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Broadway Musical "KPOP"たった17公演で閉幕に考える多様性


ミュージカル「KPOP」がたった17公演で閉幕が決まった。アジア人がメインキャストとなり、韓国のカルチャーを題材にしたミュージカルがブロードウェイで公演されることは前代未聞で話題になった分、呆気ない終了となった。このミュージカルはアジア人女性初のブロードウェイ作曲家となったHelen Parkさんらが8年かけて作ってきたもの。

商業的な成功は収められなかったかもしれないけれど、これからHelen Parkさんのように「アジア人が正直に自分たちのカルチャーを描いたミュージカルがブロードウェイで公演された」と言えることが、どれだけアジア人ミュージカルライターに勇気とチャンスを与えてくれるか、それはある意味ロングラン公演になることより、難しく、価値のあることだと思う。

何より、閉幕が決まった後Helen Parkさんが書いたエッセイがアジア人がアメリカのショービジネス界で感じる心の痛みを代弁してくれていて、私の感想と一緒に紹介させてもらいたい。

私は今週32歳を迎えて振り返ってみると、今年1年は今までで1番辛くて、後ろ向きな事ばかり考えている時間多い1年だった。

自分の母国語ではない言葉で、母国ではない場所でミュージカルを作ることは、自分に深い劣等感を抱かせる作業で、でもそれを辛いと思うと「じゃあ辞めればいい、日本に帰ればいい」という言葉が襲ってくるから劣等感があることすら自分で認めることができない。

今アメリカでホットなBIPOCでUnderrepsresented な声を発信するアーティストの1人として、意義があることをしているヒーローなのだと自分に言い聞かせてきました。そして、「日系アメリカ人のミュージカルを書いてます」と言った瞬間明らかに可哀想な人を見る目に変わるプロデューサーに気づかないふりをし、アジア人アクターが殆どいない大学の演劇学部やカンパニーへ、きっと選ばれないだろうなと思いながら作品のサブミッションをする。

自分がもっといいストーリーが書ければ、素晴らしいフックが曲にあれば人種や移民ということ関係なく作品は選ばれるはずだ、と信じてまた書き直しを行う。

きっとそれは間違ってない。多くのマイノリティのミュージカルライターが、才能と努力でできないと思われていたことをやり遂げてきた。

でも、Helen Parkさんのエッセイで心に残った意見がある。「アメリカには、英語のレベルが知性のレベルを表している間違った理解」があり、英語ネイティブのアメリカ人は、「言葉で表していることと、心の中で生じている感情に乖離があるという経験」をしたことがある人は少ないと語っている。だから、従順で真面目で感情的にならない、というステレオタイプのアジア人像がアメリカで出来上がり、そうであること前提で扱われる。私がニューヨークに来てから心に渦巻いていた孤独の正体を代弁してもらったような気持ちになった。

それをもって、私がすべきことは何かと言ったら、やっぱり1人でも多くの人の心に響く作品を作ることでしかないのだけれど、私のブログを読んでくださった方達が、ミュージカルの裏には(表にも)世界を変えたいと全身全霊をかけて0から1を生み出そうとしている人たちがいることを思い出してもらえると、きっとこれからも新しく斬新な作品が世の中に生まれ続けられるのだと思う。

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