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21. 英検の“壁”って何だ〜「高さ」ではなく「広さ」だ〜

 2025年度から、英検に新設級が導入されます。詳しくはホームページを参照ください。

 従来型、S-CBT型の双方に、準2級と2級の間に級が新設される予定です。
 新設されるようになった原因は、準2級合格から2級合格までに約2年要し、難易度に開きがあるということです。
 その根拠は、5級から2級までの全休合格者が各級合格までに要した時間を基に、5級から準2級までの全級合格者が各級合格までに要した時間を比較した結果です。

日本英語検定協会ホームページから引用

 さらに詳しく説明すると、それぞれの集団の級位間の時間の違いを算出し、前者(2級までの全級合格者)は準2級合格から2級合格まで1年半を費やしていたところ、後者(準2級までの全級合格者)が準2級まで要した時間を関数的に伸ばしていくと1年9カ月要すると推測され、その1年9カ月という期間は後者の集団が5級から準2級までの各級合格に要した時間とは大きな開き(約2倍と解釈されます)があったという結論により、級位新設に至ったようです。

 主な対象は現役高校とされていますが、級位新設によって、高校生の学習意欲が掻き立てられるのであれば良いことですね \(^^)/
 英検によって統計値が示される前から、この”壁”は指摘されていました。

 私が興味を持ったのは、英検が示したもう一つのグラフです。5級から1級までの全級合格者のデータが示されています。

日本英語検定協会ホームページから引用

 この集団は、準2級から2級まで約1年1か月要したと記されています。よく見ると、この集団のグラフの線は、大学2年生で1級に到達しているところ、2級から準1級、そして準1級から1級までに2年ずつ要していると読み取れます。
 こうなると、統計上、2級以上の級位にも”壁”があるということになります。

 私は、2級から準1級までに3年、準1級から1級まで20年強の時間を要しました。(注:20年間絶えず受検していた、ということではありません。受ける気力が湧かず、挑戦すらしていない期間が20年あります。反省しています…。)
 私の感覚では、準1級は、大学で課せられる英語の授業や英語での課題、外国人の先生による英語授業など大学での活動を通じて合格できたのですが、準1級合格直後に受検した1級は惨敗でした。
 それまでの取り組みを継続していただけでは合格できない気がしました。
 私は準1級と1級の間に”壁”の存在を感じました
 このあたりの記憶は、下記の記事にも記しております。

 私自身、2級と準1級の間にも私は”壁”を感じていたことは、上の記事にも表れています。

 この”壁”とは何なのか。

 結論から申しますと、英語を用いる世界(領域)の拡大する程度であると定義しています。

 私自身の経験を基にして話しますが、高校生までの英語の世界は、書店に行って学習参考書の「高校英語」の書棚に行けば見渡せる範囲でした。ちょっと広げたとして、「英検」の書棚くらいでした。

 ところが、大学で使う英語とは、日常会話はもちろん、学問に携わるうえで必要な新聞の英語や論文・書籍の英語と一気に世界が広がりました。
 目にするほとんどの英文がわからないので、繰り返し辞書を引き、引いて、引きまくるしかなく、とても苦しかったです。柔道で言えば、ひたすら投げられて、受身をとって、立ち上がって、そしてまた投げられて…。

 英検2級までの違いは、大学入試を離れ、大学での勉強を通じて、現実世界で使われている英語に触れたことです。
 大学での流れに乗ることで準1級に合格できるだけの力をつけることができた訳ですが、その地点から1級合格までの道筋は全く見えませんでした。これは「坂」ではなく、まさしく”壁”でした。

 もっと、自ら深く英語の世界に入り込まなければなりませんでした。
 積極的に新聞や雑誌を読み、生の英語に触れる。
 ほとんどわかりませんでしたが。
 この姿勢が1級合格に求められていたのだと今振り返って感じます。

 1級を取得してから振り返ると、自分が感じた”壁”を超えるには、壁の高さを意識しすぎることなく、ひたすらに時間を積み重ねるしかないと思います。
 壁を越えられるまで身長が伸びるのを待つか、飛んで超えられるだけの跳躍力を身につけるか、壁を超えるための階段を設けるか。
 例え方は異なりますが、英語を理解するために、どんどん英語に触れていく時間を積み重ねるしかない。

 積み重ねる、というと”壁”の「高さ」、縦の障壁が意識されますが、私は、それが「世界の広がり」、つまり、横の広がりなのではないかと思っています。

 海外に行く、海外のメディアに触れて外の世界を知る。
 全部を理解できなくても、一部から英語のコンテンツに面白みを感じて継続して英語に触れ続ける。
 そうやって英語に触れて世界を「広げる」ことで「高さ」を超えられる。それが結果として資格取得に表れる。

 今ではそう思っています。

 私の場合、これらの級は、単語帳や問題集に取り組むだけで突破することは無理だったのではないかと考えています。

 最近は、高校生で準1級とる人も多いので、受験対策バリバリの授業からいかに力を伸ばしているか、非常に興味があります。
 自分が英語教育に携わった時、高校生にどうやって高校のカリキュラムを通じて準1級の”壁”を超えるための道筋を示してあげられるか。考えていきたいと思います。

 長くなりましたが、私個人の経験として、2級と準1級の間、そして準1級と1級の間にも壁を感じました。
 その”壁”を乗り越えるためには、実際に問題に触れてみること、積極的に英語のメディアに触れたりすることで英語を取り巻く世界を広げていくことが求められていると思っています。

 最後までお読みいただきありがとうございました。