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米澤穂信さん『栞と嘘の季節』〜何かにすがりたかったあの頃の自分と人生の伴走者としての役目を担った栞の物語〜

 米澤穂信,『栞と嘘の季節』,集英社,2021  図書委員シリーズの2作目『栞と嘘の季節』読了。本屋さんの新刊コーナーに並んでいるのを見て気になっていたので、一気に読み切った形になった。  ソフトカバーの帯に書かれていた言葉。私が米澤穂信さんの作品を読むきっかけになった「日常のミステリー」の枠は越えているであろう言葉の並びだった。それゆえに、前作「本と鍵の季節」を上回る苦い予感しかしなかった。  そんな私の予感は、大きく外れた。“苦い予感”と言う点ではあってはいたが、そん

『木曜日にはココアを』~人と夢を繋ぐマスターとパラレルワールドの中で出逢う人々~

青山美智子,『木曜日にはココアを』,宝島社,2019 【感想】青山美智子さんの作品、『鎌倉うずまき案内所』に続き読んだ2作目。ひとつひとつの短編として読んでいても、全てのお話が最終的にはぐるっと一つに繋がっているのもおもしろかったです。まだ2作品しか読んでいませんが、青山さんのパラレルワールドの世界は発見がたくさんあって、サスペンスやミステリーではないのですがスリルがあります。「あのお話の登場人物がここにも」とか「この人と繋がりがあったんだ」と、青山さんの世界にどんどん

『鎌倉うずまき案内所』~はぐれたのは誰か、自分自身か~

青山美智子,『鎌倉うずまき案内所』,宝島社,2021 【感想】私がこれまで触れてきた何かに近い、と言うのが最初の感想でした。地下に続く螺旋階段、双子のおじいさん、アンモナイトの所長。私が連想したのは『不思議の国のアリス』でした。ウサギが入り込んだ地下に続く穴、双子のティートルダムとティートルディー、チェシャ猫。これらのキャラクターが完全にリンクしているわけではないかもしれませんが、私にとってはものすごく親近感のわく登場人物でした。そして、双子のおじいさんの「はぐれましたか?

矢沢あいさん『天使なんかじゃない』~翠になりたかったマミリンとマミリンに憧れていた私~

3coins×『天使なんかじゃない』のコラボがうれしくてうれしくて。 以前、『はじめまして、kittyです』の記事で書いた好きな漫画『天使なんかじゃない』。連載中、私はまだ小学生で最終回までは読めていませんでした。高校生になってからコミックスを揃え読んでみると、それはもう心をしっかり掴まれ生徒会に入りたいなとさえ思いました(・・;)。入りませんでしたが。 私が好きなのは、マミリンが 「あたしは 冴島翠にみたいになりたい」 と伝えるシーン。 成績優秀、美人で冷

トリイ・ヘイデンさん『うそをつく子―助けを求められなかった少女の物語―』~彼女が自分の人生を生きられるようになるまで~

トリイ・ヘイデン,入江真佐子訳,『うそをつく子―助けを求められなかった少女の物語―』,早川書房,2021 トリイ・ヘイデンさん「16年ぶりの新作」と帯に書いてあるのを見て、思わず手に取りました。私が10代の頃、クラスメイトの影響もありノンフィクション、小説といくつか作品を読んで以来の再会。もう執筆はされていないのかな、と思っていたので本屋さんでの出会いは衝撃でした。ハードカバーのため、迷わなかったわけではありませんが、これも何かの縁だと思い購入しました。 【感想】「愛

米澤穂信さん『本と鍵の季節』~青春とミステリーの苦いところ~

米澤穂信,『本と鍵の季節』,集英社,2021 米澤穂信さんの作品は久しぶりに読みました。これまで読んだ作品は「古典部シリーズ」。こちらは小説と漫画を並行して読んでいます(でもなかなか新刊がでなくて)。あとは以前弟から借りた「ベルーフ」シリーズの『王とサーカス』。「ベルーフ」シリーズはまだこの作品しか読んだことはありません。 私にとっては、上記2シリーズ以来の新シリーズです。 【感想】米澤穂信さんが書かれる「日常のミステリー」が、古典部シリーズの時よりもビターと言う