未来2023年4月号詠草『マイ・アンバランス』

未来2023年4月号詠草『マイ・アンバランス』 風野瑞人

鳴るものをいくつも止めた黄昏の耳のサインを見つめるために


自分へと向かいつづけるテロリスト恐れるたびにめまい覚える


朽ちてゆく自分の鱗その裏の黒く汚れた記憶を想う


いくつもの過去の私が集まって帰ってくるなと身体に告げる


定まらない腸の具合を気にもせずチェシャ猫は言う どうかしました


借り物の痛みでよかった脊椎がきしむぐらいに拒まれるのなら


胸元に茶色い雪が降るような動悸が始まる 必死に隠す


脳という場末の小さな劇場で今日何度目の壊れる気配

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