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ブロンド少女は過激に美しく

[2011年5月29日の日記]

監督は現役最高齢(102歳!)、ポルトガルの巨匠マノエル・デ・オリヴェイラ。久々に映画館で鑑賞。

とにかく全編、静謐な映像の美しさが印象的。今時の映画はどれもこれも高精細のクリアーな映像で、映画独特のフィルムの味わいが欠けているものが多いけれど、この映画では昔ながらのフィルムの感触を楽しむことができる。

ちなみに、オリヴェイラ作品では常連のレオノール・シルヴェイラとルイス・ミゲル・シントラも出演している。ルイス・ミゲル・シントラはフェルナンド・ペソアの詩を朗読するそのシーンにしか顔を出していないけれど、他のオリヴェイラ作品や「リスボン物語」を知っている映画ファンはニヤリとせずにはいられない。

・・・と言いつつも肝心の内容そのものは正直イマイチ。退屈ではないんだけども。ぐっとくるのは結局のところ映像の美しさだけだった。

しかしこの邦題のセンス、どうにかならんのか。「過激なブロンド娘」なんて露骨にエロいニュアンス含めちゃってるけど全然そんな内容じゃないし。「過激」ですらない。

原題の「Singularidades de Uma Rapariga Loura」は、英語に訳すと「Singularities of a blonde girl」。「singularity」が複数形で、「blonde girl」は不定冠詞を伴う単数形。これらの点を考慮して普通に訳したら「あるブロンド少女に見られるいくつかの特異性」となる。原作となる短編小説のタイトルは「ある金髪女の奇行」。内容を踏まえると全然こっちの方がしっくりくる。

それらを踏まえるとやっぱこの邦題、下世話な作為が働いているようにしか思えないんだよな。

ぴったり8年前の日記。この時はまだオリヴェイラは健在だったということですな。

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