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あなたがおうちでやれるレベルの仕事なら、いずれ会社はAIに置換しますが、それでも良いですか?

経済学者ポール・クルーグマンは情報テクノロジーが既成の秩序をどう逆転するかについて、1998年頃、次のように言っている。1998年頃といえば、ネットがぼちぼち生活やビジネスシーンに浸透し始めた頃だ。

いずれ税理士は専門ソフトウェアに取って代わられる日が来るだろうが、人間はそれでも必要とされ、高給で迎えられるだろう。単なる消費財がどんどん安くなる一方で、庭師や家の清掃、その他の本当に難しい仕事に割く支出比率は、増加の一途をたどるからだ。

『New Rules for the New Economy』by Kevin Kelly,1998, 内 Kevinの引用による

これを受け、ケビン(Kevin)は自分の体験を述べている。

実際、将来を待つまでもない。最近、私は2人のフリーの人間を雇った。1人は、私がテープに録音したインタビューを文字起こしして、1時間25ドルを請求した。もう1人は油まみれのキッチンに出張して清掃をし、1時間50ドルを請求した。そして私の知る限り、より繁盛しているのは後者の方だ。

前掲書

これはDNSA(Digital, Net, SNS, AI)以前の話であり、わずかにデジタルとネットが広まり始めた頃。さすがケビン、慧眼だ。

『エコノミスト』2023年7月11日付記事(『The Fight over working from home goes global』)は、アメリカを始めとする諸国で、ボスが会社に戻ってきてくれと言っても、社員たちが「イヤだ。このまま家でリモートワークしたい」と抗(あらが)ってモメてる現在の職場事情を紹介している。

プラカードのメッセージは「通勤、キライ」(笑)

記事タイトルを翻訳すると

『おうち仕事の闘いはグローバルな話になったみたい』

というニュアンスです。

その記事に添付されていた図。

「おうちでフルタイム仕事したい」日は週のうち何日?

赤丸が「実際」、青丸が会社サイドの希望、薄い青丸が社員の希望。

The Economist "The Fight over working from home goes global" July11th 2023

お国柄が出て、面白いよね。

さて、「おうちでフルタイムで仕事したい」というのは、言い換えれば「パソコン一台あれば私は仕事で価値創造できますよ」という主張だ。

パソコンが何かわからない人のために、念のため、写真を置いておきます。

これがパソコンです。

阪本の私物

しかし、パソコンでできる仕事はやがて機械化される。AIに置換される。

ケビンが1998年に依頼したインタビューのテープ文字起こしは、もう、人間の仕事ではなくなった。

つまり、あなたがおうちでやれるレベルの仕事なら、いずれ会社はAIに置換しますが、それでも良いですか?

ということだ。

DNSA(Digital, Net, SNS, AI)前から仕事やってるぼくからすれば、仕事なんていうのは、そんな狭くて小さいものではない。

コンサルティングする際、必ず、事前に会社を訪問する。

そこで感じる空気が、コンサルティングの設計に大きく関わってくる。

経営は、人が人と人に向けてやるものだ。

人は、声出すし、「ノッてる」「落ちてる」空気をまとっているものである。

依頼内容が「マーケティング戦略の立案」だとしても、それ以前に人の働く場としての職場に問題がありそうなら、お断りすることがある。

マーケティング以前の話であり、そうなると経営者や経営陣、さらには働く社員たちのマインドを変える必要が出てくる。

これは相当な力技であり、時間も費用もエネルギーもかかる。たった1つの便利な方程式としてのマーケティング戦略を取り入れれば、見事に繁盛する、なんてことはない。ないのだが、ここを理解している経営者は少ない。なので、お断りする。

DNSA(Digital, Net, SNS, AI)になって世の中に広まった最大の勘違いは、「少ない努力で大きな成果が手に入る」というものだ。

ひところ、子どもたちの人気職業がYouTuberだったのはこれで、ひと山当てたら大豪邸みたいな夢物語。

ヒカキンさんが20億の豪邸建てた、というニュースが流れたが、それはヒカキンさんの見えない部分の20億円分の努力あっての話であり、何もせずに転がり込んでくるものではない。

ということで、毎日めちゃくちゃ暑いですが、今日もぼくは現場へ足を運びます。それがぼくの仕事の流儀です。

【8月5日7:37am追記;満員のため締め切りました】8月17日午後、オンラインでDNSA時代のビジネスについてトークライブやります。
詳細はリンクのブログをご覧ください。よろしければ、是非ご参加を。


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