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AIがUXデザインをする時代は来るのか?

この記事はGoodpatch UI Design Advent Calendar 2019の9日目の記事です。

今年読んだ本の中でアフターデジタルが一番印象に残っているのですが、以下文章を読んで感じたことテーマとして書いてみたいと思います。

行動データが大量に出てくると、当然AIで解析することが必要になります。この時にAIが抽出すべきものは、「特徴的なモーメント」や「体験の不和がある共通モーメント」になるでしょう。AIが高速に抽出した問題や特徴をベースに、人間が企画立案することで、高速にUXグロースハックを回すことができるようになります。

「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」より引用

行動データがデジタルとリアルで全て保持されていて、それをAIが高速で分析できたとしたら...ペルソナやカスタマージャーニーマップをAIが自動でモデリングしてくれるの!?どうなんだろうか?と思ったという話です。

結論、できなくはないかもしれませんが完全にユーザーモデリングをAI任せにすると、UXデザイナーが直接ユーザーに向き合う時間が減ってしまい、ユーザーに「感情移入」したり「価値観」を深く理解できなくなるため、サービス・プロダクトの質を上げるためにAIは利用するくらいが丁度いいのではと思います。

アフターデジタルとは?

書籍読んでもらうのが誤解も生まれないので一番良いですが、ざっくり説明すると以下になります。

・アフターデジタルとは、デジタルな世界をベースに体験全てが設計されていて、その一部にリアルがあるという世界

・その世界では全ての行動をデータで取得できるようになっているて、体験全体がデジタルとリアルでデータ的が分断されることなく保持されている

・日本企業的な考え方は、リアルな体験の中にどうデジタルを入れていこうかという発想で、そもそもその考え方は本来のデジタルトランスフォーメーションではなく、行動データが分断されているので顧客最適化が困難になっている

・デジタルトランスフォーメーションを簡単にやってのけてるのが中国で、様々な事例とともにアフターデジタルの世界を紹介している

アフターデジタルの世界におけるUXデザイン

UXデザイナーは、行動データを取得する手段として、デプスインタビューような所謂インタビューを実施しています。そこで得られたローデータを元にペルソナやカスタマージャーニーマップを作成するのですが、アフターデジタルの世界においてこのプロセスに何か変化が起きるのでしょうか!?

おそらくプロセス自体に大きな変化はないように思いますが、インタビューの質が上がり、結果ユーザーモデリングの質も上がると考えています。

アフターデジタルの世界では、単純に今までよりも行動データが大量に保存されているということになります。ローデータが多いというイメージになります。1ユーザーのリアルとデジタルのデータが同じ顧客IDで紐付けられて行動ログが完全に把握できている状態です。

インタビューではローデータを全て取得できない(ユーザーが行動を思い出せない)、もしくは間違っていたりする(ユーザーの記憶があいまい)ので、インタビュイーがある程度頭の中で補完しないといけません。私の感覚ですが、インタビュイーは、インタビュー中にペルソナに抽象化してそこから具体化し、足りないローデータを補完しているのではと思います。

もし、ローデータである行動データがデジタルとリアルで正確に保持されていれば、それをファクトとしてインタビューの質を上げることができそうです。行動データからデジタルとリアルの行動を時系列に並べて「この時どういう気持だったんですか?」というように、インタビュイーの記憶に頼ることなくインタビューが実施できるようになると思います。(行動が監視されているようでちょっと怖いですが...)

インタビューの質が上がれば、その後に続くユーザーモデリングの質も上がります。以前、Goodpatchブログでユーザーモデリングの3階層を意識しようという記事を書きましたが、属性層・行動層・価値層のアウトプットの質が上がりそうな期待があります。

AIがユーザーモデリングをやってくれる?

ではAIがユーザーモデリングまでを自動で全部行ってくれて、かつ質の高いものができるのかという話です。

冒頭でも言いましたが、できなくはないと思いますが完全にユーザーモデリングをAI任せにすると、UXデザイナーが直接ユーザーに向き合う時間が減ってしまい、ユーザーに「感情移入」したり「価値観」を深く理解できなくなるため、サービス・プロダクトの質を上げるためにAIは利用するくらいが丁度いいのではと思います。

ペルソナやカスタマージャーニーマップは、アウトプット自体に価値があるというよりは、アウトプットに至るまでのプロセスをデザイナー達が体験することが大事で、その過程で生まれる成果物です。

デザイナーがユーザーに想いを馳せ、インサイトが何なのか深く考察し、最終的に良いアイデアにたどり着くまで頭を悩ませる時間はこれからも必要で、ここは引き続き人間にしかできない領域だと思っています。

ペルソナやカスタマージャーニーマップ自体に価値がないかと言われればそんなことはなく、インタビューの結果が凝縮されたものなので、プロセスを一緒に体験できていないステークホルダーにとってはそれを見ることでユーザーのことを理解できる最良のアウトプットになります。

ただ、あるあるなのはペルソナがマーケティング文脈におけるターゲットの意味合いに捉えられてしまい、そうではないことを説明するのに苦労する時がありますが、その説明コストを払ってでもペルソナを作ることはデザインプロセスにおいて重要だと思います。

もちろん、デザインプロセスはできるだけ一緒に体験できることが望ましく、余談ですが私が所属しているGoodpatchにおけるクライアントワークでは、社内のプロジェクトメンバーはもちろんのこと、クライアントとも共創を通じて良いサービス・プロダクト作りに取り組んでいます。

さいごに

AIに全て任せなくていいとは言いましたが、AIがペルソナやカスタマージャーニーマップを作成できるのであれば、どんなものか興味あるので見てみたいですね。

AIがどこまで何をやってくれるのか私にまだ想像できないですが、大量の行動データをインプットに、ユーザーの本質的欲求やインサイト抽出、アイディエーションまでをアウトプットできるのであれば、その文脈におけるUXデザイナーの仕事はなくなってしまいます。

もっと言うと、その先のUIデザインやエンジニアリングの方がまだAIが進出しやすいので自動化が進んでいき、MVP(Minimum Viable Product)レベルでのA/Bテストまで自動でやられてしまったら、ほぼ仕事がなくなってしまいますね...こわいこわい。

果たしてそんな世界が来るんでしょうか!?

※ 一応誤解のないよう補足ですが、アフターデジタルでは何でもAIに任せればいいと言っている訳ではないです

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