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33.【書評】英文学者が書いた随想!~福原麟太郎『人生十二の知恵』講談社学術文庫(1987年)~

 早稲田にある古本屋に立ち寄る。
 何か買いたくなる。
 本棚の前をゆっくり歩き、よさげな本を探す。
 一冊のうっすい本の著者名が私の目をとらえた。

 福原麟太郎。

 そう、その氏は英文学者。
 しかし、私は同氏が書いた『英語教育論』を先に読んでいたため、英語教師として認識していた。
 実際、英語の教員として勤務した経歴をお持ちのようである。
 下記Wikipediaのリンクをいただきたい。

 この書は1986年に出版されているが、そもそもは雑誌の連載として1953年中に著わされた随想なのである。

 英語に携わる人が各随想なのだから、何か英語に関する面白いエピソードでも記されているのだろう。
 そう期待して購入した。

 だが。

 読んでみると、そんな英語的なエピソードは皆無だった。

 「英」という感じすらなかったのではないか。

 それが逆に驚きだった。
 純粋に、一個人としての考え方をそれぞれテーマを設けて12の章に分けて記しているのである。

 私が最も印象に残ったのは、「失敗について」という題目のある以下のフレーズである。

失敗をして立ち直ったときに、その人は、新しい人になっている。失敗をする。また立ち直る。立ち直れない人が本当の失敗者なのかもしれない。
(略)
失敗すると、やや賢くなる。(p.67)

福原麟太郎『人生十二の知恵』

 時代を隔てても変わらないものはある。
 上記の引用をこの書が持つ普遍的な教訓の一つとして紹介して、一読の価値はあるという私見を添えて同書の書評とさせていただきたい。