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エレニの帰郷

[2014年1月25日の日記]

公開年度:2008年
鑑賞:2014年1月25日(新宿バルト9)
監督:テオ・アンゲロプロス
出演:イレーヌ・ジャコブ、ミシェル・ピコリ、ブルーノ・ガンツ、ウィレム・デフォー

2014年、初鑑賞の映画はアンゲロプロス作品の劇場ロードショー。東映がアンゲロプロス作品を配給するとは時代が変わったものだなあと思っていたけど、配給協力としてフランス映画社が名を連ねていてどこかほっとした。

テオ・アンゲロプロスの命日は、Wikipedia で見ると1月24日となっているけどこれは現地時間の日付。亡くなられた時刻が不明なので断言はできないけど、ヨーロッパとの時差を考えると今日がアンゲロプロスの命日と考えてよいのではないか。その命日にアンゲロプロスの遺作「エレニの帰郷」を鑑賞。劇場の外に簡易的な献花台が用意されていて、ついじっと写真を見入ってしまった。映画館が用意したと思われる花を一本、僕も写真の前に供えてきた。

今回の作品は、これまでのアンゲロプロス作品とは趣を異にするところが多い。たとえば有名な俳優を多数起用していたり、劇中での会話のほとんどが英語だったり。そのせいか始まってしばらくは「これ本当にアンゲロプロスの映画?」という違和感が付きまとった。けれど少しずつ「らしさ」が見えてきて、相変わらず話は難解で消化不良だけど、それでも「アンゲロプロス」を感じることができて安堵している自分がいた。

起用されている有名俳優たちは、確かに知名度は高い役者たちだけど、ブルーノ・ガンツは「永遠と一日」で既にアンゲロプロスの作品で仕事をしているし、ミシェル・ピコリはその実力も経歴も折り紙付き。ウィレム・デフォーはハリウッド俳優として活躍する傍ら、ヴェンダースやフォントリアーのような一癖ある監督の作品でもその独特の存在感を示している。

そしてイレーヌ・ジャコブ。一時期はハリウッドでしょうもない仕事ばかりをしていて幻滅したけど、「トリコロール 赤の愛」の静謐で力強い印象は今なお僕の中で鮮やかに息づいている。思えば「赤の愛」もまた、キェシロフスキの遺作だった。そういう星のもとに生まれた女優さんなのかもしれない。

原題は「The Dust of Time」。「エレニの帰郷」という邦題はどうなんだろう。「エレニの旅」を観ていないのでこの二作につながりがあるのかどうかは分からないけど、なんとなく商業的な意図を感じるような気もしてしまうのは僕だけだろうか。「時の埃」でよかったんじゃないかな。

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