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彼氏の前でおならができるかどうか

さくらももこ先生のエッセイ「必見!!おならレポート」に衝撃のアンケート結果が載っていた。

「あなたは、家族の前でおならをしますか?」

という質問に、なんと4割もの人が「いいえ」と答えるのだ。
今まで当たり前のように、というかもはやなにも考えず家族の前でおならをしてきた私にとって、この4割の人たちは一旦どんな家庭環境で育ち、どうやって一つ屋根の下に住む人々の前でおならをせずに人生を送れてきたのか、地味だけれどとても難解な謎が生まれてしまった。

「家族」を「彼氏」に置き換えてみて初めて、
気を許した人の前でも、お尻の穴は緩めない
という心理は理解できた。

私は今までお付き合いをしてきた全ての男性の前でおならができたかというと、そういうわけではないからだ。

私が今まで、おならをできた彼氏は歴代2人しかいない。学生時代から7年ほど付き合った彼氏と、のちに夫になる人だ。それ以外の数名の男性の前では、おならだけは聴かせまいと気を張ってきた。

せっかくなので、おならを許せた瞬間と、許せなかった瞬間を思い出してみたい。

まず前提条件として、私は覚えているだけで1日少なくとも20回はおならをする。おならを減らす方法をGoogleで調べたことがあるほど、割と四六時中おならが出ている。なので、人の家に泊まるときにおならを気付かれずにすることは、私にとってはまあまあストレスがかかることなのだ。

私が今までおならを許せた2人の彼氏は、両方とも長い付き合いだが、おならが出てしまったのは割と付き合い始めてすぐのタイミングだ。2回とも私の意思に反して、「空耳かな?」では済まないレベルの音のオナラが出てしまった。そして、2人とも決して好意的に受け入れてくれたわけではなかった。

学生の時付き合っていた彼とは、彼の家に泊めてもらってまだ数回しかたたない時、なんと私は彼の横で寝屁をしてしまった。あまりのオナラの風力に私は目を覚ましてしまい、どうか彼は寝ていて気づいていませんようにと心の底から願ってゆっくり目を開けると、彼と目が合ってしまった。

「あなた、今おならしましたね。」

告白された時の言葉なんて全く覚えていないのに、この言葉だけは10年以上経った今でもクリアに脳内再生される。これが、私と彼のオナラ解禁の瞬間だった。私が一方的にこの日からオナラに対する恥じらいを無くしてしまったため、気にせずひどい時は3連続くらいおならを彼の前でしたのだが、その時は凍らせたペットボトルを突然お腹に当てられ、

「次おならしたら、水をぶっかける」

と真剣に怒られるほど、彼は私に可憐な女性像を求めていた。しかし、鈍感な私はおならをし続け(さらには、彼の実家のリビングに下着を脱ぎっぱなしにするという失態も犯し)、最終的には2人が一緒に暮らす将来が見えないという理由で7年間の付き合いに終止符を打った。7年間理想と現実のギャップに目を瞑ってくれた彼の人間性に今でも拍手を送りたい。

夫の前でおならをしたのも、夫の(当時は彼氏)家に泊まりに行って2回目か3回目というまだお互いに恥じらいのある期間のことであった。
夜も深まり、一緒にベッドでうとうとしていた時、またしても寝屁をしてしまったのだ。

夫の第一声は、

「はい、終了。」

そして、私をベッドから追い出そうとした。
しかし、私はこのまま布団を動かしたら匂いまで嗅がせてしまう二次災害が起こることを恐れ、頑なにベッドから動かなかった。

平謝りし、なんとか夫に「1回目だから」と許してもらえたところ、気が緩んだ私は、なんと2発目も豪快に放屁してしまった。

これには夫も呆れ、私を非難するのではなく、付き合った段階で私のデリカシーのなさを見抜けなかった自分を責め始めた。私は、彼のこういった自責の強さに自分にない大人らしさを感じ、付き合って1年で私たちは結婚式を挙げていた。

一方、今までおならをしてこれなかった歴代の彼氏とは、家に泊まりにいく時おならをしたくなるとトイレに行くか、我慢して彼氏の家を出た瞬間にまとめ出しをしていたが、これが原因でいつも泊まりに行った翌日は体調がイマイチだった。そう言った苦労も重なり、おならを許せない相手とは、1年半関係が続けばいいところ、といった感じである。

しかし、今までオナラがばれた原因が全て寝屁だったとすると、本当は、彼らは私のおならに気づいても聞かなかったふりをしてくれた紳士たちだったのかもしれない。

ちなみに、今まで私がおならをしたことはなくても、私の前でおならをした彼氏が1人いるが、匂いもあり心底イラッとした。
その時になってようやく、おならを繰り返した私に凍ったペットボトルを当ててきた元彼の気持ちを理解し、その後付き合う夫には全力で匂いは嗅がれまいと守る姿勢を作れたのは大きな学びである。

私は、今まで夫とケンカをしてしまったときもあるし、付き合っている時に他の男性に告白されたこともあるが、

「おならを気にせず一緒に暮らせるのは、夫だけだからなァ」

と踏みとどまることができている。


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