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ChatGPTと文芸に関する雑感。

最近になってChatGPTなるものがすごいという話を知り、さっそく使ってみました。
色々できるようですが文芸好きの私としてはやはり、

「AIにオリジナル小説を書かせられる」

ここが一番の注目点です。


■ChatGPTって何なの?

私がつらつら書くよりもググっていただいたほうが早いのですが、せっかくなので「ChatGPTでどんなことができるか簡潔に教えて。」とChatGPTに頼んでみました。

だそうです。
理路整然ときちんとした文章で返答してくれますね。これはこれは……

オラ、わくわくすっぞ!笑



■さっそく書いてもらいましょう


試したいことが山ほど頭に浮かびますが、まずはこれでしょう。

「どんでん返しのある小説を千文字以内で書いて。」


さあ、どんなものが返ってくるか……。

注:以下の小説には、ストーリーの鍵となる要素が含まれていますので、ネタバレを避けたい方はご注意ください。

『運命の約束』

私たちは中学時代からの親友で、ずっと一緒にいた。大学に入っても、私たちは同じキャンパスに通っていた。彼女はとても優しく、私にとっては本当の家族のような存在だった。

ある日、私たちは誕生日を迎えることになった。彼女は私のために、特別な誕生日プレゼントを用意してくれた。それは、私たちが中学生の時に交わした「運命の約束」を思い出させるものだった。私たちは、あの時のように未来を一緒に歩むことを約束したのだ。

しかし、その翌日から、彼女の態度が急変した。彼女は私を避けるようになり、私が声をかけても返事をしなくなった。私は彼女のことが心配で、何度も彼女の家に行ったが、彼女の両親も彼女の行方を知らなかった。

数週間後、私はある場所で彼女に再会した。彼女は、私が知らなかった彼女の過去を明かし、運命の約束を守ることができなくなったことを謝罪した。そして、私に最後のお願いをした。

そのお願いを叶えるために、私は彼女が歩んできた道を辿ることになった。そして、私は彼女がどれほど苦しみながらも、決して私を裏切ることはなかったことを知った。

最後に、彼女は私に対し、「運命の約束」を果たすことを願っていた。私は彼女の思いを胸に、彼女と共に未来を歩むことを決めた。

ChatGPT


まず驚くべきは冒頭の注意書き。

「注:以下の小説には、ストーリーの鍵となる要素が含まれていますので、ネタバレを避けたい方はご注意ください。」

もちろん私が書き足したわけではございませんよ。
〈どんでん返し〉というワードに反応しているのでしょう。本屋で買った新しい小説の冒頭にこんな一文が載ってたら爆笑必至ですが、ズレたことを書いているとはいえ私は驚きました。


さて内容ですが、これは小説ではなくあらすじですね。千文字という制限のせいでしょうか。
当然のことかもしれませんがどこかで読んだような話ではあります。「一見すると前兆のない失踪」というテーマもよくあるものです。私は乃南アサの『涙』を想起しました。
とはいえこれも、ちゃんと膨らませれば〈どんでん返し〉を実現できそうな構成にはなっています。
長大な小説を書かせた場合も今後検証してみたいですが、とりあえず短い内容なら文章やロジックに破綻のない「物語」をざっくり提示するくらいは問題なくできるようです。実際、アイデア探しの手段のひとつとして十分使えるのではないでしょうか。


もうひとつくらいやってみましょうか。今度は少し頼み方を変えてみます。

「千文字以内で意外な結末のある小説を書いて。」

『迷宮』

あなたはとある迷宮に迷い込んでしまった。道案内をしてくれる人もおらず、迷宮の中を彷徨っているうちに、やがて出口を見つけた。しかし、その出口には仕掛けが施されており、鍵を開けるには謎を解く必要があった。

あなたは謎を解くため、迷宮内に散らばっているヒントを集めた。そして、ついに謎を解き、出口の鍵を開けることができた。出口を開けた瞬間、あなたは驚愕の事実を知ることになる。

迷宮の出口から出た先は、あなたが生まれ育った町だった。あなたは自分が何も知らなかったことに気づき、町を見渡すと、自分が知らない建物や地形がたくさんあることに気づいた。

あなたは、自分が幼い頃に迷宮に迷い込み、そのまま出口を見つけることができずに迷宮の中で過ごしたことに気づいた。そして、ついに出口を見つけたことで、自分が迷宮の中で成長し、知識や技術を習得したことに気づいたのだ。

あなたは、迷宮から出た先で、新たな可能性を探ることを決めた。そして、あなたは、迷宮の中で身につけた知識や技術を駆使し、周囲の人々を驚かせることになった。

ChatGPT


まさかの二人称(笑)
冒頭の注意書きが消えて安心しました。
内容はやはり既視感パンパないですが、逆に言えばそれだけ依頼の内容に沿った返答をしているということ。


もっと条件を細かく指定した場合も試したいですが、きりがないのでこの辺で。


■俳句や短歌ならどうか

グーグルで「小説 AI」と検索すると一番上に表示される〈AIのべりすと〉というサイトがあります。
これを試した時も思ったのですが、「(少なくとも)ごく狭い範囲で前後の連なりに違和感のない文章を書くこと」はAIでも十分できるのですね。

ただ、小説のような散文の文芸は結局、「全体で何を意味しているか」が肝になります。これはいわゆる純文学でも、伏線いっぱいの娯楽文学でも、同じことです。
全体像が見えた上でブロックを積み上げるから〈家〉になるのであって、単純に倒れないように積んだだけのブロックの山が〈家〉になるか(見えるか)はまだ疑問です。そもそもAIがどんな手法でブロックを積んでいるのかわからないのでなんとも言えませんが。

過去の私の自作小説を用いて冒頭の数行を与え、「完結しなくていいから続きを千文字書いて。」みたいなこともやりました。
さきほどとは違い括弧書きで台詞を入れてくるなどの変化はありましたが、それでも文体のあらすじ感はぬぐえず。
まだまだあらすじ製造機の域は出ないという印象でした。
作家の名前を入れて「文体を模倣しろ」などとやればまた違うのか?


となると、短歌や俳句でどうなるか気になります。
散文は全体像が大きいので難しくても、短詩ならそれらしくなるのでは?

「秋の暮」で一句詠んで。

よかった、糞みたいな俳句で(笑)
小説と違ってザ・日本文学だし、ちょっと厳しかったかな。
中八だし、俳句は改行やスペースを入れずに「秋の暮虫の音寂しく響くより」と表記すべきことも把握できていない。
「秋の暮」という季語からどれだけ発想を飛躍させるか期待していましたが、関連性の近い単語を選んでしまうみたいですね。

小説でも短詩でも、文芸は「それとそれを繋げてくるのか!」という意外性が面白さのひとつでもありますから、違和感のない意味の繋がりから更に一歩、発想の飛躍みたいなものがあると面白いのですが。それが芸術性というものでしょうし。


ならば、それもやってもらいましょう。
ChatGPTのすごいところは、前の質問と返答を踏まえて新たな答えを出してくれるところなのです。

もっと「秋の暮」のイメージから飛躍した一句にして。

五七五を把握していないのは相変わらずですが、こちらの意図をきちんと汲んでいることがわかります。
このように、こちらからどんどん改善点を指摘していけば精度を上げることはできます。さきほどの小説もしつこく書き直させればもっとよくなるのかもしれません。


■ソーカル事件的なことは起こらない?

かつてソーカル事件というものがあったそうです。

ソーカルはポストモダン思想家の文体をまねて科学用語と数式をちりばめた「無内容な論文」を作成し、これをポストモダン思想専門の学術誌に送ったところ、そのまま受理・掲載された。その後ソーカルは論文がでたらめな内容だったことを暴露し、それを見抜けず掲載した専門家を指弾するとともに、一部のポストモダン思想家が自分の疑似論文と同様に、数学・科学用語を権威付けとしてでたらめに使用していると主張した。

Wikipedia

特に純文学と呼ばれる作品の中には、「たぶん深い意味があるんだろうけど正直意味不明だな」というものもあります。
私は「AIがそれらしく小説を書ける」という話を聞いた時、文学においてもソーカルが書いたような「意味がありそうで(意味の破綻はないが)実は無内容」の小説を書いてくるのではないかと懸念、というより期待していたのですが、実際に触ってみた感じではそうはならなそうです。
仮にChatGPTをフル活用して小説を仕上げても、中庸(すなわち退屈)な作家が書く作品の域は出ないでしょう。現時点では。
そういう意味ではほっとする反面、文芸の可能性を押し広げるようなツールにはなり得ないという点で落胆もしています。


中庸であるということは、ニュース記事とかWeb記事の執筆には向いているのでしょうね。
作家性を求められないライターのほうが、このツールは有用であり、同時に脅威でもあるのではないでしょうか。
当然、ChatGPTが利用する大元の情報源は人間が足と目と耳でかき集めたものだし、それは今後も変わらないので、そこに自信がある人は心配いらないかもしれません。
一方、既にネット上に放られた知識・情報を要約する文章を書いているだけの人はかなりキツそうです。やることと言ったらソースの検証くらい? それは重要なことではありますが。



最後に、ChatGPTにもうひと仕事してもらいましょう。


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