20240120

 遠藤周作『沈黙』(新潮文庫)の読書会だった。彼の作品はずいぶん前に『深い河(ディープリバー)』と『海と毒薬』を読んでいたが、ひさしぶりに彼の人間の根幹に迫るような世界観に触れて、信仰とは、宗教とは、神とは何かという大きな問いについて改めて考えさせられた。読書会では、わたしよりも二回りほど年配の方々もいて彼らは「ネスカフェ」のCMで知られるメディアでの彼や、「狐狸庵」としてのユーモア溢れるおよそ作品世界からは想像できない人物像としての印象があったようで、逆に生前の彼を知らなかったわたしにとってはそちらの方が新鮮だった。そのことを知って、作中のキチジローと語り手であるロドリゴの相反する人物造詣の上手さにも納得した。わたしは長崎生まれなので、縁深い作家であるはずだが宗教についてはずっと忌避してきたので手が伸びなかった。だが、厳しい弾圧の中で隠れキリシタンとして長崎の人々が信仰していたものは何だったのか、なぜなのか、今は哲学を学ぶにあたり、結局は神学のことを知らなければならないと痛感しているので遅すぎる感はあるがゆっくりと勉強していきたいと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?