「そうぞうりょく」のハナシ
問われる能力が全く違う。
経験を積めば上位と言われる工程に入れるかというとそれは全く違うのよな。メーカー的なSI村に住んでいると要件定義や設計なんてフェーズの仕事をやる時によく勘違いして参加してくる子がいる。
実はこの間、カットオーバーして無事に運用フェーズに入ったシステムで少し困った子が設計フェーズに入ってきた。その時に感じたことを書いてみようと思う。
設計書のテンプレートありますか?
基本設計フェーズで入って来た時の彼の第一声がこれだった。元SI村住人がやってしまうあるあるネタである。SI村にいると色々な会社に鉄板で動くシステムを導入していてそれを横展開していることが多いので提案時に大まかなシステム概要が決まっていることが多いのよな。
どっかで導入したシステム設計書が既にテンプレート化されていて、モノが流れてきて要件に合った形に修正して設計完了なんてコトも少なくない。設計と言えば設計なんだろうけれど、SI村にいるとこのテンプレートをそれっぽく修正して当てはめる作業を基本設計なんて言ってしまうコトもある。
オッサンは彼にシステムの基本設計書の目次を言ってみ?と振ると、何もしゃべれなくなる。SIで使っているテンプレートを修正するワープロ作業を基本設計と勘違いしている子が多いようで、最近は特に感じる。
システム基本設計書なんて書くものはほぼ決まっているので、何を書く必要があるのかを理解していれば詰まる要素なんてないよのな。少なくとも目次や概要を作るだけなら、オッサンは半日仕事だったりする。オッサンで半日仕事なので、優秀な人間ならもっと早く仕上げる。
中身まで書き上げると相応にシンドイけれど。
宇宙に行くことが出来る。だが乗っている人間は死ぬ。
これはかの有名な「デビルカー2世」の説明である。
某漫画で出てくる車なのだが、宇宙に行くことが出来る凄いスペックの車なんだけれど、乗っている人間は死んでしまうというぶっ飛びマシン。
例えば、お客さんに「宇宙に行きたい」という要望を馬鹿正直に叶えると、乗っている人間の生存を問わない代物ができあがる。当然、「宇宙に行きたい」という要望には「生きて宇宙に行く」「生きて地球に戻る」という暗黙の前提が存在してるワケだが、その前提を無視して作ると「宇宙に行けるが乗っている人間は死ぬ」という車が出来上がる。
少なくとも「宇宙に行きたい」という要望は叶えている。が、この車で宇宙に行くことはないので、無駄にテクノロジーとおカネをつぎ込んだ変な車ができあがってしまうことになる。
当然、こんな車を用意しても怒られる。が、宇宙に行けるという目的は達成できている。双方不満ばかり貯まるのでした、ちゃんちゃん。
ということが起こりえるのがIT業界。
イメージを作れる形にするのが設計
設計フェーズで一番問われる能力は想像力。もちろん論理的な思考回路も必要なんだけれど、一番は想像力なんだとオッサンは思ってる。
想像力がないエンジニアの書いた要件定義書は読むだけで分かる。
多分、これ、あるあるのような気がして来た。
面白くないんだよな。
システム設計に面白さは不要なんだけれど、それでも極まれにすごく面白い要件定義書とか基本設計書を目にすることがある。どんなものかは書けないんだけれど、こーゆーアプローチで実現するのかーと、ふんふんと読み込んでしまうような類のものな。
横展開されたようなシステムではなくて、「一品モノ」はこの手の設計であることが多いな。知恵と経験と想像力が練り込まれたような設計書。
作れる形になったものをブツにするのが製造
創造力が発揮されるのはこのフェーズ。
「ハンコ印みたいな基本設計書」から「攻めた詳細設計」の末に凄いプログラムが出来上がってしまう場合とかがコレに当てはまるな。
何を言っているのかというと
コピーやテンプレートを利用した設計書作りを全面的に否定する気はないけれど、その元になった設計書に織り込まれた知恵やノウハウを吸収することなく単純なコピー元の資料としてしか見ないような子が凄く増えたってハナシ。
なので、どんな構成でやるんですか?という良く分からないハナシが出てくる。それを考えるのが設計フェーズなんだから、今から考えるんだけれどというハナシにをしてもピンと来てもらえない。
こういう子は想像力で勝負するフェーズよりも、創造力で勝負するフェーズの方が伸びるんだけれどな。
設計的なフェーズの方が単価が良いのよな。製造のフェーズよりも。ここもどうかと思うんだけれど、しょうがないのかなぁと。
創造力で勝負した方がいい人間が想像力を問われるフェーズに入ってくると「ハンコ印」みたいな設計書しか作れないんだよな。SI村にいる限り、それはそれで能力が問われるから、いいんだろうけれど。
カネが欲しければフェーズを上にあげなければならないという構造的な問題があるが、アレだな。
20日かかるものを10日で製造しても同じカネが貰えるといった仕組みを導入しはじめたらこのフェーズも変わるんだろうな。
でも、これやり始めたら想像力も創造力もないヒトは喰えなくなりそうだから、やっぱり変わらないのかなぁと思ったり。
余談
日本のIT業界の構造は建築業界を見れば非常に良く分かる。巨大なシステムになるとIT業界もJV(マルチベンダー)なんてものができあがったりするところや受発注の産業構造も含めてそっくりである。
建築業界はIT業界の数年先の未来を先取りしているので、この後、IT業界がどうなるかは自明の理である。
そう遠くないうちに、
専門的な能力を持たない人間は淘汰されることになる。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?