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感情を科学する

気になるあの人を見ると胸が締め付けられる感じ。
それと共に沸き起こってくる「好き」という感情。

嫌なことを言われたりされたりして頭に血がのぼる感じ。
それと共に沸き起こってくる「怒り」という感情。

いったいその感情はどこからやってくるのか。
マインドフルネス・瞑想がビジネスパーソンにおいて流行りワードとなっている昨今、理学療法士の知見から紐解いてみたいと思います。

ホメオスタシス

ぼくたち人間は恒温動物ですので体温は一定の温度で保たれていなければいけません。
暑くなれば汗を出して体を冷やす。
寒くなれば震えることによって体を温める。
このような仕組みで体温は保たれています。

同様に血圧や心拍も、体内にある水分のpHまでも一定の数値を保つようにデザインされています。
このある一定の領域で保持するようにデザインされた体の機能を「ホメオスタシス(恒常性)」と言います。
体温や血圧がこの決められた領域から外れてしまうと体にさまざまな異変が起こります。

脳は推論する臓器である

この理論を詳しく説明すると長くなるのでまた別で話します笑
かいつまんで話すと脳は感覚神経を通して送られてきた情報からそれが何なのかを推論するのであって、見たもの・感じたものそのものを知覚しているわけではない。ということです。ぼくたちが普段見ている景色は3Dで立体的に見えていますがが、実際に網膜が受け取る風景の情報は2D、2次元の世界です。2Dの情報を脳が無意識下で3Dに置き換えている、ということです。
詳しく知りたい人はこれを読んでもらえると理解が深まると思います。(と言っても難解ですが、、)

内臓の状態も常に脳が推論している

誰かに触られたりするとその圧覚や触覚が脳に情報が送られ、その強さや頻度、置かれている状況によって誰かにつねられている、などなぜその感覚が引き起こされているのかを推論します。
同様に内臓の変化も常に脳に情報が伝えられそれが何なのか、なぜ起きているのか、を推論します。
ここでいう内臓は胃や腎臓だけではなく血管なども含みます。血管の一部は血圧やpHなどの情報を脳に送る機能も持っているからです。

脳は外環境(自分の体の外)と内環境(内臓など)の両方から情報を受け取って原因探しのための推論を行っているのです。

情動と感情

ここで混同しがちな心の状態を表す言葉、「感情」と「情動」を再定義したいと思います。

情動=外環境や内環境の変化により起こる生理学的な反応(血圧の上昇、心拍数の上昇など。)これは自律神経(交感神経と副交感神経の相互作用)による無意識的な調整です。

感情=情動によって引き起こされる主観的な意識体験(ムカつく、楽しい、怖いなど)。

大事なPKを蹴るときにドキドキするー(心拍数の上昇)っていうのが情動でそれに伴って喚起される緊張という体験が感情ですね。

人を好きになる

気になる人がいるけどなかなか距離を縮められない。廊下ですれ違うだけでドキドキしてしまう。
あなたの目に飛び込んでくる彼の姿はなぜだかあなたの興味を引く。

興味があるものを見ると人の瞳孔は大きく広がります。
これは交感神経の作用によるものです。

交感神経が優位になると普段肝臓などに貯留されている血流が全身に流れ出します。
全身に流れる血液量が増えると、心臓が一回に送り出す血液量も増やさなければいけなくなるので心臓の収縮力は急激に強くなります。

これがあの『キュンっ』の正体です!!!!!!

そしてドキドキドキドキという心拍数の上昇という生理学的変化が引き起こされることになります。

さて、これらの情報はすべて脳に送られ脳の推論タイムに入ります。
キュンっはどこからの情報なのか。
何が原因でキュンっとしたのか。
脳は過去の出来事、今の外環境と内環境を統合していく。

今、あなたの目には気になる人がいて、胸がドキドキしている。
これってもしかして、、、恋なんじゃないの!?好きなんじゃないの!?
って感情が湧き上がってくる。

こうやって好きという感情は出来上がります。
「好き」は内臓が作り上げていることになります。

怒りの感情を「はらわたが煮えくり返る」と表現したり日本語は本当に心理をついてくるな、と感心します。怒りの感情も内臓の情報ですからね。

病は気からは存在する

病は気からという言葉があります。
これまでの話を聞くとあながち間違えじゃないと思えます。

感情は内臓の変化からやってくるというお話を今までしてきました。
ケンカしたあと少し時間が立って思い出すとまた段々と腹が立ってくる、胃がムカムカしてくる。こんな経験をしたことがある人はたくさんいると思います。

これはさっきとは逆のルートで感情が内臓の変化を引き起こした結果だと考えることができます。
内臓の変化は体温、血圧などを変化させることであるので、その感情が続いているうちはホメオスタシスから逸脱した状態と捉えることができます。

あした仕事行くの嫌だし、熱でもでないかなあ、、、の感情は熱が出ているときの過去を思い出し、内臓に働きかけて実際に熱を引き起こす可能性は十分に考えられるわけです。

SNS全盛期を生き抜くあなたへ

SNSを介した匿名の誹謗中傷によって悲しい出来事がまだまだ起こっています。
自分の人生を自分で終わらせてしまう痛ましい事件があったにもかかわらず、です。

科学技術が発展しても使う人間側が成長していないので心無い事を言う人はこれからもいなくなることはないと思います。
びっくりすることに医療従事者である理学療法士界隈でもTwitter上で誰かを晒し者にする、監視する、バカにするということを平気でやっています。患者の人生に寄り添うことが仕事の人間が、です。

ぼくたちはそういう出来事が起こることを予測しながら発信を行っていく必要があります。
頭にくることがあると思います。
「怒り」という感情に支配されてしまうかもしれません。
そういうときはいらない外環境をシャットアウトしましょう。情動を揺るがす外からの刺激を減らしてしまえばいい。
その代わり心許せる人と話しましょう。一人でいるより安堵という感情が生まれます。

あなたが、あなたのからだが認識する世界はあなたが見たもの、聞いたもの、感じたものから作り上げられています。
嫌なこと、ムカつくことはあなたの世界から消してしまうのが一番です。
仮想世界、通信技術が発達してしまった世の中だからこそ大事な人、大好きな人との空間的直接的な関わりを積極的に取ることが大事だと思います。


次回は仏教哲学と科学の繋がりに焦点を当てて「わたし」とは何か、について話せたらと思います。

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