私がブラック企業を辞められたわけ
6年間勤めたブラック企業を辞めてから、ちょうど一年が経ちます。
いま、ブラック企業に支配されて苦しんでいる人、セクハラやパワハラ、モラハラで悩んでいる人に向けて、伝えたいことがあります。
もっと「精神的に」楽になれる仕事を探すべき。
私も、そう簡単には辞められないと思っていた内の一人でした。
辞めるきっかけになった、背中を一押してくれた友人の、ある一言を紹介したいと思います。
とてもシンプルです。
「時間がもったいないよ」
隣のひとと肩がくっつくような狭いカウンターで牡蠣を食べながら聞きました。
その友人は元々、件のブラック企業で共に働いていた同期であり、彼女が辞めてしまった後も、なんでも相談し合える良い関係を保っていました。
潔く辞めていく友人を見ながら、私は羨ましさとそこから派生する嫉妬で複雑な思いでした。
私も辞めたい。でも辞められない。
私が辞めたら他のみんなが困るから、苦しむから。
私が辞めたら上司の心証を悪くするから。
私が辞めたら両親が悲しむから。
辞めた後の給料はどうする。一人暮らしなのに生活していけない。蓄えもない。今さら就活する気力もない。多少キツくてもここで頑張る方が楽だし。他にやりたいことあるけど、たくさんあるけど、仕事のせいで時間が全く割けない生活を送っているけど、給料は良いから辞めたくない。せっかく正社員で入ったのにもったいない。
「ああ、辞めたい」って思うたびに、様々な声が胸中に去来しました。
それを、友人がぶっ壊してくれました。
「人生って一度しかないんだよ。もったいないよ。巻き戻せないんだよ時間って。もう十分頑張ったんだし、他にやりたいことがあるなら行動すべきだよ。あんな会社にしがみついてる理由が全くない」
狭い牡蠣屋でその言葉を聞いたとき、私は、今までの妙な反発は嘘みたいに、ああ、そうだよなあって納得したんです。
当時26歳で、自分はまだまだ若いと思っていた。
でも、当たり前だけど時間は巻き戻せないんだよな、って唐突に腑に落ちたんです。
産まれたころに戻って人生やり直したい、ってよく言うけど、実際にそれが出来るわけではない。小学生や中学生の頃にだって戻れない。「いま」と「これから」しか残されていない。未来だって完全に保証されているわけではないのに、私はいとも簡単に当てにしている。
友人には、私の「本当にやりたいこと」を伝えていました。
作家になりたいこと。書くことで生計を立てていきたいという夢。
やりたいことがあるのに、まったく関係のない仕事のせいで、時間も心も摩耗させている状況が、彼女にはもったいなく映ったんだと思います。
私が「辞められない」と思っていた理由のほとんどは「世間体」でした。
少し我慢すれば、上司も他の同僚も安心してくれるし、両親も悲しまないし、世間から「やっぱりゆとり教育のイマドキ社員はちょっとしんどかったらすぐ辞めるんだね」って後ろ指差されることもない。
いま、ブラック企業を辞められない、主に若いひとたちも、ほとんどこれが呪縛になっているのではないでしょうか。
「辞める」って伝えることには多大な勇気が要ります。
辞めた後のことも心配だと思う。次の仕事は見つかるのかどうか、見つかるまでの生活を具体的にどうしていくか、いろいろ考えてしまって行動に移せないと思う。私もそうだったから切実に気持ちがわかります。
自分にとってなにが一番大切か、何が軸になるのか。
それを本腰入れて一度考えてみるべきだし、そんな時間も取れないほどの労働環境なら、それがもうブラックの証拠。
いきなり「辞める」というのがどうしても無理なら「休む」と言おう。
数日まとまった休みを取って、自分が本当はどうしたいのかを真剣に考える。
自分の人生は自分のものでしかなく、他人のものではないので代わりに考えてくれる人はいないんです。
自分でやるしかない。
苦しいなら、しんどいなら、自分で考えて自分で対策を練って、自分で解決していくしかない。
自分の人生に対して責任を持つのが「大人」なんだと思います。
それでも踏ん切りがつかなければ、「ブラック企業を思い切って辞めたら心穏やかな生活を手に入れた」私みたいな人間も世の中にはいるんだって考えてください。
ブラック企業に苦しむひとたちがゼロになりますように。
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