小数点以下の感情(0.999…)辛巳
車の座席から ビリー・アイリッシュの囁きが聞こえるよ。
らせんの狭間に 誰かの息吹が 聞こえる。
口に夜が拡がり 融点32℃で 消えた。
ニットの袖から こぼれおちる 鼓動。さようなら。
ゆれて 咲く 水のざわめきは 僕のてのひらで 36.5℃の熱を放つ。透明。
あなたの視線は 波の形。
きみが消えると 宇宙も消えるんだよ。
思い出は幽霊。僕を透過していく。
その記憶は 削れて 痛みに似ている。
短冊に吊るした願いは 油性のペンの滲みに ゆれる。
すべてがはじまりみたいな顔をして 光は放たれる。
春は あい が 似合わない。
オーケストラの真ん中で 孤独を叫ぶ。
四角い窓から平行四辺形の光が侵入する。
ドカンとした歓びは パーカッションではじけて 溶けた。
枯れた草花の横に新芽。生死の巨視化。
感情に白黒つけたがるあの人は 灰色の肌。
指でつくる小さなハートより あいを込めて。
君の手の中から生まれたホットケーキの花は どんな香りがするのかな。
幸せは不幸を知ってはじめて感じるものなんだよ。
そんな、小数点以下の感情に埋れながら生きている、わたし。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?