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高齢化社会を反映? 社長年齢はずっと高齢化【未来を生きる文章術005】

 2002年2月6日の原稿。

 ちょっとトリッキーな遊びをした文章です。勘違いをわざと誘いつつ、本筋に入る。だけどその勘違いに、時代への皮肉を込める
 この当時、首相は小泉純一郎。外務大臣で人気のあった田中眞紀子氏の辞任が耳目を集めていました。そこに、社長交代ニュースをからめたもの。
 こういう遊びは、使いすぎるとあきられますし、ある種必然でないと文章が軽くなります。今回の原稿の場合は冒頭で遊び、その遊びを落ちにも持ってくることで、社会風刺としました。

 この原稿で紹介した帝国データバンクの最新の社長調査を見ました。驚かされたのは「全国社長年齢分析」です。2002年当時は57歳くらいでしたが、2017年は59.5歳。その間、ずっとあがっています。
 まあ、その間に平均寿命も延びていますから、これは仕方ないことかなと思ってはいます。しかし、日本の会社の新陳代謝は、あまり良くないってことかもしれませんね。

 ところで、今回の原稿にも没原稿があります。これもせっかくなので、付録につけますね。
 これを没にした理由は、体験談がナマナマしすぎることに尽きます。自分の体験からの言葉は重要ですが、守秘義務やそれを明らかにされたときの相手の気持ちを充分考える必要があります
 15年以上経った今だから明かせますが、この時点で公開する内容ではないと判断しました。

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交代率5年ぶりに増加、トップに求められる資質とは?

 しばらく交代も少なく、落ち着いていた感があったのですが、ここに来てまたにぎやかになりそうな雰囲気です。いえ、閣僚ではなく、社長の話。
 企業情報調査会社の帝国データバンクの発表によると、2001年、全国の社長の交代率が、3.9%と5年ぶりに増加しました。調査開始以来最低となった前年の数字を受けての増加なので、比率はまだそれほど高くはありません。それでも、昭和生まれの社長や女性社長の構成比が増加するなど、新しい流れが着々と進んでいることを感じさせます。

 日本能率協会が発表した「直面する企業経営課題に関する調査」には、経営者が時代の変化を強く意識している様子がうかがえます。現在の経営課題こそ収益性の向上やローコスト経営、売上高等をあげている人が多いのですが、3年後は新事業・新商品やビジョン・事業戦略などが上位に来ています。企業間連携やコーポレートガバナンスといった企業のあり方そのものに関する課題が大きくポイントをあげているのも特徴です。
 激動の時代、企業に求められているのは、時代にあわせ変革していくこと。収益性の改善こそ現体制で見通しをつけるものの、その後は後進に託し新しいスタートを切りたい、そんな判断があるとすれば、昨年の社長交代率増加は、今後続く社長交代時代の幕開けを告げているといえるかもしれません。

 管理職を対象に「理想の経営者」を尋ねた調査にも、時代性が如実に現れていました。経営者に求める資質・能力として、「堅実性」「責任感」よりも、「決断力」「先見性」をあげる人が圧倒的に多いのです。
 いま求められているのは、調整し、まとめあげていくタイプのリーダーではなく、先を読み、大胆に変革に取り組むリーダーです。失態のための交代は論外として、未来への前向きの交代こそ、内部にも、また外部にも納得される交代といえるのでしょうね。いえ、だから政治じゃなく、企業の話。

特別付録:【没原稿】社長交代率5年ぶりに増加、いま求められる資質とは?

 昨年、かつて勤めていた会社が民事再生法の申請手続きを行いました。再建の過程で、経営陣と従業員の間で経営責任の取り方をめぐって激論もありました。
 大手企業の倒産による連鎖とはいえ、リスクに備えなかった責任が経営陣にあるのは確かですし、一方で、創業一族の社長としては、自分の手で再生を果たしたいという思いも当然あることでしょう。
 話を聞きつつ、社長というのは因果な商売だな、と思ったことでした。

 企業情報調査会社の帝国データバンクの発表によると、2001年、全国の社長の交代率が、3.9%と5年ぶりに増加しました。前年が調査開始以来最低となっていたので、増加したといっても、比率はまだそれほど高くはありません。これまでの最高は85年の5.6%でしたし、90年代後半は4%を超えていました。
 それでも、内実を見ると、昭和生まれの社長や女性社長が増加するなど、新しい流れが着実に進んでいることを感じさせます。昨年の増加は、今後続く社長交代時代の幕開けを告げているのかも知れません。

 日本能率協会が発表した「直面する企業経営課題に関する調査」(※2)には、経営者が時代の変化を強く意識している様子がうかがえます。現在の経営課題こそ収益性の向上やローコスト経営、売上高等をあげている人が多いのですが、3年後は新事業・新商品やビジョン・事業戦略などが上位に来ています。企業間連携やコーポレートガバナンスといった企業のあり方そのものに関する課題が大きくポイントをあげているのも特徴です。激動の時代、企業も変革せざるをえません。
 管理職を対象に「理想の経営者」を尋ねた調査(※3)にも、時代性は如実に現れています。経営者に求める資質・能力として、「堅実性」「責任感」よりも、「決断力」「先見性」をあげる人が圧倒的に多いのです。
 新社長に「前社長の路線を引き継ぐ」ことが求められる時代ではすでにありません。現状に危機感を持ち、企業に変革をもたらし、新時代を切りひらく力こそ、求められています。

 倒産に続く一連の動きを見ていて、かつて同じ部署で働いていた同僚たちの落ち着きを心強く感じました。先行きの不安におびえるのではなく、この機会に独立をと着手したのです。一緒に働いていたときから、ふたつのことを彼らに求めていたことが、支えとなったかもしれません。
 ひとつは、組織内での評価ではなく、市場との対比として自分を評価し、能力を磨いていくこと。もうひとつは、所属する部署を社内カンパニー的にとらえ、独立してもやっていけるだけの気概で運営すること。いわばひとりひとりに、企業家的な気持ちを持ってもらいたかったわけです。
 激動の時代、変革を求められるのは社長だけではありません。あなた自身が、経営者的な視点で判断をする機会がいつ訪れるかわからない。社員ひとり一人の意識もまた、変わる必要があるのです。

ゼロ年代に『日経ビジネス』系のウェブメディアに連載していた文章を、15年後に振り返りつつ、現代へのヒントを探ります。歴史が未来を作る。過去の文章に突っ込むという異色の文章指南としてもお楽しみください。