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小数点以下の感情(0.999…)壬午


するすると数珠つなぎの夜に 溶け目は混ざって 残酷に。

澱がついた荒んだ言葉も 消毒できたらいいのにね。

なんかよくわからんけどいいよねってときは 遺伝子の奥深くに眠る 昔の人のいいねだよ。

曖昧なくちびるから 透明な刃がわたしを刺す。

言葉より きみの視線は 素直だね。

喪失が ワンワンと声を上げながら通り過ぎていく。

あどけなく ガタゴトと瞬くあの電車は POP VIRUS.

言葉をプレパラートへ乗せて 顕微鏡で観ると そこにはなにもなくて それでも何かあると期待をもち 覗き続けている。

般若のお面 私の 守護神。

ゆめとか目標とかなくて 腐った気持ちに蓋をして ただ桜がきれいだったあのころ 仰げば尊し。

茫漠 哀惜 喪失 沈黙 開眼 無常。それらをナイフとフォークで切り裂いて 食べた。

感情の安定を約束されたような 恋なんていらない。その代わりに マティーニをちょうだい。

愛憎の跳ねっ返りが 手に飛び散って 肌へ べとりとついた 赤い赤い感情。

泡沫の 雁の群れの 哀しき声は 空と混じり わたしの体の中で気化した。

桜の花は 散る時期を知っている。人もそう。散る時期を知ってこそ 美しい。

向田邦子さんの言葉は 1メートル先にあるのに 手を伸ばしても 届くことはない 崇高な世界で 呼吸をしている。

その荒んだ視線 憂うくちびる 好きだな。

性衝動を あいに置き換えないで欲しい。

柔らかな手を触ると 叫びたくなるなんて 青春時代の 名残りだよ。

何度でも忘れていいから わたしとあなたの断片を 歩こう。



そんな、小数点以下の感情に埋れながら生きている、わたし。










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