事を待つまでもなく指差す奥へ。都市に暮らす者にはみな協力義務がある。  何の、って? 『巨人』を殺す『巨人』への、さ。  店の裏、偽装された廃棄口から一階層分をスロープで滑り降りる。狭く薄暗い通路の奥では親方とホマレが待っていた。 「おう、朔太郎」 「どうしたの、浅層にいるなんて」  彼ら師弟は『クロウラー』。眠れる遺産を叩き起こす者

          凱歌を君へ

          シティスケープ・イン・マイ・ヘッド

          とある夏の日、何の因果か十三年前に個人サイトで書いていた小説のHTMLを掘り起こしてしまい、深夜に嫌な汗をダラダラ流しながら読む羽目に。 もうとっくに処分したものとばかり思っていたけれどライフログマニアの自分に限ってそんなわけはないと少し考えれば分かるだろう!馬鹿!馬鹿!お馬鹿! 取るに足らないことからできれば忘れたくない大事なものまで、コレクターのごとく思い出を積み上げていく性質だけれども、その実後になってから掘り起こすことはあまりない。うず高く積み上がる一方だ。最近は三次

          シティスケープ・イン・マイ・ヘッド

          私の生まれた『町A』

          People In The Boxというアーティストの『町A』という曲が好きだ。 2018年にリリースされた彼らの六枚目のアルバム『Kodomo Rengou』に収録されており、三曲目に配置されたこの曲に発売当時ガツンと衝撃を受けたことをよく覚えている。なおこのアルバムは明るく見通しがいいのに不安・不穏といった雰囲気が全編を貫いており、そういった複雑な味わいはピープル自体の魅力でもあると思っている。 最近Twitterのタイムラインにこの曲のファンアートが流れてきたのをきっ

          私の生まれた『町A』

          春が苦手という話

          昔から春が苦手だ、特に雪解けの気配が強まるこの時期などは年がら年中アホアホしている自分にしては珍しくドブメンタルになっていることが多い。 季節とメンタルが関連する例としては冬季うつなんてものがあるそうで、原因の一つに日照時間の影響が挙げられている。お日様が恋しくてうつになるというのはなんとなく納得できる感じがする。その理屈でいくと日照時間が伸びていく春が苦手というのはちょっと訳がわからないが……。このことにも何かの因果関係はあるんだろうか。 世間的には春はみんなが待ち望むも

          春が苦手という話

          このライブカメラがすごい いきもの編(その1)

          谷川俊太郎の「朝のリレー」が好きだ。 日が昇り日が沈む。そんな何でもない、毎日当たり前にやってくる現象をあれだけロマンチックに表現したものを他に知らない。 そんな教科書にも載るほどの名作を生んだお方が「なんでもおまんこ」なんて詩を作っているあたりもアナーキーで最高だ。 インターネット以降の世界において私達はいつでも自由に、家に居ながらにして遠く離れた土地の様子を知ることができる。 その気になれば国から国へと朝を追い続け、夜をも駆逐することができる。 朝のリレー、走者は全部俺

          このライブカメラがすごい いきもの編(その1)

          逆噴射小説大賞2021ライナーノーツ②参加作品覚え書き

          よくきたな。おれは逆噴射聡一郎ではなく文鳥的なカーカーポーてきな白い鳥だ。 大賞の応募締め切りから既に一か月たったがやっと時間によゆうが出来たのでおれの撃った三発の弾丸についてメモを残しておこうと思う。来年の自分のためにも。 (白い鳥類はだいぶ無理して逆噴射先生の文体をエミュレートしているので以下普段の口調に戻ります) 一発目「レディオ・タンデム・モーター・スペクター」おっぱい。おっぱいです。(完) だけでは流石に酷いのでもう少し詳しく書いていくと、今回三発それぞれ「もし

          逆噴射小説大賞2021ライナーノーツ②参加作品覚え書き

          逆噴射小説大賞2021ライナーノーツ①ニュービーパルプスリンガー的雑感

           無事に三発の弾丸を撃ち切ることが出来た!  おれはやりとげたぞ!ワオーッ!!  よくきたな。おれは逆噴射聡一郎ではなく文鳥てきなカーカーポーてきな鳥類だ。  未だ募集期間は終わっていないが、興奮冷めやらぬうちにこのコンテストについて初参加なりの感想や今回提出した作品についての話をしようと思う。とりあえず今回は全体的なことについてだ。  普段のおれの文体を知るおまえはさぞ驚いていることと思うがこれは敬愛する逆噴射先生へのリスペクトーオーなので大目に見て欲しい。  同時に、常

          逆噴射小説大賞2021ライナーノーツ①ニュービーパルプスリンガー的雑感

          それゆえの獏

          「おう若いの。出番はこれからか」  隣室の男に頷き、僕は顔をしかめた。  彼の青い作業服の左半身が真っ赤に染め抜かれている。共用廊下の真っ白な床にみるみる広がる血溜まり。禍々しい潮の匂い。 「今日は随分とハードだね」 「見上げるほどの可愛い子犬に捕まって、そのままオモチャよ。あー痛ぇ……」  皮一枚で繋がる左腕がぷらぷら揺れている。壮年の男は笑みを見せた途端、ごぼと血を吐いた。  彼は天涯孤独となった娘をせめて悪夢から守ってやりたくて『獏』と化した。  自分と似ている。そう感

          それゆえの獏