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文字ラジオ『ゆりがたり』メールインタビュー・深海紺/センシティブ同居譚「春とみどり」の話

センシティブな感情表現が胸を打つ同居譚「春とみどり」。その作者である深海紺先生にメールインタビューをさせて頂きました。

――まずは作品について伺いました。

「春とみどり」は居場所のないアラサーで冴えない性格のみどりと、かつてみどりの親友だったつぐみの遺した娘・春子の同居物語です。また、「メメント・ブルー」(☆)は、図書委員・圭が、女の子が好きな幽霊・ミサオとふれあい、ミサオがかつて好きだった秋吉薫先生との関係を通じて、恋を自覚する物語でした。世代の離れた絆、そうした関係性の設定を生かした百合という印象を受けますが、そうした設定がお好きなのでしょうか? また、三角関係という観点も魅力的です。そうした設定の魅力をお聞かせくださいましたら幸いです。

深海紺(以下、「深海」):年の差もそうですが、性格の違いであるとか、まったく繋がりがない二人がいっしょにいる「違和感」みたいなものが好きです。単純に友達や家族、恋人という言葉で表現できない、名前のない関係性というか。そういった曖昧で危うい関係だからこそ生まれる、友達や恋人以上に特別な繋がりに魅力を感じるのだと思います。
三角関係を描いている意識は特にありませんでした。どちらかと言うと、みどりがつぐみに、圭がミサオに求めていたような、閉鎖的な「二人だけの世界」を描こうとした結果そこに行き着いた感じです。二人だけの世界は存在しないし、そう思っていてもいつかは壊れるものだと思うので。

☆メメント・ブルー:第9回 メテオ・ポラリス彗星賞受賞作品


☆春子とみどり、それぞれのキャラクターができるまでの行程をお聞かせください。

深海:「春が嫌いな女性」と「彼女を救う女の子」という関係性からキャラクターを作っていきました。設定の段階ではなかなか二人のイメージがつかめなかったのですが、担当さんの提案で別の作品に登場させる予定だったキャラクターをそのまま使うことになり、現在のみどりと春子になりました。

――創作について伺いました。

☆漫画を読み始めたのは何歳くらいの頃でしたか?
最初に「はまった」と思った作品は何でしたか?

深海:漫画は実家に置いてあったものをかなり小さいころから読んでいた記憶があります。
子供のころはアニメの「セーラームーン」が大好きでした。大人になってから漫画を読んで改めて感銘を受けた作品です。少女漫画もよく読んでいましたが、当時から恋愛ものよりも、女の子達の友情や戦いを描いた作品のほうが好きだったなと思います。

☆漫画家になってよかったこと、嬉しかったこと、楽しかったことを教えてください。

深海:漫画を描くことがより好きになったことです。好きなことを仕事にすると嫌になってしまうかなと思っていたので…。

☆作画に欠かせないアイテムがありましたら教えてください。

深海:作業中は人の話し声があった方が落ち着くので、映画やラジオをよく流しています。『春とみどり』は描いていて憂鬱な気持ちになることも多いので、楽しい話を聞いて自分のテンションだけでも無理やり上げるようにしています。

☆作画されるときに一番好きな作業をお聞かせください。

深海:一番力を入れて描いているのは表情です。笑顔や泣き顔よりも感情を抑えたような表情が好きなので、そういった微妙な表情が描けると作画全体のモチベーションが上がります。

――百合についてお伺いします。

☆影響を受けた百合作品などはありますか?

深海:百合という関係性を知るきっかけになった作品は魚喃キリコ先生の『Blue』です。女の子同士の恋とも友情ともうまく言えない感情を痛いほどリアルに描いていて、強く共感しながら読んでいました。志村貴子先生の『青い花』も何度も読み返した作品で、百合という関係性はもちろん、漫画を描く上でもとても影響を受けました。

☆メールインタビューは以上です! メールインタビューにご回答頂きました深海紺先生に心より御礼申し上げます。

好きだった親友の娘と暮らすOL・みどりと、その娘である女子中学生・春子のセンシティブな感情表現が胸を打つ同居譚「春とみどり」第2巻は10月12日発売です!




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