ChatGPTと文芸に関する雑感。
最近になってChatGPTなるものがすごいという話を知り、さっそく使ってみました。
色々できるようですが文芸好きの私としてはやはり、
「AIにオリジナル小説を書かせられる」
ここが一番の注目点です。
■ChatGPTって何なの?
私がつらつら書くよりもググっていただいたほうが早いのですが、せっかくなので「ChatGPTでどんなことができるか簡潔に教えて。」とChatGPTに頼んでみました。
だそうです。
理路整然ときちんとした文章で返答してくれますね。これはこれは……
オラ、わくわくすっぞ!笑
■さっそく書いてもらいましょう
試したいことが山ほど頭に浮かびますが、まずはこれでしょう。
「どんでん返しのある小説を千文字以内で書いて。」
さあ、どんなものが返ってくるか……。
まず驚くべきは冒頭の注意書き。
「注:以下の小説には、ストーリーの鍵となる要素が含まれていますので、ネタバレを避けたい方はご注意ください。」
もちろん私が書き足したわけではございませんよ。
〈どんでん返し〉というワードに反応しているのでしょう。本屋で買った新しい小説の冒頭にこんな一文が載ってたら爆笑必至ですが、ズレたことを書いているとはいえ私は驚きました。
さて内容ですが、これは小説ではなくあらすじですね。千文字という制限のせいでしょうか。
当然のことかもしれませんがどこかで読んだような話ではあります。「一見すると前兆のない失踪」というテーマもよくあるものです。私は乃南アサの『涙』を想起しました。
とはいえこれも、ちゃんと膨らませれば〈どんでん返し〉を実現できそうな構成にはなっています。
長大な小説を書かせた場合も今後検証してみたいですが、とりあえず短い内容なら文章やロジックに破綻のない「物語」をざっくり提示するくらいは問題なくできるようです。実際、アイデア探しの手段のひとつとして十分使えるのではないでしょうか。
もうひとつくらいやってみましょうか。今度は少し頼み方を変えてみます。
「千文字以内で意外な結末のある小説を書いて。」
まさかの二人称(笑)
冒頭の注意書きが消えて安心しました。
内容はやはり既視感パンパないですが、逆に言えばそれだけ依頼の内容に沿った返答をしているということ。
もっと条件を細かく指定した場合も試したいですが、きりがないのでこの辺で。
■俳句や短歌ならどうか
グーグルで「小説 AI」と検索すると一番上に表示される〈AIのべりすと〉というサイトがあります。
これを試した時も思ったのですが、「(少なくとも)ごく狭い範囲で前後の連なりに違和感のない文章を書くこと」はAIでも十分できるのですね。
ただ、小説のような散文の文芸は結局、「全体で何を意味しているか」が肝になります。これはいわゆる純文学でも、伏線いっぱいの娯楽文学でも、同じことです。
全体像が見えた上でブロックを積み上げるから〈家〉になるのであって、単純に倒れないように積んだだけのブロックの山が〈家〉になるか(見えるか)はまだ疑問です。そもそもAIがどんな手法でブロックを積んでいるのかわからないのでなんとも言えませんが。
過去の私の自作小説を用いて冒頭の数行を与え、「完結しなくていいから続きを千文字書いて。」みたいなこともやりました。
さきほどとは違い括弧書きで台詞を入れてくるなどの変化はありましたが、それでも文体のあらすじ感はぬぐえず。
まだまだあらすじ製造機の域は出ないという印象でした。
作家の名前を入れて「文体を模倣しろ」などとやればまた違うのか?
となると、短歌や俳句でどうなるか気になります。
散文は全体像が大きいので難しくても、短詩ならそれらしくなるのでは?
「秋の暮」で一句詠んで。
よかった、糞みたいな俳句で(笑)
小説と違ってザ・日本文学だし、ちょっと厳しかったかな。
中八だし、俳句は改行やスペースを入れずに「秋の暮虫の音寂しく響くより」と表記すべきことも把握できていない。
「秋の暮」という季語からどれだけ発想を飛躍させるか期待していましたが、関連性の近い単語を選んでしまうみたいですね。
小説でも短詩でも、文芸は「それとそれを繋げてくるのか!」という意外性が面白さのひとつでもありますから、違和感のない意味の繋がりから更に一歩、発想の飛躍みたいなものがあると面白いのですが。それが芸術性というものでしょうし。
ならば、それもやってもらいましょう。
ChatGPTのすごいところは、前の質問と返答を踏まえて新たな答えを出してくれるところなのです。
もっと「秋の暮」のイメージから飛躍した一句にして。
五七五を把握していないのは相変わらずですが、こちらの意図をきちんと汲んでいることがわかります。
このように、こちらからどんどん改善点を指摘していけば精度を上げることはできます。さきほどの小説もしつこく書き直させればもっとよくなるのかもしれません。
■ソーカル事件的なことは起こらない?
かつてソーカル事件というものがあったそうです。
特に純文学と呼ばれる作品の中には、「たぶん深い意味があるんだろうけど正直意味不明だな」というものもあります。
私は「AIがそれらしく小説を書ける」という話を聞いた時、文学においてもソーカルが書いたような「意味がありそうで(意味の破綻はないが)実は無内容」の小説を書いてくるのではないかと懸念、というより期待していたのですが、実際に触ってみた感じではそうはならなそうです。
仮にChatGPTをフル活用して小説を仕上げても、中庸(すなわち退屈)な作家が書く作品の域は出ないでしょう。現時点では。
そういう意味ではほっとする反面、文芸の可能性を押し広げるようなツールにはなり得ないという点で落胆もしています。
中庸であるということは、ニュース記事とかWeb記事の執筆には向いているのでしょうね。
作家性を求められないライターのほうが、このツールは有用であり、同時に脅威でもあるのではないでしょうか。
当然、ChatGPTが利用する大元の情報源は人間が足と目と耳でかき集めたものだし、それは今後も変わらないので、そこに自信がある人は心配いらないかもしれません。
一方、既にネット上に放られた知識・情報を要約する文章を書いているだけの人はかなりキツそうです。やることと言ったらソースの検証くらい? それは重要なことではありますが。
最後に、ChatGPTにもうひと仕事してもらいましょう。