K.M.

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文芸と自分が大好きです。 小説、俳句、エッセイ、作詞、読書に触れながら、私の人となりが見えてくるnoteを目指します。 おかしなやつだと思ったら是非フォロー&スキをよろしくお願いします。

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  • 自己紹介と雑記

    思い出話や雑多なネタを。

  • エッセイ集

    自分の経験やそれに基づく考え方などをエッセイの体裁で書いたもの。

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    ほかの書き手さんのnote記事で面白かったもの。 その記事に対する私の感想記事も。

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    私の思想、人生と向き合うにあたっての姿勢、社会の出来事に対して思ったことなど。

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    映画・ドラマ・小説・書籍などの感想。

最近の記事

認知症おじさんとの再戦。

以前、認知症になった元上司の話を書いた。 退職後も会社に現れ、来てはいけないと注意されてもへらへら笑って聞かない彼に、私が喝を入れた一件だ。 何が功を奏したのか不明だが、ここ数か月彼は姿を見せていなかった。 とうとう会社の場所を忘れたのか――わずかな哀傷と確かな安堵を覚えていたところ、先日、またも彼が現れたのである。 「ほら、お前の役目だぞ」と言わんばかりに同僚が私に報告してきた。 私の腹を煮立たせた憤りは、同僚に対するものか、彼に対するものか。 とにかく私は行った

    • エッセイ『丸刈りの愉しみ』

       初めて母以外の女性に髪を触られたのは十七八の時だった。当時よい仲だった人と漫画喫茶のカップル席に座り、ニコニコ動画を見始めた彼女が私の頭にヘッドフォンを付けてくれたのだった。彼女の指が襟足をかすめた時の、あのぞわぞわした高揚は忘れられない。  私は彼女と共有できる愉しみとして、当時夢中だった映画『食人族』の違法アップロード動画を見せた。文明国の探検隊が密林の原住民を追いかけまわしている隙に、私は彼女の頭にヘッドフォンを付けてあげた。女性の髪のなんと柔いことを知った青春の一

      • 中学の頃、この女優さん胸ポチしてるじゃん! ということだけ鮮烈に記憶した映画を二十年ぶりに観た。そんな場面はどこにもなかった。あれは青春の幻だったのだろうか……。

        • 私の「スキ」は重すぎたのか。

          岡田斗司夫著『超情報化社会におけるサバイバル術 「いいひと」戦略』を読みました。 SNSの登場によって加速した情報化社会を、心地良く、豊かに生き抜くための戦略(生き方論)が書かれた本著。 ざっくりまとめるとこんな内容です。 *** 歴史を振り返ると、戦国時代のように争いが苛烈な時代には「能力」が評価されやすく、比較的平和な時代には「徳」が評価されやすい。二十世紀後半の日本は(経済的に)前者だったが、現在は後者へとシフトしつつある。 だから「徳」を重視する、つまり「いいひ

        認知症おじさんとの再戦。

        • エッセイ『丸刈りの愉しみ』

        • 中学の頃、この女優さん胸ポチしてるじゃん! ということだけ鮮烈に記憶した映画を二十年ぶりに観た。そんな場面はどこにもなかった。あれは青春の幻だったのだろうか……。

        • 私の「スキ」は重すぎたのか。

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        記事

          生姜には体を温める効果があるそうで、好物のあおさの味噌汁に入れてみた。すごいぜ生姜パワー! あおさの風味を完璧に殺してる。

          生姜には体を温める効果があるそうで、好物のあおさの味噌汁に入れてみた。すごいぜ生姜パワー! あおさの風味を完璧に殺してる。

          認知症おじさんとの苦闘。

          「いい加減にしろよ、お前」 私は感情的になることのないよう、しかし〈憤り〉を表現しなければならなかった。 相手は自分の父親であってもおかしくない歳の男だ。実際、彼の二番目の子と私は同い年である。 彼は私の上司だった。 かれこれ三年ほど前、彼に認知症の兆候が現れた。 会社の恩情もあってだましだまし仕事を続けていたが、今年の四月、とうとう退職を迎えたのである。 定年まであと二年だった。 製造業の会社で、彼は現場の大黒柱と言っていい存在だった。 温厚な性格で人当たりもよく、

          認知症おじさんとの苦闘。

          大衆の愚かさと醜さを浮彫りにする怪作映画『ザ・ウォーク』

          1974年8月。 大道芸人フィリップ・プティはある偉業を成し遂げる。 所はアメリカ・ニューヨーク。 400m超の当時世界一の高さを誇った高層ビル・ワールドトレードセンター。 ツインタワーと呼ばれる二棟からなるこのビルの間を、彼は綱渡りしてのけたのだ。 ―――― 以前から気にはなっていた本作、ようやく鑑賞できました。 興味を持ったきっかけはネットでの高評価と、何より、この内容が実話という事実。 しかし、私はずっと本作を観ることに不安を覚えていたのです。 もし予想通りの映画

          大衆の愚かさと醜さを浮彫りにする怪作映画『ザ・ウォーク』

          このムカつく返答が当たり前の社会になったほうがいいのかもしれない。

          先日、漫画喫茶でのことです。 私はよく漫喫でカラオケを楽しむのですが、行きつけの店が JOYSOUND を撤廃するという暴挙に出たため、仕方なく別の店に行きました。 初めての店でしたがカラオケは問題なく楽しめました。 普段通り初恋の記憶が飛ぶほど村下孝蔵を熱唱し、さてひと休み。 無料のソフトクリームでのどちんこを冷やそうとしたときです。 慣れない店ゆえ、ソフトクリームメーカーの置き場がわからなかったのです。 私はフロントに行き、自分より一回りは若い店員に尋ねました。

          このムカつく返答が当たり前の社会になったほうがいいのかもしれない。

          「素直が一番 理屈は二番」とカレンダーの標語。気に入らなかったので「素直と無知の 紙一重」と続けて都都逸ふうにしてやりました。

          「素直が一番 理屈は二番」とカレンダーの標語。気に入らなかったので「素直と無知の 紙一重」と続けて都都逸ふうにしてやりました。

          『死ぬのが仕事だあ』と言った婆ちゃんがいよいよ。

           昨夜母から電話があった。第一声から悲しみの夕暮れみたいな声だったので、「ああ婆ちゃん死んだかな」と思ったら早とちりだった。もうじき死ぬだろうという話だった。私の実家を死の床とする祖母に今日、私は会いに行ってきた。  医者いわく、祖母にはもう食物を処理する力がなく、食事させると余計に苦しいだけらしい。木曜から水すら口にしていない祖母は痩せこけて、しかし穏やかな顔をしていた、というのは私の願望を見ただけに過ぎないのかもしれないけれど、正直な印象だ。何色でもなくこちらを見つめ返

          『死ぬのが仕事だあ』と言った婆ちゃんがいよいよ。

          体温で変形するというマッチミーブラ。おっぱいもキンタマみたいに寒いと縮こまったりするのかな? なんてCMを見ながら不思議に思っていたけれど、そうか、おっぱいが体温で変形するわけじゃないのか。――と不意に悟った今日この頃。

          体温で変形するというマッチミーブラ。おっぱいもキンタマみたいに寒いと縮こまったりするのかな? なんてCMを見ながら不思議に思っていたけれど、そうか、おっぱいが体温で変形するわけじゃないのか。――と不意に悟った今日この頃。

          noteを始めて丸二年。区切りもいいしちょっと舵を切ります。今後投稿は皆無か不定期か、いずれにせよ皆さまの記事の拝読は続けます。ありがとうそしてさようなら。――他人のこういう宣言に「黙って消えろ」と思ってたけど、なるほど、やっといたほうがスッキリしますね。

          noteを始めて丸二年。区切りもいいしちょっと舵を切ります。今後投稿は皆無か不定期か、いずれにせよ皆さまの記事の拝読は続けます。ありがとうそしてさようなら。――他人のこういう宣言に「黙って消えろ」と思ってたけど、なるほど、やっといたほうがスッキリしますね。

          失われた時を求めて。

          雨の日ってやつはどうにも気分がノらない。 春の生暖かい空気で満ちた部屋に一日中こもっていると頭が重くなる。無為に時間が過ぎていく。うっかり二度三度の自家発電でオイル切れだ。 ようやく動く気になったらもう夕方の四時で、失われた時を思ったら自己嫌悪のあまりベッドの上で後転した。後転は両足の爪先がみずからの頭の上に来るところで停止するとまれに肛門が開く。1013屁クトパスカルの大気が私の菊門を押し広げるという意味だ。小学生の頃、この神が創りし法則に気づいた私は居間の真ん中でよく大気

          失われた時を求めて。

          しっかりごはん食べて、あったかくして寝な。

          職場に認知症になった人がいる。症状が出始めたのは二年ほど前、彼はまだ五十代前半だった。 私が入社した当時、彼は工場の責任者だった。お世辞にもリーダーシップのある性格とは言えなかったが、その技術力や知識量は現場のトップとしてふさわしいものだった。 私は彼と二人体制で担当する業務についたので、彼から直接ものを教わる機会も多く、彼の「すごさ」を肌で感じたものである。 最初に異変に気づいたのは社長だった。 それまでの彼の仕事ぶりからは考えられないようなミスが続発していると聞き、私

          しっかりごはん食べて、あったかくして寝な。

          エッセイ『わかっていたことではないのか』

           2014年の御嶽山噴火のニュースはよく覚えている。登山者が五十人以上亡くなる大災害だった。  被害拡大の要因として、噴火警戒レベルが低すぎたことが指摘された。そのことで自治体を批判する声もあがり、犠牲者の遺族は損害賠償を求める訴訟を起こした。  この一連の流れに、私はあきれ返ったものである。  活火山に登っておきながら「噴火に巻き込まれたのは他者にも責任がある」などと、一体何をどう考えたらそんな結論に行き着くのか。登山は自然相手の遊びだ。遊園地のアトラクションとはわけが

          エッセイ『わかっていたことではないのか』

          エッセイ『風の吹くまま』

           二十代半ばの頃、当時勤めていた会社を辞めた私は「あてのない旅」に出た。  映画『男はつらいよ』シリーズが大好きな私は、幼少期より寅さんに憧れ、「風の吹くまま気の向くまま」に旅がしたいと常々思っていたのである。行き先も期間も決めずに出かけられる機会など一生の内にそう何度もあることではない。定年後の楽しみに旅行を据える人もいるが、体力や感性の活発を踏まえると旅は若い時にしてこそ真価を享受できるもの、とも考えた。無職となって貯えを取り崩すことに心配がなかったと言えば嘘になるが、

          エッセイ『風の吹くまま』